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鏡の迷宮

 

「どうだ、禍々しいだろう」


「その言い方はどうかと思いますが、確かに凄い武器ですね」


「邪竜素材を大量に使ったからな。宝玉は眼らしいし」


「ふーむ、これはあなた以外装備できないようになってますね。確か固定バインド処理でしたか……」


「……説明受けてないぞ。それ」


 オーブ屋に竜槍杖を見せた後、早速聞いてみる。


「今のところ宝石は使い捨てなんだが、壊れない宝石って知らないか?」


「ふむ、そうですね……」


「ヒントになるようなことで良いんだが」


「ああ、そういえば『霊峰』で稀に取れる『氷雪花』とパールを合成すると『スノウパール』が作れるらしいですよ」


「『スノウパール』?」


「ええ、希少なんで付加媒体に使ったという話は聞いていませんが」


「なるほど、試す価値はあるか。氷雪花ね……」


「採取というより宝箱の様なものらしいんでフィオさんでも取れると思いますよ」


「そりゃどうも。霊峰か……」


 他にも似た様な宝石強化があるんだろうか。

また情報があったら欲しいと言い残し、謝礼を払って店を出た。



 数日後、俺は冒険者ギルドで依頼を受けていた。

以前耳にした『鏡の迷宮』の探索希望者の募集があったのだ。

今までとだいぶ毛色の違う場所の様なので興味があったのだ。



 集合したメンバー達と迷宮に向かう。

ほとんどの者が馬車を使っているが、俺は何人かの希望者とハウルに乗っている。

こうしてみると、やはりハウルは速い。

『騎乗』スキルにそんなに差は無いと思うので、純粋なSTの差だろう。

パワーアップした従魔たちをものともしていない。

同乗している連中も振り落とされないよう必死だ。

俺は慣れてるけどね。


 迷宮の中は第1エリアのラストに似ていた。

出てくるモンスターもリビング系の上位種『カースドソード』や『カースドアーマー』、それに『アイアンゴーレム』などの物質系魔法生物だ。


 あの時同様に、俺は最後尾で敵のバックアタックに備えていた。

しかし、俺は妙な事に気付いた。

前方、魔力探知に反応があるのに誰も戦闘態勢に入らない。

よく見えないが前方が騒がしくなり、敵の反応が離れていく。

逃がしたのか? それとも襲撃に気付かなかった?

後ろからではよく解らない。


 しばらくすると広間に出た。

俺は前方にいた奴らに話を聞いてみた。

なんでも、突然壁が崩れてきたり柱が倒れたりしたらしい。

話に聞いたトラップか。

じゃあ、あの反応はなんだったんだ?


 疑問に思いながら広間の調査に参加する。

部屋のど真ん中にモンスターの反応がある。

しかし、なにもいる様には見えない。

ステルス? 地下? 天井?


 上を見上げると、そこにはシャンデリアが。 

あの上か? いや、まてよ……。

そもそも、この部屋に入った時シャンデリアなんてあったか?

疑問を感じた瞬間シャンデリアが落下した。

下にはプレイヤーが3人。


「避けろ! 上だ!」


ドガシャアァ


 何とか回避に成功したようだ。

突然の出来事に戸惑っている。

しかし、俺は別の事に気を取られていた。


 砕けたシャンデリアが消えた。

これは普通のトラップと同じだ。

しかし、その後にピンポン玉くらいの銀の球体が残っていたのだ。


 球体はコロコロと転がって行き、やがて消えた。

魔力探知では球体の移動に合わせて反応が動き、球体が消えると反応も消えた。

なるほど、そういうことか。


「ちょっといいか? 気付いた事がある!」


 大声で全員を集め1本の柱の前に立った。

何の変哲もない柱だが、魔力探知には敵の反応がある。

まず、柱の根元にナイフを投げた。

当然、石の柱にナイフは弾かれた。


 次に柱の上部にナイフを投げた。

するとナイフは柱をすり抜けた。


「なっ!?」


「どうなってんだ!?」


「こいつが奇妙なトラップの正体さ」


 柱に魔法を打ち込むと、霧が晴れるように柱の上部が消え去った。

残ったのは折れて半分になった柱と銀色の球体。

球体は逃げようとしたが俺は逃がさなかった。


「【ジャべリン】」


 中心を槍杖に貫かれた球体は砕け散った。


 球状の核のまわりに粒子状の外殻を纏う魔法生物。

能力は粒子の変形と強力な幻術による変身と擬態。

折れた柱、崩れた壁に潜んで。あるいは装飾などに擬態して獲物を待つ。

トラップ状の攻撃は魔法扱いであり、魔法防御の低い戦士系の方がダメージが多い。


 核以外への物理攻撃は効果が薄く、逆に核は魔法に強い。

トラップの様な攻撃を加えると一目散に逃げ出し、離れたところでまた潜む。

魔力探知が無ければ、見つけるのは困難だっただろう。


 『ミラー・エレメンタル』


 それがプレイヤー達を混乱させてきた、『鏡の迷宮』の名の由来でもあるモンスターであった。



こういうトリッキーなモンスターは初ですね。

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