投槍
ギルドの依頼書に変なものが混じっていた。
フィオ、つまり俺への指名依頼なのだが内容が
バイトもしくはリンクスのレンタル
……何だこれ?
依頼を出したのは料理を専門とする職人達だった。
以前手に入れたレア魚は鉱石と交換したのだが、それで作った料理が美味い上にSTアップがすごかったらしい。
客から注文が殺到したが場所が危険な上に釣れにくかった。
そこで、名人(の主人)に依頼を出すことにしたらしい。
採取依頼じゃないのは捕るところを見て参考にしたいからだとか。
参考になるのかは疑問だが。
ちなみに使い魔は主人とフィールドが離れると消えてしまう。
依頼を受けるという事は俺も行くということになる。
連れが魚捕ってる間は何してろと?
見張りはするが、魚が取れた場所はそんなに敵が出ない。
かと言って騒ぐとボスが寄ってくる。
俺自身に魚を釣るという選択肢は、最早出ない。
ん? 何かすでに受ける気になってないか?
疑問に思いながら報酬を見ると
報酬 アダマンタイト鉱石 5個
よし、やろう。
ギアを進化させるには100個位鉱石が必要だ。
自分で採れない以上こうやって集めるしかない。
さて、待っている間何してようか。
翌日の渓谷。
バイトとリンクスは相変わらずワイルドな狩りを行っている。
上空ではベルクが見張りをしているので安全だ。
意外な事にベルクは魚捕りに向いていなかった。
というより、特にレア魚を狙わずに適当に取るので依頼内容にあわないといったところか。
使い魔たちのAIもだいぶ個性が出てきたようだ。
カツン
川岸の木に俺の投げたスローイングナイフが刺さった。
最近俺はスタミナが余りがちだ。
スキルアップによってダッシュやジャンプなどの消費はかなり減った。
そして技による攻撃もあまり使わない。
スタミナはMPより自然回復が早いので常に9割くらい残っている事になる。
なんだかもったいない気がした俺は新たな攻撃手段を探すことにした。
そして、候補として挙がったのが投擲スキルだ。
遠距離攻撃は魔法に頼り切っていたが、新たな手札が増えるのは悪い事ではないはずだ。
そして今、練習中なのだが期待したより威力が低い。
ナイフ自体は鋼鉄製。良くは無いが悪くもない。
使い捨てならこんなものだろう。実戦では回収なんてできないし。
ふむ、補助魔法で筋力を上げてもそれほど威力は上がらない。
ならば……
ボッ
火属性を付加してみた。
プルートの得意技だが、普段は使わないから新鮮だ。
燃えるナイフは見た目も強そうだ。
木に向かって投げてみる。
「あれ?」
木に刺さる前に火は消えてしまった。
どうやら一定以上離れると効果が消えるらしい。
道理で。やってるやつがいないはずだ。
そういえば、弓使いは宝石を仕込んだ専用の矢を使うんだったか。
ならナイフに宝石を仕込めばいいのか?
とりあえず木に近づいてもう一度試してみる。
ガッ ボン
おお、木が松明の様に燃えた。
なかなかの威力だ。
次は雷を付加して石に投げてみた。
ガコン
某科学の様な加速はしなかったが石を貫通した。
うん、魔法と使い分けると役に立ちそうだな。
結局これも魔法使ってるけど。
『投擲』スキルの規定値越えを確認。
『槍術』スキルとの複合スキル『投槍』を覚えました。
む、久々の複合スキルだ。
だが、槍を投げたら回収しないとだ。
面倒に見合う威力は有るのだろうか。
風属性を付加して近くの岩に投げてみた。
ついでに技も使用。
「【ジャべリン】」
ドッガアァ
「うお!」
「わあ!」
「何だ!」
風の錐みたいになった槍杖は岩を粉砕してしまった。
轟音に俺も釣りをしていた連中もビックリだ。
「ちょ、何やってんですか」
「蟹が気付いちゃうじゃないですか」
「魚も逃げちゃいますよ」
「すまん。悪かった」
いやはや、予想外の威力だ。
使いどころは難しいが単体に関してなら最上級魔法より上かもしれない。
欠点さえなんとかできれば強力な武器になりそうだ。
そして依頼終了後、俺は第2の町のオーブ屋に向かった。
蛇の道は蛇、耳の早い奴なら何か知ってるかもしれない。
「そういうわけで、知ってる事があったら吐いてもらおう」
「なんだか変なノリですね。誰の影響です?」
しまった、何時ぞやのがうつった。
まあ、用件は伝えたし問題は無いだろう。
「ふむ、そういえば弓使いに依頼されて、回収用のアクセサリを開発しているらしいですね」
「ほう」
「確か『アポート・リング』といって撃った矢が矢筒に戻るそうです」
「ふむ、ナイフには使えそうだな。」
槍は判らんが。
「付加持続時間はやはり槍自体に仕掛けを作るしかないでしょうね」
「宝石か」
「ええ、でも宝石は対応する属性にしか効果は無いですし」
「複数つけるのは?」
「専門外なのでそこまでは……。宝石も基本使い捨てですし」
「なるほどな。参考になった」
「いえいえ」
情報料を払いオーブ屋を後にする。
ちなみに情報料はおすそわけのレア魚だ。
あいつなら何かに有効利用するだろう。
そういえば従魔用のモンスターフードの材料にもなるんだっけ。
そのうちリーフに食わせてやろう。
ランクアップはしなくてもパワーアップはするかもしれないし。
次は第3の町の職人ギルドに行くか。
しかし、あそこは行くたびに何かあるんだよな。
何か今回も起きるんじゃないだろうか?
不安になってきたな……。
投槍スキルは読者様のアイディアです。




