表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
45/228

南の戦線

 町に侵入したモンスターを撃破しながら駆けまわる。

中央付近で悲鳴を耳にする。

そちらに向かうと4人パーティがリーパーと戦闘中だった。

空中からの攻撃に苦戦している。


「一度離れろ!」


 叫ぶと同時に跳躍し、屋根を蹴ってさらに跳ぶ。

そしてリーパーの乗る蛇に槍を突き出す。

リーパーもさせじと鎌で防ごうとするが、それはフェイント。

バトンのように槍をくるりと回し石突きで本体のローブを狙う。


「【グランドスイング】!」


ゴッ


リーパーは直撃をくらい地面に落ちる。


「今だ!」


 声をかけると4人はすぐにリーパーを囲んで攻撃を開始する。

蛇をベルクが仕留めるが武器や防具扱いらしくHPは減らない。

だが、地上に落ちたリーパーは戦闘力が半減する。

それ以上援護する必要もなく倒された。


「ありがとうございます」


「いや、このクエストではみんながチームみたいなもんだ。気にしないでくれ」


「はい。でも感謝ですよ」


「それより、あそこの補給基地に行くといい」


「何かあるんですか?」


「ああ。職人プレイヤーが『ネットボール』ってアイテムを配布している。リーパーを地上に引きずり下ろすための道具だ」


「そんなものが……」


 4人と別れ再び町中を駆け回る。

まだ戦闘は始まったばかりだ。




「なんだか敵が増えてきてるな……」


「そういえば……」


 町の上空を飛びまわる敵の数が明らかに増えている。

だが、北、西、東からの増援要請は無い。


「南か」


「心配してた通りですね」


「いまさらだ。とりあえず100人ほどで様子を見よう」


「危なかったら順次増員ですね」


「俺は先行します」


 言い残してベルクに乗り、南へ向かう。

遊撃部隊を削りすぎれば今度は町中の敵が野放しになる。

まずは状況を確認しなければ。


「これは……」


 状況は予想より悪かった。

地上のアンデッドの侵入は防いでいるが、空中の敵にはもう対応できていない。

門もどれだけ持つかわからない。


「何をやっているんだよ……」


 空中には10体以上のリーパーが飛び回り、プレイヤー達は完全に翻弄されている。

人数から考えてもかなりの数のプレイヤーがやられた後だろう。

俺はベルクから飛び降り、指揮官らしいプレイヤーに詰め寄る。


「何で増援要請をしない! それ以前にこの適当な戦い方はなんだ!」


 本来、役割分担をし組織立って戦闘しなければならない状況だ。

だが、彼らは皆自分勝手に戦い各個撃破されている。

考え無しで力任せな戦い方、これでは敵の方がまだ統制が取れている。


「うるさい! トップギルドどもの力は借りない!」


「そんなこと言ってる場合か! このままじゃ持たないぞ!」


「黙れ! 俺たちだってやれるんだ!」


「戦っているのはお前たちだけじゃないんだぞ!」


「知ったことか!」


「……もういい」


 最悪だ。

こいつらは自分達の見栄に、他のプレイヤーを巻き込もうとしている。

その根底にあるのはおそらくトップギルドへの劣等感だろう。

開始時からトッププレイヤーだった俺には奴らの気持ちなんて解らない。

だが、こいつらのやり方は間違っている。


 俺は町中に設置されている通信ポイントに駆け込み北、東、西、遊撃、全部隊に通信を送った。


「緊急通信。こちら遊撃部隊のフィオ。南は陥落寸前だ。連中は拒絶しているが増援を送らなければ確実に落ちる。防衛に影響の無い範囲で人員を回した方がいい。それと、北門のギアを南門に回す」


 通信を終え、南門に戻る。

ちょうど100人の増援が到着しリーパー達を次々に倒していく。

突然の増援と、その鮮やかな戦いぶりに南門のプレイヤー達が呆然とする。

100人はみなトップクラスの実力者だ、弱いわけがない。


 しかし、多勢に無勢。万単位のアンデッドを前に門が軋む。

俺は門の上に立ち、切り札を1枚切る。


「行くぞ!【バーンアウト】!」


 火属性最上級広域魔法【バーンアウト】俺のMPの3割を消費する大技だ。

そして、一時的に敵がいなくなった門の前に飛び降りる。


「コール フェイ ギア」


 町の上空で戦っていたフェイと、北門を守っていたギアを呼び寄せる。


「そう簡単には通さないぞ」


 そして俺も押し寄せるアンデッドたちに槍を向けた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] プレイスタイルは十人十色、トップギルドと敵対するのもプレイングの一つ。 自分の考えに合わない人達を間違っていると評価するのは傲慢だなぁ。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ