紅玉の幻獣
翌日、俺は生まれた従魔を連れて魔獣屋へ向かった。
額に赤い宝石の付いたエメラルドグリーンのリス。
こんなの情報には無かった。
選ぶとき魔力を頼りにしたのだが、この「魔力」というのも便宜上の呼称だ。
VRゲームをしている時独特の情報の流れとでも言えばいいのだろうか。
とにかく現実では感じない感覚を「魔力」と呼んでいるのだ。
まあ、要するに勘で選んだわけだな。
そして、魔獣屋に着くと店主に問いただした。
「なあ、もう生まれたんだが」
「おう、昨日の兄ちゃんか」
「ん? 覚えてるのか?」
「ああ。最近ランダムを選ぶ奴はほとんどいないからな。一時は、流行ったんだが……」
ワイバーンのネタが載ったころだろう。
で、みんな夢破れたと。
って、それは今はどうでもいい。
「それより、こいつだよ。緑のリスってなんだ?」
従魔を見せると店主の表情が変わる。
「そいつは……。ちょっと来い」
「?」
店の奥に案内された。
「結論から言うと、そいつは『カーバンクル』。ワイバーンどころかドラゴンとも並ぶ幻獣種だ」
はい? 幻獣? それって後半のボスクラスのモンスターなんじゃ……。
「まず、カーバンクルは光属性でブレスやヒールなど多彩な能力を持つ」
なるほど、光属性だから反発するような感じがしたのかな?
「で、この幻獣は種族能力として魔力探知が使える。シンクロはあるんだろう?」
「!?」
魔力探知は敵種族、地形、共に隙の無い探知系の最高峰だ。
それだけでも十分すごいのに多芸って、こいつやばくないか。
「目立ちたくないなら隠しておいた方がいいぞ」
「そうするわ……」
その後、食事など基本的なことを聞いて店を出た。
名前は『リーフ』に決めた。
従魔
種族 『カーバンクル』
名前 『リーフ』
属性 『光』
ランク 幻獣
リーフは普段はフードの中やコート内側に隠れてもらうことにした。
頼もしい相棒を得たわけだが、問題が一つ残った。
「俺、足無いままじゃん」
レンタルする金もない。
また金か。
「『蛇の谷』と『オークの集落』行くかな」
冒険者ギルドで依頼を受注して、かつての最前線に向かう。
「最速撃破報酬は無いけど、単独撃破報酬は有るしな」
戻るころにはトップギルドのダンジョン調査も終わってるだろう。
槍使いとしてレイドに参加しようと思うのだが、4つのトップギルドが手を組むのだろうか。
それとも各々が戦力を集めて早い者勝ちで行くのだろうか。
今のところ情報は共有しているみたいだし、前者の可能性が高いか。
「ま、帰ってきてからだな」




