身から出た錆?
「こんちわー」
「盾を持って出直しやがれ」
「……」
おかしい。客なのに何でこんなこと言われるんだ?
なのに相手の要求が判ってしまう自分が悲しい。
要するにバシリスク・シールドを見せろということだ。
いったん工房の外に出てネクロスを呼ぶ。
バシリスク・シールドを外し予備のメテオライト製の盾を持たせる。
「じゃあ、ちょっと待機しててくれ」
言い残して再び工房へ入る。
盾を渡して早速聞いてみた。
「ああ、アポート・リングね。最近できたばっかりなんだが良く知ってたな」
「まあな、それで商品としては売ってるのか?」
「売っても良いがまだ値がはるぞ」
「うーん、見せてもらっていいか?」
「おうよ」
ギルドリーダーが持ってきたのは指輪の様なリング数個と手の平くらいの直径のリングだった。
「こっちの小さい方を矢にはめる。で、でかい方を矢筒にはめるわけだ」
「ふむ、形やサイズは変えられるのか?」
「ああ、金属の棒を曲げてサイズを決めてるからな」
「解った。金を用意しよう」
槍杖と腕にでもつければ投槍スキルを使えそうだ。
おっともう一つ聞く事があった。
「槍に付加持続か付加発生の機能は付けられるか?」
「あ? 魔法の矢みたいにか?」
「ああ、槍杖に付けたいんだ」
事情を説明するとギルドリーダーは少し考え込む。
「結論から言えば、槍杖に宝石着ければ機能を付けることは可能だ。だが、現状では宝石は使い捨てだ。消耗しない特殊な宝石があればな……」
「複数の宝石は着けられるのか?」
「ああ、矢と違って槍杖はでかいからな。一種類を複数着けるか数種類着けるかはお前次第だ」
「ふむ、少し考えてからにするわ」
「ああ、いつでも来い」
うーむ、やっぱり宝石を弾丸みたいに使うしかないな。
他の方法が見つかるまでそれで行こう。
しかし、さっきから外がうるさいな。
店先にはネクロスが立っているが、今さら驚く奴は少ない。
喧嘩でもやってんのか?
禁止コードがあるからデュエルか。
そんな事を考えながら外に出ると3人のプレイヤーがネクロスに襲いかかっていた。
といっても町中なのでダメージは入らないし、ネクロスも子供をいなすようにしのいでいる。
ダメージが入るわけじゃないし待機してろと命令しておいたので適当に相手している感じだ。
「何やってんの?」
「あ!」
「てめえか!」
「ん? どっかで会ったか?」
「んな! 自分がキルした相手も覚えてねえのか!」
「ああ、元犯罪プレイヤーだったのか。グリーンだから気付かなかったわ」
「カーソルしか見てねえのかよ……」
「狩った獲物の顔なんぞ一々覚えてるか。何十回狩ったと思ってるんだ」
「こ、こいつ……」
「実は俺らよりやばいんじゃ……」
最初の勢いもどこへやら。
殺人鬼でも見るような目で引いている。
失礼な奴らだな。
「で、もう一度聞くが何やってんだ? ネクロスがウザがってるだろ」
「うるさい、リョウの敵だ!」
「てめえに勝つために地道に努力してきたんだ!」
事情を聴くと元々彼らは4人組だった。
しかし、俺と使い魔にやられて落ち込んでたところに悪魔転生条件発覚。
ついでに俺、悪魔。
その結果メンバーの一人が燃え尽きて棄権してしまった。
……ということらしい。それって俺の所為か?
「まあ、納得はできないが言いたい事は解った。で、結局どうしたいんだ?」
「俺達と勝負しろ!」
「デュエルだ!」
「そこの骸骨もだ!」
なんかこいつら犯罪プレイヤーっぽくないな。
地道に強化してきたみたいだし、カーソルもグリーンだ。
つまり悪さはしていない。
もうとっくに更生できてるじゃん。
「解った解った。でも俺はもう2体呼べるぞ。そっちが数でも不利になるぞ」
「ふん。俺達が何の策も持たずに挑むと思うか?」
「対策は考えてあるんだよ」
ほう、どんな手で来るつもりだ?
デュエルなんてずいぶん久しぶりだ。
「じゃあ、準備ができたらデュエル開始だ」
「余裕のつもりか。舐めやがって……」
そんなつもりは無いんだがな。
3人は前衛2人、後衛1人のフォーメーションを取った。
前衛二人はオーブを持っている。あれは……
「なるほど。召喚オーブか」
前衛はMPをほとんど使わないスタイルなのだろう。
ならば召喚にMPを使い、MP切れになる前にけりをつける。
数の不利も覆せるし上手い手だ。
問題は何を召喚獣として使ってくるかだ。
「デュエルを申し込む」
「受け入れる」
3
2
1
スタート
開始の合図と共に俺の思考は加速する。
周囲が減速し視界がクリアになる。
「さあ、勝負」
彼らは石にされた連中とは別口です。




