ⅩとZ
この数日、俺は頑張った。
話に聞いた『氷雪花』を求めて『霊峰』にチャレンジし続けたのだ。
霊峰は雪山だ。雪原よりも踏破は格段に厳しい。
まずはベルクに乗って中腹らへんまで行ってみようとした。
すると竜巻が起きて入り口に戻された。
次にハウルに乗って山を登った。
すると雪崩が起きて入り口に戻された。
どうやらズルせずに自分の2本の足で登れということらしい。
氷属性を持つフェイ、ハウル、プルートと共に延々と雪山を歩き回った。
現実だったら何度か凍死していただろう。
とにかく寒いし吹雪で視界が利かない。
素材サーチスキルの反応は多いが『氷雪花』は出ない。
襲ってくる大猿『サスカッチ』や凶暴なトナカイ『マッド・カリブー』、それに『アイス・エレメンタル』を相手取りながら霊峰をさまよう。
描写することは少ない。
竜槍杖が強すぎて苦戦はしないんだよ。
面倒なだけで。
そんな事を数日続けたのだ。
自分の根気を褒めてやりたい。
そして、ついに『氷雪花』を見つけたのだ。
ただし、フェイが。
いいじゃないか。
使い魔の物は、俺の物だ。
妖精だけあって草花を探すのは得意だったらしい。
しかし、そのフェイでも見つけるのに数日かかったのだ。
どれだけレアなんだか。
これで意味無かったらオーブ屋の営業妨害してやるぞ。
具体的には入り口にネクロスとシザーを立たせてやる。
止めにシミラをドアに潜ませて壁に見せる。
うむ。完璧だ。
我ながらアホな事を考えながら霊峰を後にした。
しかし、氷雪花が2個必要な事に途中で気付き、またフェイに数日かけて探してもらったのだった。
後日、オーブ屋
「ふむ、確かに『氷雪花』ですね。最近見かけないと思ったら、これを探してたんですか」
「あんなに出にくいとは思ってなかったぞ」
「だから出回らないんですよ。で、これは2つとも『スノウパール』にするんですか?」
「ああ、腕の良い錬金職人知らないか?」
「工房に持っていけばいいのでは?」
「あそこには別の依頼があるんだ」
「ふむ、そういえば最近急に腕を上げている錬金職人がいましたね」
「へえ、ホビットか?」
「いえ、リッチです」
「ゼクかよ!」
あいつ主力魔法部隊のくせに何やってんだ……。
まあいい。知り合いが相手なら話は早い。
ゼクの出入りしている店を聞いて、そこに向かうことにした。
「おお、フィオさん。リッチ最高っす!」
「満喫してるなあ……。錬金頼めるか?」
「どんと来いっす」
ふと、ゼクが首に金のメダルをぶら下げている事に気付いた。
『ゼク』と名前が彫られている。
こいつ『ゴールドメダリオン』をネームプレート代わりに使ってるのか。
「お前リッチだな……」
「? そりゃ、リッチすよ。この骨っぷり!」
「いや、そうじゃなくてだな」
金まわりの方だよ。紛らわしいな。
「ははあ、宝石合成っすか」
「ああ、頼めるか?」
「了解っす。でも、時間かかるかもしれないっすよ」
「ああ、いつでもいい。何なら他にも人集めてもいいし。じゃ、頼むぞ」
次は工房か。
くっ、何か起きそうで怖い。
「おう、ちょうどいいとこに……」
「依頼だ!」
危なかった。
俺は便利屋かよ……。
「今度は短剣か」
「ああ、素材は何でもある」
残りの邪竜素材、バシリスク素材、毒薬、毒草、他にも役に立ちそうな素材を次々出す。
メイン鉱石はヒヒイロカネにしてもらう。
そして
「なあ、これって使えるか?」
「あ? なんだそりゃ?」
それは2本のビンに入った黒いヘドロ。
こいつらには縁が無いだろうが、俺にとっては呪いの様に付きまとうモノ。
その名は「失敗作Ⅹ」と「謎の物体Z」だ。
戸惑うギルドマスターに短剣と一緒に押し付け、工房を後にした。
何かの役に立てば良し。
立たなくてもあいつらなら実験材料にするだろう。
うん、有効利用できた。……はず。
懐かしのヘドロ再登場。
ヘドロの利用は読者様のアイディアです。




