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スタッフ達の閑話

 夜の12時、各サーバーのセンターエリアではデータの集計が行われていた。

βテストは24時間いつでもログインできるわけではない。

朝の9時から夜の9時までの12時間がログイン可能時間帯で、それを過ぎると強制ログアウトされる。


 夜の10時には全サーバーが待機状態になり、11時からがスタッフの仕事時間となる。

その日も第3サーバーのスタッフ達は「彼」のデータに感心していた。

現在最も進んでいるのは第3サーバーであり、貢献度は最下位の第2サーバーの倍はある。

第2サーバーはマイナス面でのデータ提供という点では貢献しているが、如何せん進行が遅い。


 そして「彼」は第3サーバーの貢献度の実に30%を叩き出していた。

はっきり言って異常である。

1万人いるプレイヤーの中で1人が3000人分の成果を出すなと普通はありえない。


「相変わらず凄い反応ね」


「どうやったら、こんなのかわせるんですか」


「明らかに攻撃を認識してるわね」


「音速に近い速度ですよ!」


「認識どころか知覚できるかも怪しいのに……」


「ほら、ここ。視線や手の向きから魔法の弾道を予測してるわ」


「撃つ前に動いてますもんね」


 彼らはここまでのデータで、彼の知覚速度や反応速度が常人の2倍を超える事を知っていた。

やり取りされるデータの量としてはっきりと差があるのだ。

そして、そのデータの流れを感じ取る第6感じみた能力がある事も。


 本人は魔力や勘などと言って、はっきりと認識しているわけではないようだが。

しかも、徐々にその頻度や精度は上がっている。

特に顕著なのは戦闘中だが、魔獣屋でカーバンクルを選んだ時は絶句してしまった。


「教授が推すわけだな」


「ああ、例のオブザーバーの先生が……」


「秘蔵っ子らしいね」


「確かに凄いデータが取れてるけどさ」


 プレイヤーの中には彼が強いのは種族のおかげと考える者も多いだろう。

しかし、悪魔はそれほど飛びぬけた種族ではない。

総合戦闘能力はトップだろうが、力ではハイ・オーガノイドに負けるし知性ではニンフに負ける。

魔法向きなリッチやヴァンパイア、プレイヤーに合わせて成長する天使と比べ、器用貧乏になりやすい種族なのだ。

そして、同じように器用貧乏になる恐れのあるヒューマンと違い、戦闘以外は壊滅的だ。

だからトップクラスの腕を持つプレイヤーでないと突破できない転生条件を設定したのだ。


 使い魔にしても同様だ。

半端な実力のプレイヤーでは周辺の雑魚と同等の使い魔しか呼び出せない。

そもそも、好戦的なモンスターを使い魔にするには圧倒的な力の差を見せつける必要があるのだ。

普通なら使い魔など召喚に毛が生えた程度のスキルでしかなく、眷属化や使徒化の方がよほど有用だ。

数が多く、誘導弾の様に使える支配の方が使い勝手もいい。


 悪魔化も条件が厳しすぎる上に、通常なら一周りパワーアップするくらいがせいぜいだ。

なぜなら、盾代わり位にしかならない使い魔では戦闘データなどさほど貯まらないからだ。

使い魔も仲間も全てやられ1人になって、発動してもSTアップは1.2倍程度。

それが10分では危機を切り抜ける切り札としては弱い。


 だから彼がイビル・ドラゴンを倒した時はスタッフ全員が言葉を失った。

βテストでなければネットに動画として流したいくらいのトンデモ映像だった。

他の3サーバーが第3エリアに到達するにはだいぶかかるだろう。

イビル・ドラゴンはそれほどに強いのだ。


「このままだと第3サーバーだけ突き抜けすぎますね」


「これが結果なんだ。悪い事じゃないさ」


「そうそう、私らが手を加えたわけじゃないし」


「例のイベントは全サーバーがある程度第3エリアを攻略したらだっけ?」


「まだ、チーフ達が話し合ってるみたいだけど多分ね」


 深夜の作業は続いていく。

こうしてプレイヤーとスタッフ、彼らの努力はまるで木の実が熟するように実っていく。



開発陣もビックリだった怪獣決戦。

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