表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/12

オレがいない世界

どうもー、夜テンションのすぎぎーです。


これを読んでる人がいるのかどうかはわかりませんが、やっぱりプロの作家ってすごいんだなと、改めて実感してきたこの頃です。

俺が今住んでいる家は二階建ての一軒家である。特に木造だとかそんな特徴もない、どこにでもありそうな家である。なんでそんな家に一人で(昨日まで)住んでいるのかというと、元々は母親の弟さんの家なのである。ちなみに名前は覚えてない、正直申し訳ないな。弟さんは結婚して一軒家を購入したのは良いが、海外転勤が決まってすぐに奥さんと海外へGOした訳である。その時に俺の一人暮らしの話を聞いたらしく、事情を話すと「貸してやる」の一言だった。

ということで、一人暮らしを始めたはずがこの通りである。


「兄さん、その回鍋肉美味しいですか?」

「ああ、うん、美味しいよ」

「そうですか、良かったです」

………


我が家は今、夕食タイムである。料理が完成したのが俺の帰ってくる数分前、つまり出来立て。回鍋肉のチョイスはわからないが美味いものは美味い。箸が止まらん。


「兄さん、そんなに急がなくても料理は逃げませんよ」


そう話すのは犬崎綾、俺の妹である。最初に言っておこう。義妹である。大事なことなのでもう一度言う、義妹である。血が繋がってない、従姉妹という訳でもない、完全な他人。俺が小学校に上がる前に犬崎家に来たらしく、理由は……忘れたな。


「兄さん、おかわりはいかがですか」

「いや、大丈夫だ」

「そうですか」

………


「ところで兄さん」

「はい」

「どうして目をそらすのですか」

「………」


どうしてと言われても、なんと答えればいいのかわからない。犬崎綾は可愛い、ショートカットの髪の毛も、ぱっちりとした目も、その佇まい全てが可愛らしい。そう、可愛いのだ。可愛い子と二人きりなのである。無理だ。


「ちなみにいつ頃帰るんだ?」

「え?ああ、明日のことですか?学校も無いですし近くの商店街の方にでも行こうと思っているので、いつ頃かはわかりません」


なんだか話が噛み合ってないな。聞き方を変えてみるか。


「そうじゃなくて、いつ家に帰るんだって聞いてるんだよ」

「家はここですが?」

「え?」

「え?」

「「………」」

ガタッ


おれはすぐに席を立ち、今いるリビングを出て綾に声が聞こえない位置でスマホで電話をかける。相手はもちろん。


プルルガチャ


「はーい!もしもし裕翔元気にしてる?裕翔から電話をくれるなんてお母さんちょー嬉しい。そういえば綾そっちに着いた?お母さん今気づいたんだけど、裕翔にまだ言ってなかったね。綾これからそっちで暮らすことになったからね。大丈夫大丈夫!転校手続きもちゃんと済んでるから♪ところでなんで電話してきたの?」

「OK理解した」

「ねえねえ何のはな」

ピッ。


俺はすぐに電話画面を消した。


「はあ〜〜〜」


深く大きく溜息をつく。状況を考えても、綾を実家に帰すのは無理そうだな、転校までしてるし。別に綾のことが嫌いなわけではない。俺の知る限りでは、世間的に言う良い子だと思う。だけど…


ドクンドクン


(やめろ)

いつもは聞こえない時計の針の音が鮮明に聞こえる。


ドクンドクン


(静かにしろ)

この場には俺しかいない筈なのに、誰かの声がする。


ドクンドクン


(何も考えるな)

そう頭の中で繰り返すほど、何かが流れてくる。


ドクン!


“オレ”は!

「兄さん?」


はっ!と、気がつくと、綾が隣にいる。どうやら戻りが遅いので様子を見に来たようだ。さっきの声も綾の声だったのかもしれない。俺は綾の方を見る……。空っぽにしようとしていた頭の中に、散らばっていた何かが繋がっていく感覚に囚われた。


思考が加速する。

綾の瞳の中には今誰が映っているのだろう?


「帰れ」

「……」


綾は何も言わない。


「早く家に帰れって言ってるんだ」

「……」


俺は何を言ってるんだ?今、そんなことを言いたいわけじゃない。なのに、言葉が止まらない。これ以上言葉が出ないよう、歯をくいしばろうとするが、カチカチなるだけで意味をなさない。


「俺の前からさっさと失せろって言ってんだよ!!」


いや、自分が、何を言ってるのかは理解してる。人間、そうそう我を忘れるなんて事はない。全て理解した上で、考える事を放棄しているのだ。


「この家から出てけ「嫌です」」


俺の言葉を遮るように、綾は否定の言葉を発した。その声は静かに、しかし、どんな言葉よりも鋭く、俺の中にある“何か”を消していった。

俺はゆっくりと、そして確実に冷静さを取り戻す。動悸もおさまったようだ。改めて綾の方を見てみると、


「……」


綾は何も言わず、こちらの目を見続けている。その目はわずかだが、潤んでるような気がした。


「悪かった、ちょっとどうかしてた」

「いえ、大丈夫です」


きっと大丈夫ではないだろう。視線を落とすと、綾の手が強く握られ、震えているのがわかる。俺が今できる事は、


「今、母さんに電話していろいろ聞いてた」

「うん…」

「事情も事情だし、もともと俺の家でもないしな。一緒に住む事に関しては、俺は何の問題もない」

「うん…」

「取りあえず、俺は階段登ってすぐ左の部屋を使ってるから、そこ以外なら好きな部屋を使っても良いと思う」

「わかった…」


そう言って俺は綾の横を抜け、階段を登る。途中である事に気づき登りを止める。そして後ろに振り向き、


「その、なんだ。ご飯はうまかった。食器は流しに置いとけばいいから」


綾は少し驚いた様な顔をしていた。なんだよ、俺だってお礼位言えるわ。俺は体を前に戻し、また登ろうと思ったら、


「わかった、ありがとう」


そう言った綾は優しく微笑んでいた。俺は照れ臭くなったが、どこか嬉しい気持ちがあった。


「おやすみ」


捨て台詞みたいに俺は一言だけ言って階段を少し早く登った。


「うん、おやすみなさい。お兄ちゃん」


後ろから微かにそう聞こえた気がした。



眠れない、全く眠れない。今日はいつもより早起きだった上に体も疲れている筈だから眠れると思ったのだが、うまくいかないもんだな。

頭の中で羊を777匹数えたところで「お、ラッキーセブンじゃん」とか考え始め、もう無理だと思い体を起こす。だいたい羊数えるのに必死になって脳フル回転してたから当然といえば当然か。時計の短い針は3の文字を指している。


「水でも飲むか」


そう呟きながらベッドから体を起こし、部屋を後にする。そういえば、綾はもう寝ただろうか?流石に寝てるか。

階段を静かに降り、リビングへのドアを開けようと手を伸ばす。


「お…い…ゃん」


中から声がする。もしも夜でなければきっと聞こえなかったであろう、そんなか細い声。


「おにいちゃん…おにいちゃん…」


泣いているのかはわからないが、何度も呼ぶ声。オレ(あいつ)を呼ぶ声。この扉の向こうには、決して超えることのできない、記憶の壁が存在している様な気がした。壁の向こうは俺の知らない世界なのだろう。その世界には決して俺が入ることはできない。不思議と動悸は起こらなかった。喉の渇きなど忘れたように、俺の足はゆっくりと階段を登り始めた。



「兄さん、おはようございます」

「ああ、おはよう」


朝6時、部活などやっていなければそこそこ早い時間だろう。綾には俺の起きる時間を伝えていなかったのだが、すでに朝食の支度がしてあった。

結局土曜と日曜と時は流れたが、これといった変化もなく過ぎていった。綾ともあまり会話をしていない。俺は家でゴロゴロ、綾も外出をしたり、勉強をしたりしていた、俺とは大違いだな。


「ずいぶん朝早いな」

「はい、部活の朝練に顔を出すつもりです」


転校してすぐに部活とか、随分熱心にやってるんだな。


「なにやってるんだ?」


綾は少し悲しそうに笑う。一瞬過ぎて俺には見えなかった。


「陸上部です」

「そうか、頑張れよ」

「はい」


そう言って俺はいつもと同じ席に着く。メニューはご飯と味噌汁、そして昨日の残りの野菜炒めだ。ちなみに飲み物は牛乳だ。今日はコンビニでパンでも買っていこうと思っていたのでかなりのグレードアップである。


「「いただきます」」


合わせたつもりはないが、習慣というものは家族で似るものなのだろう。俺たちは朝食を食べ始めた。



「それでは行ってきます」

「おう、行ってらっしゃい」


綾は7時前に家を出た。俺は食べ終えた食器を洗う。本当は綾が「私が洗う」と言っていたのだが、そこまでしてもらうのも悪いので、朝は俺が、夜は綾が洗うことで話はついた。


朝8時少し前、俺が家を出る時間だ。ホームルームは8時40分から始まるので十分に間に合う。俺は戸締りを確認し家を出た。

秋風高校は山の上にある。我が家は山のふもとにあるのでおのずと山登りをする羽目になるのだが、過去にスポーツをやっていたからか、俺にとってはそれほど苦でもなかった。きっと一ヶ月も経ったらめんどくさくなるんだろうな。と、そんなこのを考えながら学校を目指す。到着したのは30分頃、妥当なタイムだろう。

校門をくぐると体育館から部活の後であろう生徒たちが走って校舎に向かっている。ホームルーム前には席についてなくてはいけないからだろう。俺も気持ち足早に教室へ向かった。



キーンコーンカーンコーン


終業の鐘がなる。今日の授業はこれで終わりだ。ほとんどの授業がこれからの授業の説明だったので勉強した気はしないな。後は帰るだけのはずだが、委員会の事を思い出し、仕方がなく俺は旧校舎へ向かった。


旧校舎に着いた俺は立て付けの悪いドアを開ける、今度直そう。


「ん?」


机の上に紙と箱が置いてある。紙には


よろしく 安藤より


と書いてある。

横の箱に目を向ける。俺の目が間違っていなければ、箱には『目安箱』と書いてある。


……


これって生徒会の仕事じゃないのか?

何はともあれ、中を見ない事には始まらないし、仕事がどんなものなのかも分からんからな。中を確認するために箱を逆さまにする、。すると、一枚の紙が落ちてきた。そこには、ただ一言


うしろだ と


「どーん!!」

「ぐはぁ!?」


なんか変な声が出たな。あまりにびっくりした事と、勢いの強さから俺は机に突っ伏したまんま動けなかった。マジ痛い…


「あれれ?なんかごめんね?」


忘れるはずもないこの声、しかも絶対悪いと思ってねーなこの人。力も強いし。


「驚かすのはまだいいとして、力加減はどうにかしろ。八代」


八代朱鳥、この秋風高校の生徒会長である……後金持ち?思ったより情報少ないな。

突っ伏した体を起こし、うしろに振り向く。そこにはドア付近でヘラヘラ笑う八代の姿があった。


「いやいやポチ?、金曜日の仕返しですよ?」

「そういえば、金曜日なのに明日覚えとけよ見たいな事言ってましたもんね」


あらら〜、八代怒ってますね。そういえば、そのセリフはただの俺の脳内変換だったな。

しかし、どうやら怒っている事はそこではないようだ。


「あの時は!私も大人気なかったので!許してあげましょう!」

「じゃあ何です……あ〜、綾の事ですか?」


思い当たる事といったらそこしかないもんな。そこ以外だったらもうわからん。


「そう!別に妹がいた事に関しても、まだ許せる。妹の態度も…まあ、許せる!」

「じゃあ何が許せないんですか?」


綾の態度は少しイラっとしていたようだな。今度、きつく注意しておこう。それにしても、結局何に怒ってるんだ?


「なんで、妹と住んでる事を秘密にしてたの!?って事!」


そういう事ね、やっとわかったわ。別に秘密にしたわけじゃないし、あの時は、知らなかったとも言ったけど、多分覚えてないだろうな。説明するとも言っちゃったし。

ん、待てよ?これってプライバシー的な感じで言わなくても良いんじゃね?と心の中の小悪魔が言う、ちなみに天使はいっこうに出てこない。言いたくないというわけでも無いのだが、ちょっとさっきのお返しをしたくなった。


「家族の事なんですし、別に言わなくても良いんじゃないですか?話さなくちゃいけない義理もないですし」


と少し突き放すっぽく言ってみた。言ってやったぜ。あとは八代が「約束と違う!」的な事を言ったら冗談とでもい…っ…て?


「…………」


八代が何かすごく悲しそうな顔してる。あれ、冗談ですよ?別に本気で言ったんじゃないからね?

八代は両手を目元にあてうつむき出した。


「そうだよね、馴れ馴れしかったよね。なんかごめんね?こういう事もうしないから」


そう言うと八代は俺に、精一杯の笑顔を見せた。笑顔なのだが、とても痛々しいものだった。

やべ、早くフォローしねーと。


「八代?あの、今の冗談だからね?本当に思ってるわけ「ううん、大丈夫だよ。無理しなくて良いからね?」」


そう言って八代は踵を返し、部屋を出て行こうとする。


「ほんっとうにすみませんでした!!今のは完全にジョークです!ちょっと悪戯心が芽生えただけです」


いやもう、土下座だよね?この件に関しては全面的に俺が悪いと思う。俺は全力で土下座をし頭を下げる。八代はそんな俺を見たのかどうかわからないが「本当にジョーク?」と聞いてきた。


「本当にジョークです!」

「ホントのホント?」

「ホントのホントです!」

「悪戯心も?」

「悪戯心もです!」

「そう」

「はい」

「全部いたずら?」

「はい」

「この私に?」

「はい!……はい?」


声音が少しずつ変化してるのに気付いた時には時すでに遅し。顔を少しだけ上げていくと、白、そこには先ほどの痛々しい笑顔ではなく、初めてここであった時と同じ笑顔だった。態勢も一緒じゃね?


「私をからかったと?」

「えっと〜、それは…」


また、土下座の姿勢まで腰を折る。怖くて上を見れない。やべ、どうしよう。しかし、万が一、強がりということも考えて、八代の、白、顔を改めて見てみると、目元も全く赤くない。つまり泣いていたわけではないだろう。え?うつむいたの演技?恐る恐る俺は、八代に精神状態を聞いてみた。


「今、喜怒哀楽で言ったらどれに当てはまります?」

!」

「マジすいませんでした!!」


俺は再び土下座をした。さっきとは意味が違う。助けて下さいの方です。


「くすくすくす」


なんか頭の上の方から笑い声が聞こえる。最初と同じ様に顔をゆっくり、白、あげてみるとそこには、手で顔を隠し肩を小刻みに揺らしている八代の姿があった。これ笑ってますね、これ。


「あっははははは」


手で押さえきれず、八代はたまらず噴き出した。俺はというと土下座姿勢を止め、ゆっくりと立ち上がった。またやられたなチクショウ、俺も学ばないな。しかもいつまで笑ってんだ?笑いすぎだろ。

やっとツボから抜けたのだろうか、八代は呼吸を整え深呼吸をしている。


「いや〜、ごめんね?まさかあんな真剣に謝るとは思ってなくてさ〜」

「いやー、こっちはガチでヤバイとおもいましたよー」


もう二度と八代をからかわない、そう心に誓った。八代の笑いに、棒読みで返すと八代はいたずらっぽく笑い、


「なんか随分話しやすくなったね?なんかあったの?」

「特に何もないけっすけど、「どーん」の衝撃が強すぎて、色々と頭がおかしくなったんですかね?」


実際それもあると思う。あとは妹と少し話して女性の耐性が上がったか。一番はこの人の話しやすさだな。


「さてと、聞かせてもらおうか?」


ゾクッ!?

気温が一気に下がった気がした。先程とは違う、低い声。これが八代の威圧モードか、笑っているようで、目が全く笑っていない。

なんで今?


「結局あの子はどんな子なの?ただの妹という訳じゃないでしょう?」

「え?」


そんだけ?いや確かにその話から始まったけども、そんなに威圧かけますか?もっと別にやらかしたかと思ったわ。それに、今更隠す意味もないしな、もともとないけど。


「名前は綾、血が繋がってなくて義妹という形ですね。たまたまこっちの中学に転校することになって…あ、転校理由は知りません。」


勘違いされると面倒なので、付け足しておく。


「うちの両親が離婚したとかじゃなくて、綾の方の両親が不慮の事故で亡くなって、うちで引き取ったらしいです」

「らしいですって、なんか他人行儀っぽいわね?」

「まあ、あんまり覚えてないですからね」

「ふーん」


若干不満そうだが、納得はしてくれたようだ。


「てか、妹の事聞くためにどんだけ威圧かけてんですか?」

「それはやっぱり、飼い犬が女の子に「お兄ちゃん!」みたいに呼ばせる変態鬼畜野郎だったら躾けないといけないと思って」

「飼い犬って…」


俺をどんな目で見てんだこの人。そんな変態行為した覚えはないぞ。だいたい「お兄ちゃん」じゃなくて「兄さん」だし。それよりも俺がそんな事できる訳ないだろう。


「俺にそんな事できると思います?」

「ポチには無理でしょうね?だってチキンだし」

「さすが飼い主様、よく分かってらっしゃる」


分かられすぎて俺泣きそう。あって約2日目の女の人にチキン呼ばわり、まあ合ってんだけどさ。

八代は何かを思い出したように腰に手を当て、ニヤニヤ笑いながら


「そういえばポチ?おすわりのたびに私のスカートの中チラチラ見てたでしょう?」

「えっ!?」


あちゃー、ばれてましたか。さっきから驚いてばかりだな俺。だってしょうがないじゃないか、見えそうだったんだもん、見えたし。ここで見なきゃ男が廃るってもんでしょう?


「なんか言い訳ある?」


言い訳などない、ここは男らしく!


「あの状況で見なきゃ男じゃない「ん?」なんて事ないですよね、本当にすみません」


学ばない男、犬崎裕翔ポチ。俺は立ったまんま深く深く頭を下げた。八代からビンタの一発でも飛んでくると思っていたが


「まあ、今回は許してあげる」


と実に寛容だった。あれかな、パンツくらいどうって事ないと?まさかの遊び人か?まさかと思うが、俺が男として見られてないのか?最後の理由だったらマジで辛い。

俺が顔を上げると八代は完璧に主導権を握ってご満悦なのかすっごいニコニコしてる。正直めっちゃ可愛い。


「なになに?私のパンツ見たかったの?今日は6限体育だったからそのまま体操着きてるから、残念でした〜」

「え?」

「え?」


体操着?この高校の体操着の色って白だったっけ?家にあるのは紺の短パンだった気がする。じゃあ、俺が見たのは?

八代も俺の反応に疑問を思ったのか、腰回りを触って確認してる。しばらくすると


ボンッ!


という効果音は聞こえないが、トマトみたいに赤くなるっていうのはこういう事を言うんだな、と思うくらい顔が真っ赤になった。

八代は耳まで真っ赤にしてうつむき、恐る恐る俺に聞いてきた。


「ち、ちなみに、な、何色が見えた?」


手がプルプルしてる。相当恥ずかしいんだろうな。もう、真っ赤にした顔もすごく可愛い。ただ、次の言葉の選択をミスしたら……うん、終わりだな。

見えてないと嘘をつくか?100%バレる自信がある、だって八代だもの。ごまかすか?無理だな、だって八代だもの。正直に言う?終わりだな、だって八代だもの。

詰んだな、だってポチだもの。どうせなら最後は正直に生きよう。俺は真剣な顔をする。そしてゆっくり、真実を語った。


「しろです」

「も、もう一度言って?」

「白です、無地です、ホワイトです」


なんか脂肪です、糖分です、塩分ですみたいな言い方になったな。八代は小さな声で、「白?白、城?支路シロ、しろしろしろしろ…………」とブツブツ呟いている。


「あの〜、八代?大丈夫か?」


そう言うと八代は目の端に涙を浮かべ


「大丈夫な訳ないでしょう!?」


バチンッ!!


「あべし!?」


八代の大きく振り抜かれたビンタは、的確に俺の頬を捕らえ、放課後の静かな旧校舎に響き渡った。

許してくれるって言ってたじゃん……。


たぶん、次の話で依頼がくると思います。てか、いい加減こないと話が進みませんよね?


あくまで高校生に頼む依頼なので……まあ、そんなものでしょう

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ