竜の卵
「ああ。あんたの弟は迷宮の奥で完全に狂ってた。で、俺が止めをさした」
雰囲気的に悪い様には感じないので素直に話す。
まあ、嘘言っても称号でバレバレだしな。
「そうか……。ならば」
〈STチェック開始 完了 規定値をクリア〉
「これを汝に託そう」
俺の目の前に現れたのはバスケットボール位のサイズの卵。
これは竜の卵か?
「それは弟だ」
ショック。
竜どころか古竜だった。
しかし、これがあの邪竜?
どういうことだ?
「我ら古竜は死ぬと里の聖域で卵に転生する。元より寿命という概念は無いが不死とも言える」
なるほど。
つまり古竜の数は減りもしないが、増えもしない。
欲望も希薄で支配や征服に興味もないか。
確かに人間からしたらつまらない生活だな。
で、あの邪竜はそんな生活に嫌気がさしたと。
「再び弟を里に縛り付けるのも哀れだ。それに里の者達は、成長した弟が同じ事を繰り返す事を危惧している」
ふむ、情と理屈どちらからしても里に留めるのは気が引ける、と。
しかし、俺はすでに従魔持ちなんだよな。
使い魔でもいいんだろうか。
「問題ない。それと汝のその武器は弟の遺骸から作りだしたものだろう?」
竜槍杖セルピヌス。
こいつは実に9割が邪竜素材で構成され、使用量も膨大だ。
現状これ以上の武器は作られていないし、作れないだろうという話だ。
それでも、完成度は80%ほどなのが恐ろしい。
「それがあれば弟はすぐに成長するはずだ。後は汝があ奴の望み通り、広い世界を見せてやれば悪い様にはなるまい」
「解った。こいつは俺が預かる」
「そうか。では弟を頼む」
そして、水晶竜は口を閉ざした。
むう、エライ物をもらってしまった。
じゃあ、契約を……。
ノンアクティブだからプレゼントか。
卵の欲しがるものって何だよ。
成長促進剤とか? あるかそんなもん!
アイテムをチェックする。
うーん、ヘドロかけたら割れたりして。
……その後、水晶竜に殺されるな。
「そうだ、これなら」
取り出したのは『アンブロシア』。
こいつの蜜は転生の秘薬とまで言われる。
ふと、水晶竜を見上げると頷いた。
どうやら当たりらしい。
卵にかけると虹色の光が溢れた。
よし、普段は使わない鞄を取り出し卵を入れた。
クッションになりそうな物も詰めておこう。
リーフの経験上、結構すぐ生まれるはず。
ん? あれは……。
空の向こうからワイバーンが戻ってきた。
プレイヤー達はかなりやられている。
人数も減っている。
「もう戻ってきたのか?」
「いや、シャレにならんって」
「巨人だらけなんだよ」
彼らの話によると出現するモンスターは巨人系オンリー。
『サイクロプス』、『ギガース』、『タイタン』、『ジャイアント』などが現れるそうだ。
寄り道しなければ一本道なので中ボスを見てきたらしい。
中ボスは百腕百眼の巨人『ヘカトンケイル』だったそうだ。
足りないメンバーは死に戻りしたようだ。
難易度は『竜の谷』と同等かそれ以上だろう。
さすが隠しフィールドだな。
さて、俺も一度戻ってモンスターフードを用意しよう。
蟹肉とアンブロシア使えば、最高級フードを作ってもらえるだろう。
防具も受け取らないとな。
魔獣屋にはリーフは入りたがらなかった。
外で待っている。
しかもステルスして。
まあ、気持ちは解る。
店に入ると向けられる視線。
しかし、すぐに逸らされる。
ターゲットがいなかったからか。
さっさと購入して店を出る。
新フィールドの情報が出回ったのだろう。
町に活気が溢れている。
ここで使い魔を呼び出すと、またパニックが起きるかもしれない。
まあ、容疑者筆頭のネクロスとシザーはもうフード食ったわけだが。
バイトやプルートなども十分怖いしな。
ここはホームエリアにいった方がいいかな。
一気に全員に食わせられるしな。
その前に工房か。
工房で手甲と脚甲を受け取る。
うん、軽いな。
鎧もこれでいこう。
ライトアーマーを注文し、店を出る。
だが、少し気になる事が。
工房の奥にゴーレムが寝かされていたように見えたんだが。
何やってたんだろう?
案の定ボコられた突入組。
でも偵察はGJでした。
ちなみに卵譲渡は一回きりのチャンス。
STが足りないとお流れ。
厳しい……。




