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その頃の妹達

 第1サーバーの第2エリア。

『黒の遺跡』の最奥で、大ボス『ゴルゴン』の討伐が行われていた。


「邪眼来ます!」


「はいよ!」


 ローブを纏った骸骨、リッチの合図でゴーストが射線を塞いだ。

邪眼によってゴーストは石化したがその後のプレイヤーは無事だった。


「サンキュ、ダンさん!」


「攻めろ!」


 その後も打ち出される邪眼はアンデッド達が防ぎ、ゴルゴンの討伐は成功した。


「はあ、はあ、疲れたなー」


「まあまあ、犠牲者いなかったじゃん」


「そうそう」


「良い作戦だよね」


 彼女達は上位ギルド『フローライト』の戦闘部隊幹部。

フィオの妹、リエとその友人達だった。


 第1サーバーにはトップギルドと言えるほど飛びぬけた勢力や功績を持つギルドは存在しない。

第3サーバーから情報がもらえるので、自分達で戦術を考える必要がない。

逆に言えば「彼らがいないと」という存在も現れないし必要無いのだ。

それは第3サーバーのトッププレイヤー達が他のサーバーでも貢献しているという事でもある。


「ま、兄貴が立てた作戦だし当然か」


「リッチ見たこと無いのにね」


「さすがと言うかなんというか……」


 邪竜の迷宮の出現によって『ヘンルーダの腕輪』の需要が一気に高まった。

なにしろ中ボスも大ボスも石化の邪眼を使うというのだから。

その情報も対策情報も第3サーバーからもたらされていた。

それがゴルゴン素材を使った耐石化アクセサリの存在だ。


 しかしゴルゴン自体も邪眼を使用する強敵だ。

素材集めは順調とは言えなかった。

そこでリエは兄に相談してみたのだ。

兄自身は邪眼をかわしたとか馬鹿な事を言っていたが。


「ダンさん。わざわざすいませんね」


「いやいや、たまには戦闘も悪くないですよ」


 彼は職人ギルドで、錬金術師兼ギルドリーダーをやっているダンさん。

種族はなんとリッチだ。

何で戦闘職じゃないのと思うが、リッチは薬やマジックアイテム作成、鉱石のインゴット化に優れた能力を発揮するのだ。

身体能力は低いが彼は魔法と別の道を選んだ異色のリッチなのだ。


 相談を受けた兄の出した案は、リッチさんにご足労願い支配したアンデッドを邪眼に対するアクティブシールドとして使用するというものだった。

邪眼は貫通しないので使役するアンデッドの強さは低くて良い。

リッチ自身も自分が戦う必要は無い、ただ邪眼に対処してくれればいい。

ということだった。


 私達は無理を承知でダンさんに協力を依頼した。

アンデッドの下僕集めを手伝ってくれるなら、とあっさりOKがもらえて驚いた。

彼としてもゴルゴン素材が手に入るなら得だということだった。

そして作戦は有効で討伐ペースは明らかに上がっている。


「今日はここまでだ」


「いったん戻ろう」


「補給も必要だ」


 プレイヤー達が次々と帰還していく。

さすがに連戦は堪える。

ダンさんも私達も引き返すことにした。


「カヨ、素材の量は?」


「うーん、もう少しかな」


「ヘンルーダは十分あるよ」


「悔しいけど、もらった情報は正確だね」


 と、リエが脇道にそれていく。


「あれれ?」


「リエ?」


「どこいくの?」


 声を無視して進んだ先にあったのは


「あ、これって」


「例の……」


 そう、悪魔に転生する資格を持つ者だけが通れる魔法陣だ。

手を押し当てると半分ほどの宝玉に光が灯る。

第1エリアのボスを単独撃破したからだ。


 兄はとっくにここを開き、本当の意味で悪魔と言う種族をものにした。

自分にはここを通る資格を得られるのだろうか?


「リエちゃん……」


「今はできる事をしようよ」


「うん、そうだね」


 電脳世界がもう一つの現実である今の時代、兄はある意味ヒーローだった。

自分にとっては目標だ。

数年のブランクなど兄にとっては無いも同然だったようだ。

それでこそ目指すかいがある。

 

 もう少しでバシリスクに挑む準備が整う。

昨日もレアドロップの盾狙いで先走った連中が、状態異常のフルコースを食らって返り討ちにあったらしい。

「戦いは始まる前に半分は勝敗が決まっている」それが兄の考えだ。

私達もせいぜい完璧に準備を整えよう。



妹も悪魔希望。

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