決着
ボスの爪が振りかぶられる。
それが振り下ろされる瞬間、肘の部分に突きを入れる。
勢いが乗りきる前なら止められるな。
ガン
ネクロスが尻尾の一撃を盾で防ぐ。
しかし、重い。
ガードの上からでも僅かにダメージが入る。
一人では対応しきれないだろうが、ネクロスと二人がかりで攻撃をさばく。
もちろん、やられっぱなしではない。
毒は効かないようだが、槍と大鉈がボスに食い込む。
1分にも満たない攻防だがやけに長く感じる。
紙一重の戦いが続く中、俺は魔法を至近距離から撃ちこんだ。
するとボスの目に光が灯った。
「しまった、そういうことか……」
特殊能力は魔法を受けるとチャージが開始されるようだ。
このままではあの衝撃波が来る。
もう少しで部隊の再編が終わるのに。
と、攻防でHPが3分の1ほどになった時、突然ボスは翼を広げて飛び上がった。
翼は飾りではなかったらしい。
どうする? いや、これはチャンスだ。
空中のボスに向けて魔法を放つ。
ボスのチャージが完了する。
そして、衝撃波を放つために真下に急降下する。
「ここだ!」
水属性中級魔法【カーラント】。
間欠泉のように強烈な水柱を発生させる対空用攻撃魔法を放つ。
急降下の勢いと水流が拮抗し、ボスの動きが止まる。
「ネクロス!」
ネクロスの盾に乗り、カタパルトのように打ち上げられる。
そして隙だらけのボスの両目に槍を突きこんだ。
「【ダブルスラスト】!」
赤い両目が砕け散り、体勢が崩れる。
「【ヘビースイング】!」
ボスを下に叩き落とし、反動で後ろに飛ぶ。
着地の衝撃は大きく、HPが減少する。
だが後は……
「帰還しろネクロス。いいぞ!」
すでに全部隊に態勢は整っていた。
俺が離れ、ネクロスが消えたのを確認するや魔法の絨毯爆撃が開始された。
すぐに俺も参加する。
ボロボロになったボスに近接部隊の波状攻撃が行われる。
ついにボスはポリゴン片となって爆散した。
決着はついた。
大きな歓声が上がる中、俺は表示されたアナウンスを見ていた。
〈MVP報酬 『星屑の杖』が贈られます〉
MVP取ってしまった。
しかし、俺は杖を使わないんだよな。
「やあ、レッサーが取れてヴァンパイアにランクアップです」
「私もエンジェルからアークエンジェルに。この『使徒化』ってなんでしょう」
「私の『眷属化』と似たようなものですかね?」
レイさんとルーシアがランクアップしたようだ。
そして俺も……。
「よう、大活躍だったな」
突然肩をたたかれる。
「ああ、ハイドさん」
「どうしたんだ?ボーっとして」
「ええ、ちょっと。すいません! ちょっといいですか!」
大声をあげて注意を引く。
皆、何事かと注目する。
「実はMVP報酬ってやつが出たんです。メテオライト製の杖なんですけど」
場がざわめく。
鋼鉄製の装備でさえ現状は珍しいのに、その上の性能の武器が出たというのだ。
当然だろう。
「でも、俺は杖を使わないんで明日の昼のオークションに出そうと思います」
各ギルドで話し合いが始まってしまった。
『ティルナノグ』の方からはティーアさんの懇願する声が聞こえてくる。
そんなに欲しいのか、というか威厳ないな。
そんな中、俺はアイコンに視線を戻す。
〈フィオは『上位悪魔』にランクアップしました〉
〈『使い魔』の使役数が6体になりました〉
〈『使い魔』同時呼び出し数が2体になりました〉
〈使役している使い魔がランクアップしました〉
って感じで色々出ていた。




