竜槍杖
リッチ転生の条件が解明されたわけだが、イベントクエストは起きなかった。
最初の1回だけなのだろうか。
まあ、探索する場所はまだまだあるから別に不満は無いけど。
では、槍杖を取りに行くか。
「槍杖できてるか?」
「おう、来たか。これだ」
差し出された槍杖はかなり禍々しい雰囲気になっていた。
邪竜素材の所為か?
結構大量に使ったし。
形状は穂先の大きいパルチザンタイプ。
長さは接近戦でも使いやすいように2mちょいと槍にしては短め。
石突きは小型のメイスの様になっている。
オリハルコンによって非実体系の敵も貫ける。
投擲用の槍の形じゃないが、まあ問題無いだろう。
宝玉は邪竜の眼と同じ金色で、刃の根元に付いている。
その周りには色とりどりの宝石が付いている。
一緒にアポート・リングの指輪も受け取る。
これで投槍の準備は万端だ。
「お代はこんなとこだな」
「んー? こんなでいいのか?」
「予備の宝石はサービスだ」
思ったより安い。
アポート・リングが高いくらいだ。
もらった小袋の中には全種類の宝石が2個ずつ入っていた。
「素材の大半が持ち込みだからな。新技術の実験も兼ねているし気にするな」
「そうか、ありがたい。ところで銘はあるのか?」
「ああ、『竜槍杖セルピヌス』だよ」
「セルピヌス?」
「ああ、カンヘルってドラゴンの王らしいぞ」
「ふーん。んじゃ、今度は短剣と防具だな。素材集めてまた来るわ」
「あいよ」
竜槍杖ね。完全なワンオフだよな。
一品物の武器は少数だが作られ始めている。
しかし、この竜槍杖は今まで見た武器が木刀に思えるほどの迫力を纏っている。
付加を起動させなくても並の魔法武器を遥かに超えるだろう。
冒険者ギルドに向かうと、またもや賑やかだった。
最近こればっかりだな。
今度はなんだろう。
「なあ、何かあったのか?」
「ああ、ヴァンパイア転生の手がかりかもしれないぜ」
「へえ、続くな」
「そんなもんだろ。場所は古城だ」
「そういや、『血の棺』が怪しんでたっけな」
「なんでも中ボスが『ウルフ・ジャイアント』と『タイガー・ギガ―ス』だったらしい」
どっちも巨人っぽいが、狼男と虎男か。
ヴァンパイアの下僕としては結構有名だな。
「なるほど。後半にヴァンパイアが出る可能性大だな」
「ああ、魔法職の連中で希望者は結構いるからな」
そうやって、情報を集めていると妙なダンジョンの話を聞いた。
『鏡の迷宮』というらしいが、トラップによる被害が大きいのだ。
通常のトラップは矢や落石、落とし穴といったところだ。
宝箱には毒ガスや、時に爆弾が仕掛けられている。
しかし総じて嫌がらせ程度でダメージは小さい。
ところが『鏡の迷宮』は突然柱が倒れてきたり、シャンデリアが落ちてきたりと罠が大掛かりだ。
しかも重装備の前衛が大ダメージを受けたというのだ。
不思議な事に防御力の低い後衛のダメージは、前衛より軽かったとか。
そもそも、なぜ「鏡」なのかも解っていない。
近々調査部隊を送り込む予定らしい。
ふむ、こっちも面白そうだ。
予定を立てながら町の外に出た。
広い草原に俺は立っていた。
町から少し離れたところだ。モンスターはいないようだ。
マスタングの魔獣化した従魔『スレイプニル』やランド・エミューを強化した『ランド・モア』が引く馬車が通って、こちらを不思議そうに見ていた。
彼らが完全に見えなくなったところでベルクに乗って飛翔した。
竜槍杖の性能実験開始だ。
雷属性を付加させた竜槍杖を、地面に向けて投槍スキルで打ち込んだ。
「【ピアサー】!」
ボゴォォォォ
ダイナマイトでも爆発したような轟音と衝撃。
砂塵が晴れるとそこには大きなクレーターができていた。
すげえ……、以前の倍以上の威力だ。
そして指にはめたアポート・リングを使うと竜槍杖は瞬時に手に転移してきた。
はまっていたアメジストが砕けて外れた。
予備のアメジストをはめた俺は第2の町にベルクを向かわせた。
オーブ屋に見せて自慢しよう。
ついでに壊れない宝石の当てがあるか聞いてみるかな。
完成 反則武器。
次回、ついに堕天使の登場。




