堕天使の悪業
まず敬太ことイコンは手駒を増やすことにした。
悪魔転生の条件は悪事だという噂を流し、犯罪プレイヤーとなった者たちを増やした。
そしてそれっぽいギルド名をつけ悪魔希望者たちを集め、彼らを使って他のプレイヤーを妨害した。
情報を少し操作すれば考え無しの連中など思うように動かせた。
その影響は他のサーバーまで及んだ。
思慮の浅い少年達に比べ、頭の切れるイコンは優秀なリーダーとして支持された。
勢力は拡大し、戦力は増強された。
手強いプレイヤーも10対1など数に任せて仕留めた。
不意打ち、だまし討ち、なんでもやって蹴落とした。
第1エリアのボスの初期ドロップを独占し、エリアボスも倒した。
その時点でメンバーは200人を超えた。
イコンは部下にはできるだけアメを与えた。
同時にムチも忘れず逆らう者は許さなかった。
他の犯罪者ギルドとも連携した。
ボスは数で押し、自分はやられないよう後方で魔法を使った。
天使はすぐに堕天使となった。
イコンの計画は順調だった。
やはり自分は優秀であり、人の上に立つべき人間なのだと信じた。
問題は何もなく、全ては自分の思い通りだった。
はずだった。
視野狭窄を起こしていたイコンは気付いていなかった。
サーバー内でトップになっても、イコール「真の」トップではないということを。
始まりは情報交換サイト。
そこに自分達が独占している情報を含む、膨大な情報が載り出したのだ。
投稿したのは第3サーバーだった。
その情報を基に、蹴落としたはずのプレイヤー達は息を吹き返した。
イコン達は再び叩き潰そうとしたが、彼らも連合し対抗してきた。
数で言えば自分達は負けている。
少数を集団で襲うという戦術を逆にやり返されたのだ。
そして、この対立が致命的な差を生んでしまった。
運営が重視する進行度が最下位になってしまったのだ。
それだけではない。
トップの第3サーバーが、悪魔転生の方法を解明してしまったのだ。
それはイコンの嘘を暴くことになった。
これによって少なくない離反者が出た。
さらに続いた第3エリアの解放。
開いた差は決定的なものになった。
こうなってはなりふり構っていられなかった。
対立するプレイヤー達に休戦を申し入れ、協力して大ボスに挑むように要請した。
後ろから刺すつもりでは? と疑われ、実際やろうとする者もいたがなんとか部下を抑えた。
各大ボス戦に必ずメンバーを参加させ素材を集めた。
そして50人分の良質な装備をそろえた。
第3サーバーからの情報を基にアクセサリも用意した。
邪竜の迷宮が現れると、彼らはすぐに攻略に乗り出した。
対立しても得は無いから、と他のプレイヤーとも連携した。
しかし、邪竜戦の準備ができた時、彼は焦りからミスを犯した。
討伐に向かおうとした同じ日に、もう1つ邪竜討伐レイドパーティが組まれていたのだ。
彼は控えのメンバーに妨害を指示してしまった。
これでまた第2サーバーは対立の構図に戻ってしまうだろう。
しかし、邪竜さえ討伐できればどうとでもなるはずだった。
だが、現実は残酷だった。
邪竜を甘く見ていたと言ってもいい。
邪竜との戦場はただの広間で、真っ向勝負以外に戦法は無い。
地形を利用したりといった手段が取れないのだ。
そして正面突破するには彼らの力は足りなかった。
紅いオーラを纏い真の力を発揮した邪竜を前に、メンバーは全滅してしまったのだ。
メンバーは犯罪プレイヤーなので、その損失は莫大だった。
そして、自分から休戦を言い出して自分から破ったイコンを信じるプレイヤーはいなくなった。
ギルドメンバー達もイコンの指導者としての資質に疑問を持ち始めていた。
「くそっ! こんなはずじゃあ……」
役に立たない部下の所為。
邪魔をする一般プレイヤーの所為。
どんどん進む第3サーバーの所為。
自分を評価しない運営の所為。
責任転嫁と自己弁護の言葉が頭を埋め尽くす。
しかし、彼は気付いているだろうか?
かつて彼は部下に言った。
「出来ないお前が悪い」「理解できないお前が悪い」と。
その言葉に当てはめれば、彼はまぎれもなく「悪」だった。
堕天使の正体は利己的なインテリ崩れでした。
実は知らぬ間に、すでに成敗されてたりしたわけです。




