竜の谷
工房に新しいドロップ武器を見せに行くと、そこにはレイさんがいた。
付き添いの様だ。
大ギルドの職人チームは頻繁に情報交換をしているからな。
血の棺のメンバー達は、俺からドロップ武器を奪い取った職人ギルドの連中と一緒に、工房の奥に入って行った。
取り残された俺とレイさんも情報交換する事にした。
「大ボスソロですか、無茶しますね」
「あのドロップを生産できるようになれば戦力増強できるんですけどね」
「あの大剣、石化効果あるんですか」
「さすがに象と繁茂は後回しですけどね」
アイスマンモスとボルボックスはまだ危険と判断している。
あれこれと話し合って最後に本題に入る。
「で、転生法の見当は付いたんでしょう?」
「ええ、まあ」
レイさんの話によると『古城』の大ボスは『ヴァンパイア・マスター』だとか。
そしてそいつに咬まれると、目が赤くなり奴の下僕にされてしまうらしい。
そのままなら大問題だが、混乱や魅了と同じ扱いで回復できるのだ。
そこで立てられた仮説は、吸血鬼化して暴れるプレイヤーを、そのままにして大ボスを倒す。
そうすれば吸血鬼化が戦闘後まで解けず転生成功……といったものだ。
疑問はそうやって転生できたとしても、彼らは眷属化のスキルで吸血鬼になった者と同じ。
つまり真祖どまりで始祖にはなれない。
つまりもう一段階が必要。
ヴァンパイア・スレイブから真祖になった者が『ヴァンパイア・マスター』を倒す。
それが今の最有力説だ。
『オーバー・ソウル』と同じく『ヴァンパイア・マスター』も戦闘前にセリフがある。
『我が貴き血を奪いに参ったか』
これは戦闘に参加した血の棺のヴァンパイアプレイヤーに向けられていたのだろう。
「うーん、手伝うべきか微妙ですね」
「そうですね。『オーバーソウル』のように条件を満たして倒さなければいけない恐れもありますし」
「まあ、必要だったら呼んで下さい」
「ええ、そうしますよ」
武器の調査は時間がかかりそうだ。
俺はずらかろう。
昨日ハッスルしたからな。
今日は少し大人しくしてよう。
やってきたのは空の上。
俺はベルクに乗って第3エリアの上空を散策していた。
飛行系の従魔も存在はするが、空中で馬車を引く事は出来ないのであまり見かけない。
1度2人乗りのペガサスを2頭見かけたくらいだ。
ん? 今、上空に何か見えた様な……。
しかし、見えるのは青い空に白い雲。
特に目につく物は無い。
気の所為か?
しばらくするとまた気になるモノが見えた。
今度は地上だ。
『邪竜の迷宮』の出口の近く、第3エリアの入り口付近。
20人ほどのプレイヤーが集まっていた。
何してるんだろう? 行ってみるか。
「なあ、何してるんだ?」
「ん? ああ、アレの調査だよ」
示された先には竜の石像があった。
「迷宮の飾りじゃないのか?」
「入り口側には無いんだよ」
そういやそうだったな。
竜……竜ね。
「ちょっと見せてもらっていいか?」
「ん? あんたは……」
「それはかまわんが、何をしても反応無いんだよ」
「怪しいんで気になってはいるんだが……」
しかし、俺が近づくと石像の目が光った。
ざわめくプレイヤー達。
やはりか。
汝、竜を打ち取りし者よ……。
古に封じられし戦場を解き放とう……。
ボロリ、と石像が崩れ岩山に新たな道が姿を現した。
やはりあったか『ドラゴン・バスターの称号』の使いどころ。
というか、よく見てればもっと早く解放されてた?
サーバーの皆さん、すいません。
新たなフィールド『竜の谷』。
俺は調査に来ていたプレイヤー達と早速行ってみた。
出てくるモンスターは竜系の強敵ばかりだった。
おなじみの飛竜『ワイバーン』、蛇の様な姿の『ワーム』、凶悪そうな外見のドラゴノイド『ドラゴ・バーバリアン』、翼の無い竜『ドラゴ・リザード』。
どれも単体の戦闘力が高い。
それが大抵3体以上の群れで来る。
深入りは危険と判断し、適当なところで引き揚げる。
余談だが俺の攻撃は必ずクリティカルヒットだった。
さすがドラゴン・バスターってとこか。
そして、新たなフィールドの情報は、その日の内に広まった。
あ、ドロップ武器返してもらうの忘れてた……。
ヴァンパイアの転生条件登場。
そして新フィールド解放。
主人公が空で見かけたのは何だったのか?




