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火山にて

 その日、とある職人ギルドの採掘班が第2の町の入口に集まっていた。

彼らの目的は火山での採掘。

その為に、馬車もレンタルしていた。


 火山は採掘ポイントが多いが、溶岩だらけで火属性の攻撃力の高い敵が出る。

だから彼らは採掘の護衛をクエスト発注し、受注したプレイヤーを待っていた。


「ギルドの話ではAランクパーティが受けてくれたらしいね」


「ああ。運がいいって言ってたな」


 現在トップギルドは不動の4ギルドだが、彼らに次ぐ上位ギルドは増えてきている。

そのクラスのパーティが護衛してくれれば、まず間違いない。


「お待たせしました」


 声をかけられた4人が振り向くと、そこには白地に赤い装飾の入ったコートを着たプレイヤーがいた。

手には槍を持っており、顔はフードでよく見えない。

しかし、気になったのは


「へ? 1人?」


 そう、現れたのは彼一人だったのだ。


「はい。フィオといいます。よろしく」


「あ、ああ。よろしく」


「依頼は火山での採掘護衛で間違いないですね?」


「ああ、うん」


「では、行きましょう」


「あ、あの……」


 意を決して一人が尋ねる。


「火山って敵多いですよね。一人で大丈夫なの?」


 すると彼、フィオは気にした様子もなく答える。


「はい。大丈夫ですよ。何せ……」


 フィオの影から4枚羽の妖精と赤黒い体毛の巨狼が現れる。

絶句する4人にフィオは笑いかけた。


「1人じゃないんで」




 4人は馬車で、フィオは巨狼ハウルに乗って火山に到着した。


 言葉通り、フィオ達は現れるモンスターをあっさり倒していく。

不思議なのは地中から現れるイモムシ『ラーヴァウォーム』など、発見の難しい敵もなんなく見つけてしまうことだ。


「どうしてわかるんですか? 聴覚探知?」


 聞いてみるが、彼はチラリと自分のコートを見ると


「秘密です」


と、流されてしまった。

気の所為かコートがゴソッと動いたような……。


 採掘は順調に進んだ。

スタミナを消耗するので2人ずつ交代で採掘する。

周囲を警戒する彼になんとなく聞いてみた。


「どうして水系や氷系の召喚獣を呼ばないんですか?」


「えーっとですね」


 彼の話によると、普通に考えると敵の弱点をつける水、氷系の召喚獣を呼んだ方がいい。

しかし、この灼熱のフィールドでは彼らは弱ってしまい力を発揮できない。

また、彼ら自身も火に弱いため大ダメージを受けやすくなる。

飛行能力を持つフェイや火属性のハウルなら溶岩を気にせず戦える。

ということだった。


 なるほど、と思わざる得ない。

さすがAランクはだてじゃない。


「その槍、変わってますね」


「ああ、これは槍杖っていうんです」


「ソウジョウ?」


 聞いたことが無い武器だった。

彼自身も自分以外持っている人は知らないという。

モンスタードロップのレア武器をミスリルで強化して使い続けているらしい。

職人プレイヤーに頼まれて解析したことがあるが、今のところ生産はできていないとか。


「あー、熱いなもう……。フィオさんは平気なの?」


「このコートは耐寒、耐熱使用なんです。便利ですよ」


「へえ。いいね、素材は?」


「メインはイエティとフレイムウルフですね」


 は? それって雪原と、この火山の中ボスじゃないの!

メチャメチャ高級品だよ!



 そして採掘が終わり帰ることになったのだが


「中ボスを倒して転移で帰った方が早いですよ」


 フィオさんがとんでもないことを言い出した。


「無理ですって死んじゃいますよ!」


「ああ、すいません。俺が倒してくるんで皆さん少し待っててもらおうかなと」


「え、1人で勝てるの?」


「はい。中ボスなら」


 でたらめだ。

でも、そこである考えが浮かぶ。


「フィオさん。私らを守りながらフレイムウルフ倒せる?」


「依頼ですからできる限りは。100%の保証はしかねますが」


「解った。お願い」


「おい!」


「危険だぞ!」


 若干、揉めるがタダで中ボスの素材が手に入るチャンスだ。

最終的には皆納得した。


「じゃあ、行きましょう」



 フィオさんと妖精のフェイがフレイムウルフと戦っている。

巨狼のハウルが私達の護衛として陣取っている。

私達は狙われないように戦闘フィールドの端に隠れている。


 戦闘は一方的だった。

フィオさんはボスの攻撃をユラリ、ユラリと紙一重で回避し反撃を叩き込む。

フェイが風の魔法で牽制するためボスは大技が出せず、動きも限定されている。


 そしてフェイの放った風刃をボスがジャンプしてかわした時、フィオさんが勝負に出た。

水属性中位魔法【トーレント】、鉄砲水のように噴射された水流がボスを押しやる。

そしてそれがフィールド端の溶岩に達した時、すさまじい水蒸気爆発が起きた。


 吹っ飛ばされ、地面に叩きつけられたボスにフェイの雷撃とフィオさんの魔法が襲いかかる。

氷属性上位魔法【アイスブラスト】をくらいフレイムウルフは消滅した。




 町に戻るともう夕方だった。

フィオさんは依頼報酬を受け取り帰って行った。

今回のクエストは大当たりだったといえるだろう。

なにしろ鉱石だけでなく中ボスの素材も手に入ったのだから。


「この素材どうする? 売る?」


「実は良いこと聞いたんだよ」


「良いこと?」


「このフレイムウルフの素材とイエティの素材でね……」


「耐寒、耐熱? マジか!」



 職人プレイヤーは地味かもしれない。

しかし、彼らには彼らのストーリーがある。

RWOはプレイヤー1人1人が主人公なのだから。


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― 新着の感想 ―
[一言] いやいや、流石にエリアダメージや弱点属性の件はよいしょが過ぎるでしょ… 誰が置いとくだけでデバフがかかる上に、被ダメがデカくなる水属性系のモンスターを連れて行くんだよ。そんな奴いないよ。
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