ホームエリア
『ミラー・エレメンタル』の襲撃に対応するため、俺は最前列に配置換えになった。
いると判ればそれほど危険は無い。
進行速度はだいぶ速くなった。
俺にとっても『ミラー・エレメンタル』は面白い能力持ちだった。
ふむ、使い魔にしてみようかな。
使い魔たちは皆一騎当千と言える強力なモンスターが揃っている。
しかし、こいつは「力」とは別の「強さ」がある。
現にプレイヤー達はこいつに翻弄されてきたのだ。
奥に進むと出現する数も増える。
ランク3のモンスターとはいえ、何十匹も倒せば使い魔にする事が出来た。
契約に成功しました。
「名前は……シミュレーション……『シミラ』にしよう」
使い魔契約完了。
『シミラ』はランクアップしました。
名前 『シミラ』
種族 『擬態幻魔』
属性 『光』『闇』
ランク 4
使い魔契約を見られたのは初めてだな。
皆、興味深そうに見ていた。
能力の確認は後にしよう。
まずは迷宮を調査しないと。
奥に進んだがボスの出る気配は無い。
中ボスがいるならとっくに出ているころだ。
普通のダンジョンとはだいぶ違う様だな。
そしてボスに出会うこと無く最奥の部屋にたどり着いた。
そこには30個以上の宝箱があった。
数えてみると36個、メンバーの人数と同じだ。
これは1人に1個ということか?
話し合いの結果全員で一斉に開けることになった。
皆は適当に散らばり、全員の準備が整った。
「それじゃ、3、2、1、0!」
パカ
ボムッ
ビョーン
プシュウ
4分の1が爆弾、4分の1がビックリ箱、4分の1が睡眠ガスだった。
しかし、残りの4分の1はクリスタルが入っていた。
「これは……」
「『ホームクリスタル』?」
鑑定スキル持ちが調べる。
すると、これはギルドマスターが使用することで『ホームエリア』という空間を作る事が出来るアイテムである事が判った。
通常は町に家を借りてギルドの拠点にするが、これを使えば拠点をタダで作成できる。
ギルドマスターは鍵状のアイテムを作成できる。
これをもらったプレイヤーは町やセーフティエリアから拠点に転移できるのだ。
なかなか面白いアイテムだ。
今回のメンバーでギルドを組んでいるのは6組。
クリスタルは9個なので、3個はあまった。
当然というかソロは俺だけだが、活躍したし2個以上あってもしょうがないので俺が余りをもらった。
職人ギルドに渡せばコピーしてもらえるかもな。
どうやらこのダンジョンは、いわゆるプレゼントダンジョンだったようだ。
クエストは成功。
第3の町に戻って解散ということになった。
俺は職人ギルドの工房とオーブ屋にホームクリスタルを1個ずつ売った。
どっちかが解析して量産してくれるだろう。
さて、どうやらホームクリスタルはソロでも使えるらしい。
すでに情報は出回り、いくつものギルドがクリスタルを求めて迷宮に向かっている。
しかし、迷宮は入るたびに構造が変わるらしい。
不思議のダンジョンみたいだな。
それはさておき、俺もホームエリアを作ってみることにした。
クリスタルを使用すると、俺は校庭位の広さの広場に転移した。
周囲は森になっている。
森の中はどうなってるかと思ったが、唯の背景の様で進めない。
もう一度クリスタルを使うとカスタムメニューが出た。
背景は森の他にも草原、雪原、海など色々あった。
海を選ぶと孤島の様な雰囲気になる。
「お、これいいな」
俺が選んだのは空だ。
まるで浮遊島にいるみたいに感じる。
次はオブジェクトか。
そこで気になった事が1つ。
ここでは使い魔はどういう扱いなのだろう?
試しに呼び出してみる。
「なるほど。メンバー扱いか」
なんと11体全員呼び出せた。
なんというか圧巻だな。
じゃあ、こいつらに合わせたオブジェクトを配置するか。
エリアの4分の1ほどに木や草を生やし森を作った。
フェイ、ハウル、リンクス、シザーは喜んで入って行った。
広さは森ほどではないが、高さを取った岩山と洞窟も作る。
ネクロス、ギア、ベルク、プルート、ヴァルカンがそこへ向かう。
次に直径30m深さ3m程の池を作った。
バイトはそこに入って行った。
シミラはいまいち好みが解らないが……。
建物の中とか?
自分も部屋が必要だし、中心に建物を置くことにした。
デザインはどうしよう。
ふむ、人を招くかもしれんし魔王城みたいなのはやめておこう。
普通の神殿っぽいのにしとこうか。
つまらないって? 俺は中2の病は卒業したよ。
まあ、でも期待を裏切ったとか言われそうだし玉座の間でも作っとこう。
シミラは早速柱に化けたようだ。
部屋や内装を整えて行き、ようやく完成。
ふう、結構時間かかったな。
何時の間にかネクロスとプルートは玉座の間に来ていた。
騎士の様に待機している。律儀だ。
使い魔は呼ばれていない時はホームエリアで待機するように設定しとこう。
後日、クリスタルやエリアの機能などの情報収集のために、各ギルドのホームエリアのお披露目が行われた。
彼のエリアに入る際、事前説明は一切されなかった。
森に行った者は絶叫し、山に行った者は逃げ帰り、池に近寄った者は腰を抜かした。
そして、最後に神殿に入って降参した。
結果、このエリアは凶悪な使い魔の巣として、体験した、あるいは話を聞いた他のプレイヤーから万魔殿扱いされることになる。
意外と質素な魔王の居城。




