大悪魔誕生
〈フィオは『大悪魔』にランクアップしました〉
〈『使い魔』の使役数が9体になりました。〉
〈『使い魔』の召喚数が3体になりました〉
〈使い魔たちがランクアップしました〉
〈種族固有スキル『魔術の魔眼』が解放されました〉
〈種族固有スキル『悪魔化』が解放されました〉
ランクアップか。何やら色々増えたな。
実は今まで上級魔法は詠唱省略はできても、無詠唱はシステム制限がかかりできなかった。
『魔術の魔眼』はそのシステム制限を解除してくれるらしい。
『悪魔化』の方は『使用条件に達していません』となっている。
条件付きのアクティブスキルか? よくわからんな。
使い魔たちもランク3にアップしたようだ。
フェイ 『スプライト』
バイト 『トライ・ヴァイパー』
ネクロス 『アンデッド・ナイト』
リンクス 『サーベル・タイガー』
ハウル 『オルトロス』
そして、手に入れたアイテムは邪神像のみ。
これがキーアイテムか?
さっそく黒の隠れ里に向かってみるとしよう。
ふと、疑問が浮かぶ。
通常では、これで初めて黒の隠れ里のある領域に行ける訳だ。
確かにあの周辺は初期にしては難易度は高かった。
手に入れたアイテムもグレードの割には優秀だった。
しかし、試練を通過したプレイヤーにとっては雑魚ばかりで物足りないだろう。
アイテムにしても、もっと良いものはすでに出回っている。
不思議に思ったが予想はついた。
おそらくβテストではエリア内の難易度に上限が設定されていて、あれが第1エリアにおける最大難易度だったのだ。
モンスターの生息域や移動範囲は一応決まっているようだが、『はぐれ』と呼ばれるイレギュラーが出るように完璧ではない。
初期から予想外に強いユニークモンスターが現れるなどのアクシデント防止の意味もあるはずだ。
隠しエリアだからと言って、あそこだけ難易度を変更するのは現段階では難しかったのだろう。
ていうか、そんな地獄設定にされたら俺でも初期で攻略は無理だ。
大人しく村を離れただろう。
まあ、製品版では上手い事調整してくれる事を期待しよう。
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ここは本当に同じ町か?
そう思いたくなるほど皆さんフレンドリーだ。
邪神像を持つ者は同胞ってわけね。
俺は最初から悪魔だったが態度は冷たかった。
つまり、彼らの友好度は種族ではなく信仰心の有無によって変化するのだろう。
つまり邪神像を持ってさえいれば、悪魔に転生していようと他の種族だろうと友好的という事か。
村長のところへ行ってみると
「おお、礼拝ですか。どうぞどうぞ」
と、隠し通路に案内された。
その先にあったのは
「黒の祭壇じゃねえか」
グレーターデーモンと戦った場所にそっくりだった。
とりあえず奥に進むと、覚えのある声が聞こえてきた。
〈よくぞ試練を乗り越え我が元にたどり着いた〉
祀られている邪神像が赤く光っている。
〈力強き汝を我が眷属として迎え入れよう〉
〈エラー フィオの種族はすでに悪魔です〉
〈では行くがいい。汝は汝の欲するままに生きよ。我はその全てを祝福しよう〉
声は消え、邪神像の光も消えた。
「転生条件発見か……」
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早速俺は情報交換サイトに大まかな内容を載せた。
「ボスを大量に単独撃破すると『黒の遺跡』の隠し部屋にいける」
「そこで出される試練を乗り越えると『邪神像』がもらえる」
「邪神像があると第1エリアの『黒の隠れ里』に行ける」
「黒の隠れ里で邪神から『悪魔』に転生させてもらえる」
「PKや犯罪プレイは一切関係ない」
こんなところか。
後はなるようになるだろう。
友人達には詳細をメールしておく。
「トップギルドの連中には話しておこうかな……」
正直、隠してコソコソしてるのは後ろめたかったのだ。
というか情報を載せたのが俺だとレイさんあたりにバレそうだし。
自分から白状した方がいいだろう。
そんなことを考え再びVRマシンを起動した。
〈隠し条件が解明されました。第3サーバーには特典が贈られます〉
〈第3サーバーではゲーム内時間で一週間後、特別クエスト『死神の襲撃』が行われます〉




