闇に潜む者達
暗いダンジョンの中4人のプレイヤーが息を潜めていた。
カーソルはオレンジ。
犯罪プレイヤーだった。
死ぬと隠しパラメーターのカルマポイントはリセットされ、ポイントに応じたペナルティを受ける。
善行を行ってもカルマポイントは減り、繰り返せばグリーンに戻せる。
大きな町に行かずとも小さな村でNPCを相手に善行を働き、更生した者も多い。
故に、未だにオレンジの彼らが現役の犯罪プレイヤーである事は、明白だった。
彼らは悪魔希望者だった。
悪事を働いてこそ悪魔。
そう信じて犯罪プレイを繰り返した。
しかし、実に3回も殺され膨大なペナルティを受けた。
相手は3回とも同じ、たった一人のプレイヤーだった。
そいつは強かった。
雑魚モンスターと同じような感覚で犯罪プレイヤー達を狩っていた。
しかし、彼らはあきらめなかった。
いつか手が届くと信じてペナルティを取り戻した。
しかし、ある日情報サイトに載ったのは悪魔転生の方法。
そこにははっきりと「犯罪プレイは関係無い」と書かれていた。
嘘だ、と思った。でたらめだ、と吠えた。
しかし、特別クエストの発生が情報を肯定した。
全ては無駄だった。
残ったのはオレンジ色のカーソルと悪評のみ。
3回もペナルティを受けたためSTはせいぜい中の下。
プレイする気力すら萎えかけた。
βテストは棄権可能だが、最後まで参加しないと報酬の製品版がもらえない。
そして、製品版へのデータ引き継ぎはテストへの貢献度によって変動するらしい。
果たして今から貢献度を上げられるのか?
更生するべきなのか?
彼らは迷った。
しかし、ある日聞いた事実が心に暗い火を着けた。
悪魔転生の方法を発見したのは自分達を狩ったあのプレイヤーだったのだ。
しかも、彼自身が初期から悪魔だったという。
自分達に牙を剥いた奴の下僕は召喚獣ではなく、より強力な使い魔だったのだ。
そして今やサーバー最強とまで言われ、他のプレイヤーからの評判も良い。
ふざけるな、と思った。
この差はなんだ、と憤った。
逆恨みとしか言えないが彼らはそのプレイヤー、フィオの襲撃を計画した。
奴を狩って自慢のレア武器「槍杖」を奪い取ってやると意気込んだ。
計画は単純だった。
奴は頻繁にクエストを受けモンスターの素材を集めに出かける。
自分達は町では目立つのでNPCを雇って奴の予定を調べさせた。
そして今日、このダンジョンにやってくるという情報を掴み、待ち伏せすることにしたのだ。
スキル、魔法、マジックアイテムを駆使して視覚、嗅覚、聴覚、熱、あらゆる探知から自分達の存在を隠蔽した。
アイテムも金も使いきったが、奴さえ狩れれば良かった。
奴の装備をオークションにかければいくらでも取り戻せるはず。
そして、サーバー最強のプレイヤーを倒したという実績は何物にも代えられないトロフィーとなる。
そう考えた。
冷静に考えれば第2エリアの中ボスを単独で倒すような相手を、不意打ちとはいえたった4人で倒せるような実力は彼らには無い。
しかし、錯乱状態といってもいい彼らの頭にはそんな事実すら浮かばない。
ただやれると信じて、フィオさえ狩れば全てうまく行くと信じて待ち続ける。
そしてついに、その時が来る。
「来たぞ……」
闇の中で4人は刃を握りしめた。
しかし、次の瞬間、赤い光が彼らを貫いた。
かつて主人公を侮辱した人たちもこんな気分だったんでしょうか。




