密林にて
第2エリア『密林』。
そこは植物、獣、昆虫、鳥と多種多様なモンスターが生息し採取ポイントも多い。
ただし、フィールドは広く迷いやすい。
その密林を3人のプレイヤーが歩いていた。
男1人に女2人、装備は主に鉄製。
悪くは無いが十分とは言えない質だった。
少なくとも第2エリアでは。
「ここにも採取ポイントがあるよ」
「モンスターが近づいたらすぐ逃げるぞ」
「わかってるよ」
警戒してできるだけ迅速に採取を進めるが、しばらくするとモンスターの反応を感じ取った。
「来たよ!」
「よし、音をたてないように逃げよう」
〈グガオオォォォ〉
「え?」
聞こえてきたのは明らかに断末魔の叫び声。
いったい何が?
「どうなったんだ?」
「行ってみる気?」
「気になるじゃん」
そうして3人が進んだ先では、
巨大なクマ『グリズリー』2頭が鉄色の巨人に蹂躙されていた。
2mの大熊が5mはある鉄巨人に踏み潰され、締め落とされる光景に思考がフリーズする。
さらにシューシューという音に気が付き上を見上げると、電柱の様な大蛇が大イノシシ『ブレイクボア』に巻きつき、2つの口には茶色の巨大ネズミ『サンドラット』を咥えていた。
次の瞬間5体のモンスターは消滅し、巨人と大蛇がこちらを向いた。
逃げるべきなのは判っているが、あまりに馬鹿げた光景に何もできなかった。
そんな時
「こんにちは」
「おうわあー!」
「ひいいいいいいいいい!」
「きゃあああああああああ!」
「え? あれ?」
突然の声に驚き絶叫する3人が落ち着きを取り戻すには少しの時間が必要だった。
「大声上げてすいません」
「いや、気にしないでください」
白いフードコートを被った彼はフィオと名乗った。
驚いたことに巨兵と大蛇は彼の召喚獣だというのだ。
さらに、町に帰るところなので送って行ってくれるそうだ。
「こんな強力な召喚獣を2体も召喚するなんて、MP大丈夫なんですか?」
「ええ。これがありますから」
彼のコートの下には赤いブローチと青いブローチが付いていた。
おそらくマジックアイテムだ。
「ヒールタリスマンとマジックタリスマン。効果はHP、MPの自動回復です」
「え、それってとんでもなくレアなんじゃ……」
「まあ、色んな素材と大金が必要ですよ。でも用意できればすぐ作れる。オークションにもよく出てるし、トップクラスのプレイヤーなら大体持ってますよ」
「そうですか……」
襲ってくるモンスターはフィオさんがあっさり片付けてくれ、僕らは安全に素材を持って町にたどり着いた。
数日後、僕らは自分達が出会った人がサーバー最強のプレイヤーだったことを知る。
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第2エリア来たばかりであろう3人と別れ、俺は冒険者ギルドに向かっていた。
第2エリア解放後、ギルドではプレイヤーも依頼を出すことができるようになったのだ。
採掘、その他が全然ダメな俺はモンスタードロップを報酬にして採掘クエストを出したり、鉱石が報酬のクエストをやったりしていた。
今回は密林の中ボス『帝王蜻蛉』の素材を納品し、ミスリルのインゴットを得るのが目的だった。
これで、槍杖が強化できるな。
「あ、いたいたフィオさん」
「ん? どうした?」
「いや、実はオーブが100個くらい出来まして……」
「また上級魔法か? しかも100個! 俺をミイラにする気かよ……」
「メテオライト原石30個でどうです?」
「ぐっ。……やる」
「じゃあ、工房で待ってますね」
ギアを『メテオライトゴーレム』にするためとはいえ、さすがに100個はキツイぞ。
何時間かかんだろ……。
ゲンナリしながら俺は工房へ向かった。




