危機
厳正に選ばれた50人のプレイヤーが『邪竜の迷宮』後半部分を進む。
彼らは間違いなくサーバー最高の戦力だった。
しかし、緊張の色は隠せない。
相手は初のドラゴンタイプ、しかも、悪魔と混じったような凶悪な外見をしている。
やがて、巨大な両開きの門が現れた。
「では、行きましょう」
レイさんの合図と共に門が開けられ、プレイヤー達がなだれ込む。
部屋は真っ暗だったが、全員が入ると壁際の松明が入口側から奥に向かって次々と灯っていく。
ボボボボボボッ
そして、部屋の中央に巨大な影が浮かび上がった。
第2エリアの最終ボス「イビル・ドラゴン」だ。
紫がかった黒い鱗に金の眼、アイスマンモスほどではないが大型バスを2台並べた様な巨体だ。
「来るぞ!」
「防壁!」
指示が飛びパーティ全体に対魔法シールドが張られた。
次の瞬間
〈グオオォォォォォ〉
すさまじい咆哮が響き渡った。
開戦直後に襲い来る『ドラゴン・ハウリング』はプレイヤーの動きを封じる能力を持つ。
続いて襲い来る炎のブレスもシールドによって防ぐ。
「攻撃開始!」
「盾役は頭と爪を後方組は尻尾に注意しろ!」
初見のプレイヤーを何人も抹殺したコンボを防ぎ、攻撃に転じる。
作戦は重武装の壁役が攻撃部位を抑えるという堅実なもの。
ブレスが来そうになったら魔法部隊がシールドを張る。
暴れまわる邪竜を上手く封じ込め、ジリジリとHPを削っていく。
やがて邪竜のHPが7割ほどになった。
「突風が来るぞ。翼の動きに注意しろ!」
翼から突風を起こし、周囲のプレイヤーの体勢を崩す特殊能力。
しかし、予備動作が大きいので見切るのは簡単だ。
翼が動きはじめたら一度距離を取り、収まったらまた近付く。
俺は魔法部隊の攻撃組として戦っているが、今のところは順調だ。
このままいけば……。
だが、そんな楽観的な希望は邪竜のHPが半分を切った瞬間打ち砕かれた。
「な、なんだ?」
「特殊能力?」
突然邪竜の全身が赤いオーラに包まれた。
初めての行動に一瞬統制が乱れた。
その隙を邪竜は見逃さなかった。
ブォン
ザン
「な? グア!」
振り下ろされた爪の一撃が前衛の1人のHPを0にした。
「ウソだろ!」
「一撃!?」
動揺が広がるが邪竜は止まらない。
ブンッ
ガガガガン
「うあ!」
「ガッ!」
「あぐ!」
「しまっ!」
振り回された尻尾が4人のプレイヤーを薙ぎ払った。
まともに食らった3人は即死、盾で防いだ壁役でさえ吹っ飛ばされてHPはレッドゾーンになっている。
「冗談じゃない。さっきまでの倍は威力があるぞ……」
「駄目だ、離れろ!」
前衛は総崩れになる。
次に邪竜は後衛に視線を向ける。
マズイ!
「防ぎ切れない! 避けろ!」
俺は叫んでその場を駆けだす。
しかし数人状況が理解できず硬直してしまう。
「だめっ!」
「逃げろ!」
逃げ遅れたプレイヤーにシールドが張られる。
しかし、吐きだされたブレスはシールドを紙の様に突き破り彼らを全滅させた。
くそ、これ以上は……。
「駄目だ! 一度引け!」
「撤退! 撤退!」
プレイヤー達は次々と離脱するが、邪竜も黙って見逃してはくれない。
戦闘不能のプレイヤーを蘇生させる暇など当然ない。
ガァ
ザシュ
「うあああ」
また1人プレイヤーがやられた。
まずい、誰かが足止めしないと離脱もできない。
って、やれそうなのは1人だよな。
「俺が足止めする! 早く逃げろ!」
「フィオ君!?」
「無茶だ!」
「できるだけ時間を稼ぎます」
プレイヤーに追いすがる邪竜の顔面に魔法をブチ込むと金の両眼が俺を睨み据えた。
「コール バイト ギア ベルク」
使い魔たちを呼び、邪竜をにらみ返す。
紫の魔眼と金の竜眼が交錯し、両者は同時に動きだした。
「さて、どこまでやれるかな……」
次回、久々にあのお方のお声が……




