初探索 森編
拝啓 影山教授
あなたのモルモットは今日も元気にゲームというゲージの中で走り回っています。
……いかんな。
ちょっと憂鬱になってた。
というのも探索を開始したフィールドの所為だ。
マッピングのおかげで地図はいらない。
アナライズで使えそうな素材も解析し、きちんと回収している。
妙に質が悪い物が多い気がするが、最初だしスキルレベルも低いしこんなものなんだろう。
では何が問題かと言うと、単に雰囲気と出てくるモンスターがゲテモノなのが原因だ。
まずは死霊の森に行ってみた。
案の定、出てくるのはアンデッド。
『スケルトン』に『ゾンビ』がウヨウヨしている。
ちなみに剣や槍、斧や盾を持ってるスケルトンの方が強い。
ゾンビの攻撃は引っ掻きや噛みつきだ。
気分的にはこっちの方が嫌だな。
ゾンビは槍で、スケルトンは魔法で倒す。
初期の攻撃魔法は【バレット】のみ。
各属性の魔法の弾丸を撃ち出せる。
ちなみに光属性は持っていない。
実はテストの一環として悪魔の属性適性を知ろうと思い、全属性の魔法を取ろうとしたのだ。
だが、光属性だけは取れなかったのだ。
相性が最悪らしい。
当然か、悪魔だし。
しかし、気になったのはトロいゾンビはともかく、スケルトンが妙に強いということだ。
他のゲームの雑魚代表のゴブリンなどと比べると明らかに強い。
初期のプレイヤーでは1対1では厳しいはずだ。
ちなみに俺は対応できる。
悪魔の高ステータスもあるが、もう1つ。
影山教授によると普段はリミッターがかかっているが、俺の知覚速度やら脳内情報伝達速度やらは常人の2倍はあるらしいのだ。
だから集中すると周りがゆっくりに見える。
ただしゲームの中でだけ。
おかげでスケルトンの攻撃は掠りもしない。
始まりの町ではないスタート地点に敵の強いフィールドか。
俺の種族が悪魔である事と関係あるのだろうか?
まあ考えても仕方ないか。
ゾンビを槍術でなぎ倒し、スケルトンを魔法でふっ飛ばしているとスタミナとMPがだいぶ減ってきた。
完全に無くなると一定時間スタンなので、ちょっと休憩することに。
安全である保障がない森の中だから気は抜けないけど。
と、ガサリと今までとは明らかに違う足音が。
音のした方を見るとそこには黒い狼がいた。
種族は『シャドウウルフ』か。
ハッキリ言ってスケルトンより強そうだ。
シャドウウルフの目を見つめる。
そこには知性が宿っていた。
さっきまでのアンデッドとは違うAI搭載型の思考する敵だ。
本来なら初期に出るようなモンスターじゃない。
でも、この状況じゃやるしかないな……。
先手はこちら。
まずは牽制に最速のスパークバレットを撃ち出す。
しかし、シャドウウルフは雷弾を回避してしまった。
しかも上に。
「は?」
予想外にアクロバティックな動きに驚く。
しかも木の枝を足場にこちらをかく乱してくる。
おいおい、こりゃパーティ組んでてもやられかねんぞ。
人は3次元的な動きに対応しにくい。
俺だって人間、苦手は苦手だ。
なら対処は一つ。
動きを止める。
槍を横にして前に出す。
ただの雑魚なら気にせず突っ込んでくるが、こいつなら……。
予想通り、後方上空から飛び降りてきた!
枝を足場にしていても空中で方向転換はできない。
その場を飛びのいた俺は、シャドウウルフが着地する瞬間スパークバレットを撃ちこんだ。
感電し硬直するシャドウウルフ。
すかざずアース、アクア、アイスの順でバレットを撃ちこむ。
打ち止めになったが目的は達した。
泥が凍って奴の動きを止める。
「【スラスト】!」
槍スキルをスタミナの続く限り撃ちこむ。
シャドウウルフは倒れ、しばらくするとポリゴン片となって消えた。
死体が消えるとドロップが残る。
「毛皮に牙に爪か。ようやくそれっぽい素材が出たな」
骨はともかく腐肉は勘弁してほしいのだ。
少なくとも食べる気にはならない。
使い道も思いつかない。
「ん?」
と、そこで俺は森の奥にぼんやりとした光があることに気が付いた。
そっと様子を見ると、そこには20を超える『ゴースト』がたむろしていた。
霊体系は物理攻撃が非常に効きにくい。
光系の魔法が有効だが俺は使えない。
非常にまずいです。
MP満タンでもあの数は無理だ。
シャドウウルフの出現といい、調子に乗って森の奥に入りすぎたようだな。
いやはや、こっちから気付いてよかった。
敵の方から見つかってたら確実にやられていただろう。
俺はわき目も振らず撤退した。