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祭りの後

 目の前でリーダーを倒された『ワイルドブレイク』のメンバーが殺気立つ。

やれやれ、まだ解らんのか。


「コール ネクロス ハウル プルート」


「ひっ!」


「リ、リーパーまで……」

 

 彼らの前に立ちふさがったのは4腕の不死の騎士、双頭の巨狼。

そして、先ほどまで相手にしていたのが子供に思えるほどの迫力を放つ紫の死神。


「こちらからは手を出すな。オレンジに変わったら仕留めろ」


 使い魔に手を出せばそいつは犯罪プレイヤーだ。

まあ、逆もまたしかりだが。


パンッ パンッ


「もうその辺でいいでしょう?」


 レイさんが止めに入った。

俺としては好き好んで暴れるつもりは無い。


「彼がサーバー最強といわれているのは悪魔だからではなく、卓越した技量ゆえです」


 連中もさすがに黙って聞く。


「従魔も召喚獣も主人の戦闘ロジックの影響を大きく受けることは証明されています」


 奴らも気づいているはずだ。

これは引くチャンスを与えてくれる助け舟なのだと。


「使い魔の強さは彼の強さの証なんですよ」


 さすがに食い下がる奴はいなかった。

こうして微妙な空気の中、特別クエストは終了した。



 数日後、俺はお得意の職人プレイヤーの元を訪れていた。


「これが新しいオーブです」


 最後に残った景品は職人用の鍛冶セットだった。

俺は即座にオークションに出したが、競り落としたのはこいつだった。


「小さい方は小型化試作品です。半分のサイズですが上級魔法を込められます」


「やれと。まあ、いいけど」


【サンダーブラスト】を込めるとオーブの中に火花が現れた。


「成功ですね。で、こっちのでかいのが……」


「最上級魔法か。確かに成功したらすごいが……」


 最上級魔法は今の俺でもせいぜい4発が限界だ。

マジックアイテムにできればその価値はすさまじい。


「こんなでかいの使いにくくないか? 値も張るだろうし」


「まあ、まずは耐えられるかどうかなんで」


「解ったよ」


 水属性最上級魔法【バイブルフラッド】を込めてみる。


ビキビキ  バキーン


「うーん、駄目か」


「サイズじゃなくて純度じゃないのか?」


「そうですね……。また試作品ができたらお願いします」


 そう言い、破片を集めている。

またインゴットにしてもらうのだろう。


「そういえば聞きました? 『ワイルドブレイク』のことなんですけど」


「ああ、職人に総スカン食らったってな」


 あれだけ貶せば当然だろう。

まあ、NPC店が使えるから致命傷じゃないだろうが。


「いえ、あの後メンバーが半分近く抜けたそうです」


「半分? 規模としては中堅以下になっちまったのか」


「ええ。しかも無茶なボスの単独撃破にチャレンジして、どんどん負けが込んでいるとか」


 煽った身としては少し責任を感じてしまう。

しかし、連中は引くということを知らんのだろうか。

いくらなんでもワイルドすぎだろう。


「代わりに、この前のクエスト以降調子を上げているギルドも多いですよ」


「何かあったのかねえ……」


「何言ってんですか、あなたやトップギルドの戦術を見て、考えて戦うことを覚えたんですよ」


 なるほど。

あの、かつてない大規模戦闘は思わぬ副産物をもたらしたようだ。


俺もうかうかしてられないな。

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