鍛冶屋と道具屋……そして欠点
鍛冶屋に向かって町の中を歩く。
不気味な像や絵が無ければ普通の町だ。
「ここか。結構暑いな」
鍛冶屋は町工場といった感じだが、炉があるので暑い。
「……ここも客がいないな」
プレイヤーがいないのは確認済みだが、ここの武器防具屋もNPCの客すらいない。
店主だけだ。
隠れ里だから寂れているってとこか。
シャドウウルフの毛皮でフード付きコートを、ポイズンスネークの蛇皮から靴を作ってもらい装備する。
NPC作なので品質は普通。
まあ、現時点ではプレイヤーが作るより高品質だろう。
あとは蛇皮のグローブも欲しいところだな。
今は素材が無いから後日か。
次は道具屋に向かおう。
「お、人がいる」
初めて店員以外の人がいた。
MPポ-ションや網、つるはしなどを購入してから話しかけると
「スキルはいかがでしょう」
なんとスキル屋さんだった。
小さい町なので店が共同らしい。
金が貯まったら買うことにしよう。
今は余裕がない。
初期スキルはメニュー画面で選択したのだが。
スキルは勝手に覚えるものも多いが、買わないと覚えないものもあるらしいしな。
必要なスキルもピックアップしておくか。
今日はこの辺にしておこう。
俺は宿屋に戻った。
翌日
「では、いざ素材集めに」
気力を取り戻した俺は、素材集めとスキル強化のために町を出た。
向かうのは沼だ。
火ばかり使うとバランスが悪いので意識して色々な属性を使う。
ウィスプはいい的だ。
採掘や釣りなども試してみる。
結構忙しいな。
そして2日が経った。
今、俺の視界にはタイマーが浮かんでいる。
メニューを操作したら出た強制ログアウトまでの時間だ。
まだ余裕だが、それまでにはログアウトしろということだ。
廃人どもには便利だな。
装備もスキルもそれなりに揃えたのだが、1つちょっとした問題があった。
それは悪魔という種族は、戦闘以外がほとんど駄目ということだ。
スキル自体は覚えたのだが……。
採掘しても石ころだらけ、竿を構えれば魚が逃げ、網を持てば虫が逃げる。
おまけにピッケルや網もボキボキ壊れた。
料理をすれば炭になり、鍛冶をすればクズ鉄になり、調合すれば謎のヘドロになった。
比較対象がいないので確証は無いが、素材回収もかなり怪しい。
……地味に嫌なデメリットだった。
鉱石や薬は購入し、鍛冶も店に任せた。
どうせ初期なら、そう変わらんだろう。
ゲームが進んだら、鍛冶師や素材屋をやるプレイヤーにまかせればいい。
一応、素材サーチ系のスキルは購入したからいざとなったら根気だな。
現状でもでかい町ならもっと楽なのだろうか。
さっぱりわからん。
考えてみれば小さな町に一人なのだ。
情報弱者もいいところだ。
「そういえば情報交換サイトはどうなったかな」
別に8日間、リアルで4時間ログインし続ける必要はない。
一度ログアウトして情報収集するのも良いかもしれない。
「じゃ、ログアウト」
俺は現実世界へと帰還した。




