正解のなかった世界
どうもこんにちは。
夜のテンション、略して夜テンション(やてんしょん)のすぎぎーです。
書いてくうちに「自分って文章力ないな」と思い始めた最近ですが、少しずつ勉強していきたいと思います。
「はあ〜」
終わらねぇ。そう呟いても現状は変わらない。
「安藤のやろう、全部押し付けやがって」
あの委員会に入る入らないのくだりからすでに4時間は経っている。
結局あの後、先生に「最初の仕事だ」とここの掃除を押し付けられたのだ。そんなことだろうと思ってはいたが、まさか全部ぶん投げられるとは思わなかった。運んだ本を棚にしまう位手伝え。
「とりあえず、こんなもんか」
俺は、唯一先生から支給されたマスクを外して適当の椅子に座った。ちなみにマスク以外は掃除用具のロッカーに入っていたものだ。旧校舎並みのボロさであった。
埃はあらかた片付いたといえよう。人間一人でも集中すればなんとかなるものだな。
「あとは…本を片付けて終わりにするか」
外を見ると暮れてはいないがかなり日が落ちている。俺は後回しにしていたダンボールの中の本を棚に並べていく。
そして一箱目を並べ終わってから気づいた。
これ並べる必要ないんじゃね?と。先生に言われたのは部屋の掃除だけ。本については特に何も言われていない。むしろこんなとこに運んだのなら廃棄処分レベルのものかもしれない。
「無駄足か」
呟いても現状は変わらない。あれ?さっきも言ったな。
仕方がないので、棚に並べてた本を箱に戻す。しまうほうがだるいな。あれか、散らかすのは楽だけど、片付けるのは面倒くさい理論か。そんなことを考えながら本を片付けていると、
ガラガラガラッ!
ビクッ!
急に扉が開くからびっくりしたわ。もっと優しく開けろ、その扉建て付け悪いんだから。誰だ?先生か?どうせ先生であろうと思い、片付けも含めて軽く文句でも言ってやろうかと扉の方を見ると………隠れろ!!
「!!!???」
脳の一瞬の判断で俺はすぐに棚の影に隠れた。もともと本を片付けていた位置は扉から一番離れた奥の棚だ。見つかってはいないはず、音もほぼ立てていない。自分でも今の行動に驚いた。冗談であって欲しいと思いながら、今度は棚の影からこっそり覗いてみると、やはり冗談なんてことはなかった。。
あの黒く長い髪の毛、誰もが振り向くであろう整った顔立ち。少し切れ長の目。あ、胸も大きい。
『なんで生徒会長がここにいるんだよ』
恨むぞ、先生。人来ないとか言ったその日に人来てるじゃないか。いや、待てよ。もしかしたら生徒会の仕事で来たのかもしれない。
「やっぱりここは人が来なくていいわね〜」
違った。思いっきり私用だった。俺は先生の言うことを信用しないことに決めた。ともかく、今のこの状況だ。会長さんは、入ってきて、今は扉付近の椅子に座っている。つまり出れない。
「さすがにあそこまでしつこいと疲れちゃうわね〜」
やばい、独り言まで始めたぞ。はっきりは聞こえないが愚痴っぽいな。いやいや、そんなことはこの際どうでもいい。一刻も早くこの場から脱出しなければ。えっ?なぜかって?
考えても見ろ、
・完全無欠そうな女の子の休息
・完璧そうなのに愚痴をこぼしている
Q.そんなところを見た少年は?
A.有罪
な?積んだろ?
というわけで、どうにかして出る手は無いかと、この天才頭脳であって欲しい頭で考える。
すると、いつの間にか独り言が止み
スー、スー
と規則的な呼吸音が聞こえる。もしかしたらと思い静かに覗いてみると………寝てる!
よし、チャンスだ。俺は途中起きられても大丈夫なように、ゆっくりと壁際に遠回りして扉に向かった。
扉までもう少し、今起きられたらアウトだ。その時は走って顔を見られないように逃げよう。
いける!!
と、扉に手をかけたところでふと思った。
ここ、寒いよな。
まだ春になったばかりで、今日は特に気温が低い。日が落ち始めているところを見ると気温はどんどん下がっていくだろう。もし風邪をひいたりしてたら寝覚めが悪い。上着でもかけるか?いや、ここはスルーするか?しかし、起きられる可能性もある。いやいやしかし……
*八代サイド
「ごめんなさい、忙しいからまた今度にしてくれる?」
今日この言葉を何回言った事だろう?あの体育館での会長発表から今に至るまで散々口にした言葉だ。「友達になってください」とか「俺、生徒会に興味があるんです!」など様々な理由であったが、要はお近づきになりたいとの事だろう。生徒会の他の役員は決まっていないので生徒会に関する事が大多数である。
それもこれもあの高橋のせいである。
あいつがあの時教室で…
「八代くん、君も会長選挙に立候補するのだろう?僕もなんだ。君には負けないよ」
と、大声で言わなければこんな事にはならなかった。そこからは早かった。
「八代さん会長選挙にでるの?」「私絶対応援するから」「八代さんなら絶対になれるよ!」「八代も立候補するのか!?先生も応援してるぞ」などなど。
先生に知られてからはすでに諦めていた。
別にやめても良かったのだが、あの高橋に負けるのは本当に嫌だった。事ある毎に勝負を挑んできて惨敗する。少し顔と成績がいいからってしつこい事この上ない。挙句の果てには
「僕も生徒会に入ってやろう。なに、気にするな。八代と僕の仲じゃないか?」
との事である。もちろん断ったが。
とまあ、そんなこんなで今に至る訳です。さすがの私もあれだけ声をかけられれば疲れる。さっさと帰ればいいだけの話だが、私は家にいるのがあまり好きではない。理由はまあ、色々である。という事で完全下校時刻までいつも適当な所で過ごしている。今日は最近見つけた所に行こう。
その場所というのは旧校舎の事である。普段は誰も使わない上に生徒は原則立ち入り禁止であるから人は滅多に来ない。私はどうかって?前は勝手に入っていたけど、今は生徒会長という武器がある。何かあっても「資料探しです」とでも言えばなんとかなるだろう。この学校の生徒会長というのはそれだけの権力があるのだ。
ほどなくして、旧校舎に着いた私はこの前のように、2階の図書室に向かった。図書室は埃っぽいが貸し出しカウンターであろう所は、私が綺麗にしたので埃はほとんどない。今度、部屋全体を綺麗にしようと思う。
部屋の前に着いた私はドアを開ける準備をする。鍵がかかっているのだが、建て付けが悪いのか、取っ手を少し持ち上げながら横に引っ張れば……
ガラガラガラッ!
あれ?なんか前より簡単に開いたな。とうとう壊れたかな?と思いながら部屋の中に入る。なんか部屋が前に来たより綺麗である。清掃員でも入ったのかな、と考えながら伸びをする。
「やっぱりここは人が来なくていいわね〜」
さっきまでの騒がしさが嘘のようである。ここまで静かだと、どんどん気が緩んでくる。
「さすがにあそこまでしつこいと疲れちゃうわね〜」
学校ではいつも誰かに話しかけられる。別に一人になりたい訳ではない。ただそっとしてほしい時もあるのだ。今日がそれ。やばい、眠くなってきた。と、意識が朦朧としてくる。
「私、だって、おんな、の、こなんだ、か…ら……」
私の意識はそこで途絶えた。
ゴソゴソ
ん?なんか動いた音が聞こえたような?
どのくらい寝てただろう?私はうっすらと目を開けて左腕にある時計を見た。あれ、なんだ、全然寝てないじゃん。
そんな事を思いながらふと、目線だけをを上にあげる。すると、
えっ?
そこには男子生徒がいた。なんかうろうろしてる。まさかつけられた?寝込みを襲うなんてことはされないだろうが、何かされるのは間違いない。だって、すごく挙動不振なんだもん。すると男子生徒は意を決したのか「よしっ!」と言って上着をいじりだした。ケータイで寝顔でも取る気!?どんな変態野郎なの!?
さっさと起きても良かったが、やはり現行犯でなければ意味がない。私は目を瞑り、静かに男子生徒の行動を待った。すると……
ファサッ
えっ?
本日二度目の驚きだ。彼は自分の上着を私にかけたのだった。
*犬崎サイド
「よしっ!」
俺も男だ。覚悟を決めよう。
という事で上着をかける選択をした。起きられたらどうするかは、その時考えよう。
俺はゆっくり上着からケータイや財布などを出し、高級羽毛布団をかけるのごとく優しく、会長の肩へ上着をかけた。これだけそっとかければ起きることはないだろう。
後は上着回収の為に紙に「そのまま置いといてください」とでも書いておけば完璧だ。俺は足元にあるだろう鞄の中から紙を取る為にかがむと…ってないじゃん!?
しまった。資料室の前に置いてきたか?いや待て、確か先生が台車の一番上に鞄を乗せてくれたような?ってことは
トサッ
と俺の目の前に何か降ってきた。どうやら誰かの制服のようだ。俺のだな。さっき会長にかけといたような……とそのままの姿勢で寝ているであろう会長を恐る恐る見上げる。
「おはよう」ニコッ
艶やかな唇の間から白い歯が見える。やべ、超可愛いんですけど〜。脳が考えることを拒否しておかしくなってきたな。そんな脳が導き出した返事は
「お、おはようございます」にごっ
俺は全力で笑顔を作った。
さあ、長かった前置きもやっと終わりました、たぶん。
次からは二人がちゃんと会話します。
という訳でおやすみ。