その頃の友人達
「行くぞ! タイミングを合わせろ!」
「3、2、1、今だ!」
ザパァァ
プレイヤー達が筏から飛びのくと、真下から巨大な顎が筏を噛み砕いた。
姿を見せた湖の大ボス『サーペント』にプレイヤー達が攻撃を加える。
今ここでは、第1サーバーのトップギルドの一つ『アグレッシブ』主導の元、大ボスの討伐戦が行われていた。
戦闘フィールドの水面全体に筏が浮かべられ、プレイヤー達はその上を移動しながら大ボスと戦っている。
大ボスは東洋の龍に似た外見だが足の代わりにヒレが付いている。
水のブレスと水中からの奇襲を得意とし、その巨体は暴れまわるだけですさまじい脅威となる。
今回、彼らは聴覚探知と熱探知を持つ従魔を多数用意して奇襲に備えている。
「腹を狙え!」
「筏もっと近づけないか?」
「無理だ! 転覆しちまう!」
だが、戦況は万全とは言えない。
すでに何人かの犠牲者が出ている。
我慢比べの様なダメージレースの末にようやく討伐に成功する。
「……これを犠牲者無しでかよ」
『アグレッシブ』の幹部にしてフィオの友人タクとヒデはぐったりとしながら第3サーバーの友人を思い起こしていた。
もう1人の友人マサはハンマー使いのドワーフということもあり職人部隊の幹部だ。
純粋な戦闘スキルでは一歩劣るので今回の討伐には参加していない。
「おつかれー」
「ああ、レイラさん」
「おつかれさまです」
声をかけてきた彼女はギルド『紅い十字架』のリーダーにしてヴァンパイアのレイラさんだ。
ショートの金髪で、魔法向きの種族でありながら双剣を使う変わり種だ。
ちなみに双剣は片手剣と短剣の複合スキルであり、友人の槍棒術より遥かに一般的だ。
「結構苦戦したね」
「第2エリアのボスは強いですからね」
タクはすでにハイ・オーガノイドでありヒデもドラゴノイドだ。
重量級の武器を使うこともありアタッカーとしては上位のプレイヤーだ。
「……アメンボの指輪か」
「それって、第3サーバーの話?」
「ええ、俺達の友人が第3サーバーで例の装備の発見者なんです」
フィオが発見したアメンボの指輪。効果は水上移動。
ランク以上に役に立つスキル追加装備であり、本来ならこれをそろえて大ボスに挑む予定だった。
しかし、作れない。
情報もデータも公開されているのだが、やはり現物がないと厳しい。
防毒の首飾りが作れたのは幸運だったのだろう。
「例の悪魔君だっけ? 中ボス1人で狩っちゃうていう」
「ええ、マジですよ。それ」
悪魔転生条件の発見によって友人は一気に有名になった。
心配した誹謗中傷は少なくとも第3サーバー内では起きていないらしい。
かつての事件を知る身としては一安心だった。
「まあ、攻略情報があっただけ良かったってことで」
「そうだねー。んじゃ、またね」
そう言ってレイラさんは去って行った。
つくづくヴァンパイアのイメージに合わない人だ。
「じゃ、俺らも帰るか」
「おう」
「よし、撤収だ!」
ゾロゾロとメンバー達が引き揚げる。
この後はフリーだ。
ギルドだからと言って拘束し続けるのは良くない。
とはいえ幹部の哀しさか、会話は次の目標の事になってしまう。
「次はどこにする?」
「んー、密林なんてどうだ」
「あそこの大ボスは『ヒュージ・エイプ』だっけ」
密林と樹海があって紛らわしいが、密林の大ボスは巨大猿『ヒュージ・エイプ』だ。
タクの眼に闘志が宿る。
彼は類人猿が嫌いなのだ。
フィオの蛾嫌いとは違い殴りたくなる的な意味で。
「んじゃ、フィオに詳しい情報聞くか」
「調べるより楽だしな」
「後はマサにこの素材見てもらわんとな」
今後の予定を話し合う二人。
そこにアナウンスが流れた。
第3サーバーで第3エリアが解放されました。
「「は?」」
驚愕の声が重なった。
こちらはまだエリアボスのダンジョンすら出ていないのにクリア?
フィオへの質問内容を変更した2人だった。
少し前の話です。




