虹の竜
ホームエリアに行く前にちょっと寄り道があった。
「さて、ゼク。こちらの要求は解っているな?」
「もちろんっす」
ノリのいいゼクに、俺は採取した花とできるだけ高品質の宝石を渡した。
ゼクはそれを確かめ、間違いない事を確認した。
「OKっす。完了したら連絡するっす」
「よし、じゃあ約束通り前払いといこうか」
「おお、これが……」
俺が差し出したのは『冥府の長杖』。
オーバー・ソウルのレアドロップだ。
これの存在を知ったゼクは、俺に縋りついて欲しがった。
俺自身は金にするつもりだったのだが、こいつは譲ってくれればタダで仕事をするとまで言ったのだ。
そして本日、6種類12個の宝石強化を依頼し杖を渡したわけだ。
本当は風の花を見つけてからにするつもりだったが、何時までもおあずけは気の毒になったのだ。
金額的には俺の方がはるかに得な条件だしな。
こいつの様に、人に迷惑をかけない範囲でロールプレイを楽しむ奴は嫌いじゃない。
ゲームはやはり楽しまなくては。
さて、じゃあホームエリアへ行くか。
俺は転移アイテムのキーを取り出し使用した。
蟹肉とアンブロシアで作ったモンスターフード。
これ人間でも食えんじゃね?
食材としては最高峰なんだし。
それはさておき、使い魔たちを集合させる。
まずはフェイにアンブロシア製のフードをあげる。
モグモグ
フェイの髪が黄昏の空の様な藍色に変わった。
背中の翅は実体が無くなり、光が集まった様な透明なものになった。
次はリンクスに蟹肉製のフードを。
ガツガツ
リンクスの体毛が真っ白に変わる。
ところどころに金色が混じっている。
次はプルート。
モグモグ
ローブと蛇が真っ黒に変わった。
ローブには金色の刺繍が施され、薄らと紅いオーラを発している。
そして、ハウル。
ハグハグ
丸っこかった3つの犬の頭は、1つのシャープな狼の頭に変わった。
体毛は夜空の様な濃紺。
瞳は星の様な銀光を放っている。
次はベルク。
ガツガツ
今までの倍は大きくなった。
体毛は空色、瞳は緑色になり、額にも第3の目がある。
ヴァルカン。
アグアグ
体に纏う溶岩が紫色になった。
噴き出す高温ガスも赤から黒に変わった。
次にシミラ。
シュゥゥゥ
うん、変化が解らん。
元々実体が少ないしな。
最後にバイト。
バクン
頭が3つになり、全身に黒い縦縞模様が浮き出る。
眼は額に縦に二つ付いている。
ギアは食えないから、また後で。
これではぼ全員ランク5だ。
ちなみに種族名は
フェイ 『黄昏の娘』
ネクロス 『竜骨の戦王』
バイト 『悪業の蛇神』
ハウル 『星天狼』
リンクス 『太陽の獅子』
ベルク 『空の王』
プルート 『冥王』
ヴァルカン 『煉獄獣』
シザー 『原業の処刑虫』
シミラ 『虚影の幻魔』
となった。
ちなみにリーフは『純紅玉の幻獣』だ。
さて、次は卵だな。
草地の上に卵を置き、隣に竜槍杖を立てる。
よく解らんが、これでいいんだろうか。
しばらくアイテムの仕分けをして過ごす。
売却してもかまわない素材が結構増えた。
防具代にするかな。
夜になってしまった。
生まれないな。
卵を置いて移動するわけにもいかないし、今日はここで休むか。
神殿の就寝部屋に向かう。
テーブルに卵を置き、竜槍杖を横に置く。
ネクロスは眠らないので卵に変化があったら知らせるように頼んだ。
するとネクロスはテーブルの横に立ち動かなくなった。
そんなにじーっと見なくてもいいんだが。
深夜
ツンツン
ん? 何だ?
目を開けると部屋が虹色の光に満たされていた。
ベットの横にはネクロスが。
起こしてくれたようだ。
光は卵の亀裂から漏れていた。
俺も近寄り卵を見つめる。
やがて卵は割れ、中から虹色に輝く幼竜が生まれてきた。
「こいつがあの邪竜の転生か……」
全身に虹色の光を宿した水晶が生えている。
その神々しいと言える姿は、かつての邪竜とはかけ離れていた。
ついに揃った使い魔。




