従魔
始まりの町に戻るとなんだか湧いていた。
話を聞くと俺が出ている間に『蛇の谷』と『オークの集落』がクリアされたらしい。
するとフィールドの端に新たなダンジョンが現れたのだ。
トップギルドは慎重に、時間をかけて調査を行うらしい。
調査が終了したら必要に応じてレイドを組み、攻略に乗り出すとか。
「その間に『蛇の谷』と『オークの集落』に行ってみようかな」
レイドにも参加してみたいが、トップギルドの連中がソロを入れてくれるだろうか。
まあ、今考えても仕方ない。
オークション会場に素材を出品して町をぶらつく。
珍しい素材だから、前と同じならそれほど時間がかからず売れるはずだ。
ホント、ここは職人達の戦場だな。
冒険者ギルドに向かい依頼達成報告をする。
ここでは槍使いを装っている。
さらに、持っているアイテムの納品依頼も受け、次々達成にしていく。
これでCランクになった。
プレイヤーの中でも上の中といったランクだろう。
パーティに誘ってくるプレイヤーもいるが、ソロの方が気が楽だと断る。
悪いな。でっかい秘密を抱えてるんで。
そういえば最近は犯罪プレイヤー達がおとなしい様だ。
そろそろデスぺナから立ち直ってもいい頃なのだが。
快楽目当ての犯罪プレイヤーは、自分らが狩られる立場に置かれたことで自重するようになったらしい。
更生できたのなら何よりだ。
狩りまくったかいがある。
問題は悪魔希望プレイヤーだ。
連中が諦めることは無い。
正しい方法が不明なのだから。
間違っているという根拠もないのだから。
やっかいだな。
そのうちまた派手にやり出すのだろうか。
色々考えてると魔獣屋は目の前だった。よし行くか。
「いらっしゃい」
NPCの親父が迎えてくれる。
この商売ばかりはプレイヤーには不可能らしい。
将来的にはわからんが。
「小動物は安いな」
大型魔獣は高い。
ラプトルやエミューにも惹かれるが。
心は2度目のランダムに定まっていた。
ちょっとイカサマするけど。
まあ、合法だろう。
ランダム卵の中身は毎回一新されているので、小細工無し本当に運次第らしい。
「勝負だ……」
護符を使用してランダム卵を注文する。
差し出された25個の卵。
護符の効果で当たりは多く入っているはず。
後はそれを引けるかのリアルラックしだい。
卵に手をかざす、無詠唱並みに集中する。
すーと手をずらすと僅かに反発を感じる卵があった。
他は何も感じない。
つまり、よく判らない。
悪魔に反発ってどういうことだろう。
気になる。
よって決めた。
「親父こいつだ」
「ほう……、何か感じたか?」
「俺の魔力に引っかかるっていうか、反発するっていうか、よくわからん」
「卵の時点で魔力に反応するなんてめったにないぜ」
「じゃ、当たりか?」
「そこまでは責任持てんな。ホレ、登録するぞ」
卵のうちに個人登録することで2次売買を防止するのか。
俺は卵を懐に入れて宿屋に向かった。
そして、その夜。
ピキピキピキ
「はれ? もう生まれんの!」
ずいぶん早いんだな。まあ、いろんな食料を用意した。
竜でも馬でも鳥でもどんとこい。
パキキ
〈キィ……〉
卵から生まれた従魔は……
「これって、リス?」
エメラルドグリーンの体毛を持つ、リスの様な姿のモンスターだった。
「これが当たりなのか?」
どうにも一目では判断しにくい外見であった。




