発見の世界
どうも、やてんしょんのスギギーです。
これを書いてる時は基本的に外なので、汗だくで書いてます。
鷹田と別れてからすぐに生徒会室へ向かったがどうやら鹿山さんはまだきていないようだ。
「部活を休むって言ってたから、てっきり依頼のせいかと思ったけど……」
違ったか?と考えていると
「あ、あの!!」
「うおっ!?」
背後から大声を出されたので、振り返ってみると、鹿山さんが
「お、遅れてす、すみません!」
と頭をそのまま床に叩きつけるんじゃないかというくらい勢いよく頭を下げた。
「いやいや、俺も今来たとこだから気にしないで」
実際そうだしな。俺がそう言うと鹿山さんは徐々に頭を上げこちらを見る。逸らす。
うん、わかってた反応だけどやっぱ傷つくな。
これ以上わざわざ精神攻撃を食らう必要もないのでさっさと依頼の話をする。
「とりあえず生徒会室に入るか」
「は、はい」
と、生徒会室のドアを開け……開かない。
「ど、どうしたんですか?」
「なんか会室が開かない」
「鍵持ってないんですか?」
「俺まだもらってない」
どういうことだ?朝、八代と話したときは、待ってるって言ってたけど……。
『“いつも”の会室ね』
八代の言葉を思い出す。いつもの?ということは…
「鹿山さん、今からちょっと歩くけどいいかな?」
「歩くってどこに……!?ま、まさか、どこかに連れ込む気じゃ!?」
「いや?会長のとこに連れてくだけ」
この子、妄想力豊かだな。今日初めて会ったが、接し方がわかった。基本的にスルーだな。
「ほら、行くぞ」
「いくってま、まさか!?そんな卑猥な「違うからな?」で私を…違うんですか?」
「うん」
これ以上言っても埒があかないので、俺は一人で歩き出す。チラッと後ろを見てみたが、一定の距離を開けてちゃんと付いてきてるようだ。一定の距離……、大丈夫だ俺!心を強く持つんだ!
そう心に言い聞かせ、再び後ろを見てみる。目が合った。鹿山さんは素早く鞄に手を入れて何かを取り出そうとしている。少し見えたがあれは携帯だな。
…………
それから一度も振り返らずに目的地まで歩いた。
「ちょ、ちょっと待ってください!?」
鹿山さんが怯えたように俺を呼び止める。
「まさか本当にそういうつもりなんですか!?人気のないところで私の純け「違うからな?」奪うなんてこ……違うんですか?」
ちなみにここに来るまで、このくだりを3回はしている。こいつ天然か?この世には魔性の天然というものがいるから信用はできんがな。魔性の天然というのは、天然を偽っている人たちのことである。
兎にも角にもまずは鹿山さんには旧校舎に入ってもらわないとな、人に見つかると面倒だし。俺は辺りを確認して、人の気配がないことを確認すると
チャリ
「ほら、旧校舎の鍵。先生から許可はもらってるから安心しろ」
ポケットから出した鍵を見せ、俺は旧校舎の中に入る。鹿山さんは先生からの許可に安心したのかどうかはわからないが先程と同じポジショニングで後ろをついてきた。
よし、旧校舎まで連れてこられたら後は図書室まで送るだけだな。
そして図書室前に着いた。もちろん俺が先に着いたので鹿山さんを待つ形になる。未だに俺のかなり後方にいるので手招きして、こちらに来させる。
いい加減に腹を括ったのか素直に鹿山さんは俺の隣に来た、携帯を握りしめ。もう何も言うまい。俺はたぶん先客がいると思い、ノックしてから入ることにした。
コンコンッ
「はーい」
中から八代の声が聞こえる。ビンゴだな。
俺はそのままドアを開ける。
「失礼します」
「遅い!ポ…チ……!?」
「ん?どうしたんで「ポチョムキンはドイツの軍人で1773年に大規模な農民の反乱プガチョフの乱で活躍し……」」
八代はいつもの席に座っていたが、いつもと違って参考書のようなものを読んでいる。入った時には持ってなかったが、あの一瞬で鞄から出したのか。なんでそんなことを?てか早技だな。
八代は俺が入ってきたのを今知ったかのようにこちらに振り向き、
「犬崎くん、放課後すぐに来てと言った筈ですが?」
「いや、すぐとは言ってないでしょう?」
「そうだったかしら?それよりも後ろの女の子の紹介をお願いするわ」
言ったのはあんただろ?と言いたかったのだが、朝といい今といいそう言うことだろう。
「彼女が鹿山さんです」
「そう、あなたが依頼主ね?」
「は、はい!!鹿山恵といいます」
あれあれ、俺の時と反応が違うぞ?当たり前か。
「じゃあ俺、外にいるんで終わったら呼んでください」
「犬崎くん、何言ってるの?あなたも一緒に聞くの。それでいいわよね、鹿山さん?」
「はい!もちろんです!」
さっきまでの鹿山さんは何処へ?ってくらいの豹変だな。
お許しも出たので俺も座らせてもらおうといつもの席につく。八代と俺は向かい合わせに座っているのが鹿山さんはどこに座るんだ?
「鹿山さんはこちらに座ってくれるかしら?」
八代が指をさしたのは八代の左側、そして俺の右側、つまり誕生日とかの主役が座るであろう場所である。
鹿山さんは「失礼します…」といった感じで席に座る。
俺がどこから話そうかと考えていると
「それでは鹿山さん、依頼のことで聞きたいのだけれど…」
八代が口火を切って話す。こういうところはさすがだなと感心するな。
「犬崎くんお願いできる?」
前言撤回、だめだこの人。
会長からお願いされたら聞くしかないか、会長がやってくださいなんて口が裂けても言えない雰囲気だからな。
とはいっても、何を聞けばいいのかわからないので鹿山さんに話してもらうか。
「鹿山さん、とりあえずストーカーについて話してくれないか?いつからとかどこでとか?」
この辺が無難なとこだろう。
「はい…。学校から帰る途中だったんですけど、後ろから誰かがついてきてる気がして、最初は自意識過剰だと思ったんですけど、何時に帰っても誰かがいる気がして…」
「学校っていっても、まだ入学してから一週間も経ってないぞ?たまたまとかじゃないのか?」
俺が聞き返すと
「そうなんですけど、私部活の推薦でここに入ったから入学前から部活には行ってたんです」
部活って陸上部のことか。推薦もらえるってことは、それ相応の実力があるんだろうな。
鹿山さんは話を続ける。
「だいたい一ヶ月と少しくらい前から部活には行ってたんですけど、人がいる気配を感じ始めたのは二週間前くらいからだと思います」
「なるほど」
今聞いている限りだと、怪しいのは同じ部活の奴ってことになるな。
ここでやっと鹿山さんの意図に気づいた。八代のほうを見ると、目が合った。どうやら向こうも同じことを考えてるようだ。
「つまり、この依頼を目安箱に入れたのは、ストーカーの犯人が同じ部活にいるんじゃないかと思ったからですね?」
「違っ…」
そこで鹿山さんは言葉を止めた、違うと言い切る前に。八代の言葉は俺の言いたかったこととほとんど一緒だ。違うと言い切れなかったということは、少なからず思っていたという事だろう。
「違く…ないです。先生に言ったら大事になるかもしれないし、警察なんてもっと大変な事になるかもしれないから……」
「だから父親にも言えなかったの?」
「…!?なんでパパの仕事の事知ってるんですか…!?」
そりゃ先生から聞いたからな、なんてことは絶対に言えない。八代もそれをわかって言ったのだろう……わかってるよね?
八代は体育館で見せた堂々とした態度で
「私を誰だと思ってるの?私は八代朱鳥よ」
聖母のような微笑み、全てを知り、全てを許すそんな表情。鹿山さんもうっとりとした表情で「はい…」と頷いた。いやいや、理屈は全く通ってないからね?
八代はその聖母の表情のまま
「あなたの依頼は理解したわ、あとは任せてちょうだい。もし変わったことがあったり、またストーカーの気配を感じたら犬崎くんに言ってね?こちらも対応を考えたらそちらに伝えるわ」
「はい!わかりました!」
「犬崎くん、鹿山さんを校門まで送ってってあげなさい。ストーカーの心配はあるけど変に刺激するのは良くないと思うから、校門までね?」
「りょーかいです」
俺は席を立ち、鹿山さんより先にドアへ向かう。
「行くぞ?」
「う、うん」
鹿山さんも席を立ち、「失礼しました」といって一緒に図書室を出る。
てっきり嫌がるかと思ったがずいぶん素直についてくるな。
そのまま無言で旧校舎をでて、そのまま無言で校庭まで歩く。
ふと校庭を見てみると前より人口密度が低い気がする。陸上部がいない?俺は鹿山さんの方を見ると、俺の言いたいことを察したのか、
「今日は調整だけだから、早上がりなんだよ」
「調整っていうと、大会かなんかが近いのか?」
「うん!今週の日曜日!私も出るんだよ?」
さっきまでの沈黙が嘘のように生き生きと話す。きっと今の彼女が本当の姿なのだろう。生き生きしすぎて、顔近い近い!
すると我に帰ったのか、鹿山さんは「ご、ごめん!!」といって俺から離れた。
「そ、そっか…。おめでとう」
「う、うん…。ありがとう……」
この空気どうしてくれる?どうもしないな。
「行くか?」
「うん」
そうして俺は鹿山さんを校門まで送っていった。
*
「ただいま戻りました」
「犬崎くん一人?」
「そうですけど?」
「はあ〜〜〜〜〜ぁ」
八代が机に溶け出す。あ〜、やっぱそういうことね。
「あれが外面モードって訳ね」
「外面モードって失礼ね!………そうだけど
…」
つまり、今がほぼ素ってことか。俺にしか見せない姿ということで少し優越感に浸る。てか、なんで俺の前では素なんだ?
「家では山田と二人きりの時くらいしか素になれないからストレスたまるのよ」
「学校では?」
「雀ちゃんくらいね。あと、ペットのポチ」
「さいですか……」
まあいいか、それでも。ちょっと人として見られてない事にショックを受けながらも頭の中を切り替える。
「そんで、鹿山の事なんだけど「いつから呼び捨てになったの?」さん付けが面倒くさくなっただけです同い年だし」
こちらの対応もだいぶ慣れたな、八代も遊んでるだけだと思うが…。
話を戻そうか。
「やっぱり、部活内にいるんかね?ストーカー」
「言い切れないけど、多分そうでしょうね」
八代が珍しく真面目な顔して考えている。…らしくないな。
「今、らしくないって思わなかった?」
「滅相もありません」
この人本当に心の中読めるんじゃない?
「結局この依頼ってどうやったら解決なのかな?ストーカー見つけて締め上げれば終わりとか…」
「怖い事言うんじゃねーよ。まあ、一般人なら見つけて終わりかも知んねーけど、部活の人間だったら秘密裏にやらなきゃいけないよな」
「秘密裏にストーカーをやめさせるってどうやって?」
「……締め上げる?」
…………
いい案が全く出ない。だからと言って締め上げるは論外だ。ならどうする?
「やっぱりこういうのって、最初は張り込みじゃない?」
そういった八代は極めて真面目な顔で言った。
「張り込みって…、本の読みすぎだろ」
「だけどストーカーがもし陸上部にいるとしたら、部活を見るだけでも何かわかるんじゃない?」
「まあ、確かにな」
今のところ外部の人間の可能性は捨てといたほうが無難だろう。無理に範囲を広げても、どっちもわからずじまいになりかねないからな。
おっと、大事なことを忘れてた。
「とりあえず、土曜日までには解決させたいんだよな」」
「どうして?」
「日曜に陸上の大会があるらしい。大会には万全の状態のほうがいいだろ?」
八代が目をパチクリさせ、訝しげな顔で
「やっぱり二人なにかあ「何にもねぇよ、ただ……」
「ただ?」
「いや、なんでもない」
ただ……、俺は何を言いたかったのだろう?鹿山さんの頑張りを応援したかったのか?それとも笑顔にでも惹かれたのか?この時は明確な答えが出せずにいた。
結局その日は何もいい案は浮かばず、明日の放課後、陸上部の様子を見るということで解散した。
*
「ただいま〜」
「おかえりなさい兄さん」
可愛い可愛い妹、綾ちゃんのお出迎えだ。だからなんだという話だが。
「お風呂にする?ご飯にする?それとも「落ち着け!?いきなりにどうした?」
いつもとキャラ違いすぎだろ!?
綾は、何か?と言わんばかりに首を傾げ
「どうしたも何も、何にするかを聞いただけですか?」
なんでこいつこんなに冷静なの?え、何?俺が間違ってんの?
「ちなみに最後何言おうとした?」
「また、出かけるのかどうかを聞こうとしただけですが?」
「そ、そうか……」
どうやら間違ってたのは俺のようだ。仕方ない、だって男の子だもん。
「それはそうと、本当にどうした?いつも出迎えなんてしないだろ?ましてや、予定なんて聞いてどうする?」
「いえ、ただなんとなくです。それで何にしますか?」
なんとなくって……まあいいか。
「じゃあご飯で」
「わかりました、もうすぐ出来上がるので少し待っててください」
そう言って綾はリビングに消えていった。とりあえず俺は自分の部屋に荷物を置きに二階に上がった。
荷物を置いて部屋を出てふと横を見てみると、綾の部屋のドアが開いてる。綾の部屋は結局俺の隣の部屋にしたらしい。他も勧めてみたがどうしてもそこがいいらしい。
なんとなく気になって綾の部屋を覗いてみる。中は思ったより殺風景で、必要最低限の物しか置いてないって感じだった。
あんまり見ちゃ悪いな、と思い閉めようとすると机の上に一冊の本が置いてあるのに気づいた。
「なんだこれ?ファッション雑誌か?」
入って手にとってみると、真ん中あたりのページが折られていた。そのページを開いてみると、
これであの人もイチコロ!必殺の小悪魔術!
と書いてあった。
なんだこの馬鹿っぽいコーナーは?こんなんでモテたら、ファッションなんていらないだろ。
そんなことを思いながら、目を通してみる。すると
帰ってきた彼に「ご飯にする?おふろにする?それとも……お出かけ?」と聞いてみよう!きっと彼はドキドキ間違いなし!
という一文を見つけた。
見なかったことにしとこう。俺はそっと雑誌を元の位置に置き、綾が夕飯を作ってるであろうリビングへ向かった。
今日のご飯はハンバーグらしい。いつも通り席に座り、いつものように手と手を合わせ「いただきます」と言って食べる。いつも通りだ、一点を除けば……
「…………」
「綾、何やってんだ?」
「食事」
「うん、それは見ればわかる……ごめん、やっぱりわからん」
いつもと違うこと、それは……
「兄さん、口を開けてください」
「自分で食えるからいいって」
「兄さんの箸は私が今持ってます、いいから口を開けてください」
「え、本当だわ。俺の箸だわ」
綾が少し食卓に乗り出して、こちらに箸を突き出している。箸には食べやすく切ったハンバーグがあり、もう片方の手で小皿を取りタレがこぼれないようにしている。
そういえば、さっきの雑誌に食事の時のことも書いてあったな。つまりそういうことだろう。
「あのな綾、あんまり物事を簡単に信用しちゃダメだぞ?」
「???、なんの話をしてるんですか?いいから口を開けてください」
あの雑誌に何が書いてあったかは知らんが、その言い方じゃただの脅迫だろ。
「だからな、ああいう雑誌に書いてあることは大体がデタラメだから、成功したら「あの雑誌すごーい」ってなるし、失敗しても「所詮雑誌に書いてあることだしね〜」ってなるだけなんだよ。つまり、雑誌のページ埋めにも出来て、尚且つ話題が取れるもの、全て出版社の策略だ(注 あくまで個人的な意見です)」
そういう雑誌でどれだけの男を弄んできたのか、綾にはそういう人間にはならないでほしい。
綾の方をみると相変わらず表情が出ていないが、というより固まって口をわなわなさせている。
「もしかして、部屋に入ったの?」
「うん」
綾は伸ばしていた箸と皿を落とす。
「あぶね!?」
咄嗟に手を出しなんとか小皿をキャッチ、そして見事ハンバーグも小皿でキャッチした、箸は落としたが。
急にどうしたのかと、小皿を置いて綾の方を見てみると……あれ?なんか悟りを開いたみたいな目をしてるな。いつもの目よりなんか澄み切っているし。
しばらくすると綾が身体中わなわなしだし、澄み切った目は次第に火を灯し……
「お、お…」
「お?」
「お兄ちゃんの…バカーー!!!!」
ブンッ!
「痛った!?」
綾の投げたティッシュボックスは吸い込まれるように俺の顔にヒットした。
いや〜、すいません。
本当はこの回で終わらせようとしてたんですけど、都合で次に持ち越しになっちゃいました。
けしてネタ切れじゃないよ?