編成
揉めに揉めたがなんとか切り抜けた。
18人の選抜が終わり、この後は幹部クラスで編成を決めるらしい。
そして明日攻略に行くそうだ。
選抜に落ちたプレイヤー達が集まって何やら話していたな。
まあ、エリアボスは少なくともβテスト中は1回限りだ。
残念なのはわかる。
小銭でも稼ごうかと冒険者ギルドに向かおうとすると、
「あの……」
声をかけられ振り向く。
そこにいたのは男女2、2の4人組。
んー? どっかで見た様な気が……。
「ゴブリンの巣で助けてくれたのは貴方ですよね」
「ありがとうございました」
ああ、あの時の。
俺の宣伝をしてくれた方々でもあるわけだが。
いまさら、どうにもならんしな。
さっきのは自重を忘れた俺が悪い。
「別に当然のことをしただけですよ」
「そんなかしこまった口調じゃなくても……」
「そうかな。じゃあ……」
ここぞとばかりに礼を言われ質問される。
ずいぶん探していたらしい。
「へえ、『パンテオン』のメンバーだったのか」
「はい。ギルド内には色々な担当がいて私たちは職人チームなんです」
ふむ、『パンテオン』は犯罪プレイヤーを敵視している。
逆に言えば犯罪プレイヤーにとって『パンテオン』は目障りだ。
彼らが襲われたのは偶然では無かったのかもな。
色々とヤケになっていた俺は、4人に『妖樹の森』のドロップを見せてみた。
結果はものすごい反応だった。
ほとんど出回っていないらしい。
NPC店の1割増しで買うというので、半分くらいを彼らに売った。
すると、様子を見ていたほかの職人プレイヤーも乱入してきて大騒ぎになった。
俺のバカ。
本日2回目だよ。
やっちまった。
そして、持ってた素材の7割近くを売り払った。
もちろんやばい素材は隠したが。
騒ぎが収まり、色々疲れた俺は早めに休むことにした。
翌日、選抜にもれたプレイヤー達が独自にメンバーを集めダンジョンに向かっていたことがわかった。
結果は惨敗。
ダンジョンで迷い消耗し、かろうじて最奥にたどり着いたがボスに叩き潰された。
無謀というかなんというか……。
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夕方、『パンテオン』のホームでは幹部クラスが集まり、できたばかりの装備を確かめていた。
「『妖樹の森』と『月夜の森』の素材製ですか……」
「はい。どれもいい出来です」
昼に職人チームが持ち込んだ素材は、まだ攻略が進んでいないはずのフィールドのものだった。
それを持っていたのは
「フードのサモナーか」
口には出さないが何となく察していた。
彼はあの2つの森をすでに攻略している、と。
「彼にとっては他のメンバーなど足手まといなのかもな」
実際に戦ったサブリーダーのハイドには、彼のプレイヤースキルが異常なレベルである事が解っていた。
あまりにも正確で、無駄が無い。
あまりにも反応が早く、隙が無い。
化け物のような召喚獣以外は足手まとい。ゆえにソロ。
「でも、良かったですね」
リーダーのルーシアが言う。
「彼は私たちの仲間を助け、これまでにも犯罪プレイヤーを何人も撃退しています」
もし、彼が犯罪プレイヤーだったら誰にも止められなかっただろう。
「そしてレイドメンバーです。彼は大きな戦力になってくれるはずです」
そして決戦の日はやって来た。




