宝物庫での臨時収入
3日から風邪でダウン。
こっちのストックを急遽放出。
呪いの武器騒動からしばし、ようやく見つけたセーフティエリア。
精神的な疲労が溜まっていたからありがたいね。
でも、マサさんは皆の装備を確認して顔をしかめてる。
「う~む、劣化が早いな……」
「予備の武器に変えた方が良いか?」
「そうだな。完全に壊れたらシャレにならん出費だ。戻ってからフルメンテだ」
「なら、拾った武器使えば良いじゃん」
「そうそう」
「お前ら……」
どうやら奴らの体液には武器を劣化させる効果があるらしい。
攻撃しただけで武器にダメージが入る、前衛泣かせのモンスターだ。
確かに武器は確かに消耗品だけど、そんなに大量に予備を用意してあるわけじゃない。
メイン武器の予備は大体1つ、多くても2つだ。
それはともかく、タクさんとヒデさんは全く懲りてないよ。
あの厄介武器を返せとマサさんに詰め寄っている。
でも、本当に全部の武器が壊れたら使わざる得ないんだよね……。
「う~ん、仕方ないか……」
「え“」
「おお!」
「よっしゃ!」
え~!? マサさん、渡しちゃうの?
大丈夫なんだろうか……。
マスターも『マジで?』って顔してるし。
「つーか、お前らも選んだ方が良いんじゃね?」
「そうそう。余裕ないんだろ?」
「む……」
「まあ、そりゃあ……」
しかも、逆に勧められてる!?
う~ん、使えそうなのあったかな?
「フィオにはこれなんかどうだ」
・背水の短剣:被ダメージ10倍 攻撃力は高い
・影鬼の槍:敵の影を貫く事で動きを封じる 影の上しか移動できなくなる
槍はともかく短剣はヤバすぎる。
ダメージ10倍って下手すると狂戦士化より危ないじゃないか。
本当に碌なの無いな……。
「タク……、さすがにこれは無理だって……」
「お前、回避得意じゃん」
「全部回避できたら防具要らんわ! 当たったら即死ってレトロなアクションゲームかよ……」
いくらマスターの反応がずば抜けてても、Stが追いつかなければ意味はない。
現時点では完全回避なんて不可能だ。
掠っただけでもクリティカル以上のダメージなんて冗談じゃないよね……。
「もっとマシなのないのかよ……」
「え~っと。お、マサにはこれなんかどうだ?」
・怨嗟の玄翁:丑の刻参りに使われた呪われた木槌 防御無視 一定確率で自身もダメージ
「まさかの完全運任せ!?」
「お前が使え! こんなの防ぎようがないじゃねえか!」
「え~、面白そうじゃん」
タクさん完全に遊んでるな……。
何とかしてマスターとマサさんにも使わせたいみたいだ。
ん? そういえばヒデさんずいぶん静かだな。
「……」
うわ……。
めっちゃ真剣な顔で武器選んでる。
それが呪われた武器じゃなければ真面目に見えるのに……。
「よし、これだ」
・八卦の大剣:当たるも八卦当たらぬも八卦 ミスとクリティカル以外でない 確率は50%ずつ
お~い、もっとマシなの無かったの~?
完全にギャンブルじゃないですか。
某有名RPGでメタル系狙うならともかく、普通に使う武器じゃないよね……。
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探索を続けることしばし、ようやく最深部に近づいてきたみたいだ。
敵が強いおかげで皆のスキルが順調に成長しているのが救いかな。
手に入る武器は相変わらずだけど。
ちなみに武器は1ランク劣る予備の予備を使ってる。
予備の武器は、ボス戦まで温存しておいた方が良さそうだったからね。
スキルアップによる戦闘力の上昇があったおかげで少し余裕が出たんだ。
「面白い武器が一杯でるな~」
「そのままじゃ使えないモノばっかだけどな……」
「研究素材としては面白いんだが……」
「だったら、あいつ等に売ればいいんじゃね?」
「ぐぅ、まあ、な……」
あいつ等……。
工房の連中か……。
確かにマッドな連中だけど、彼らなら実用レベルにまで改良できるだろうね。
ペナルティで奉仕活動中だったはずだけど。
「なんだよ、まだ根に持ってるのか?」
「フィオは蛾が大嫌いだからな」
「余計なお世話だ……」
まあ、深入りしすぎず程々の距離で付き合うのが吉かな。
問題は向こうがグイグイ距離を縮めてくる事だけど。
って、おや? 最深部に着いたのかな?
「ここが最深部か?」
「ああ、他は全部回ったな」
「じゃ、この扉の向こうがボス部屋か」
最深部の扉を開けて部屋に入る。
すると、そこは
「宝物庫か?」
「お宝部屋だな」
「くそ、全部オブジェクトだ。拾えないぞ……」
「で、アレがボスか」
金銀財宝や美術品に武器防具。
煌びやかな財宝に埋め尽くされた部屋。
その奥にそいつはいた。
『ディープ・ガーディアン』
って、あれ?
ソウル・イーターじゃないの?
そうか、そういえば中ボスが出てきていない。
このダンジョンは中ボスと大ボスが近くにいるタイプなのか。
結構珍しいんだよね、こういうの。
「ん? 奥に扉があるな」
「じゃ、こいつは門番って事か」
「近づく前に武器を変えておこうぜ。多分中ボスだ」
ディープ・ガーディアンは扉に近づかなければ動かないらしい。
当然こっちは装備を整え、準備を万全にしてから挑む。
さて、ディープ・ガーディアンの見た目なんだけど、イカタコで言うとイカだ。
ただ、これまでの雑魚より倍は大きいし、触手が妙に長い。
何か特殊な能力でもあるんだろうね。
「よっし、行くか」
「「「おう!」」」
〈キュイ!〉
そして始まる中ボスとの戦い。
行動パターンは雑魚の強化版ってとこみたいだ。
状態異常の叫びに墨、触手による打撃と攻撃魔法がメインの攻撃。
バランスは取れてるけどそれだけだ。
「そらっ!」
ザシュ!
「とりゃ!」
ズバッ!
マスター達はまず距離を取り、伸ばされる触手を次々に切り落としていく。
徐々に敵の手数は減り、戦いは一方的になっていく。
もちろん触手が無くても戦えるだろうけど、射程の長い10本の触手を失ったのは大きいね。
「おっしゃあ! 畳みかけ……」
「ヒデ!」
「ガードだ!」
ガギィ!
一気に勝負をつけようと突撃したヒデさん。
しかし、突如切り落とされた触手が再生しヒデさんを襲う。
間一髪ガードしたヒデさんは、一度皆の所まで後退した。
「部位欠損再生能力か」
「さすが軟体生物……って、おいおい」
「マジか……」
再び10本の触手を揃えた中ボス。
しかし、奴の変化はそこからだった。
なんと、ただのオブジェクトだと思っていた部屋中の財宝。
それを触手で拾って使い始めたんだ。
シュババババババ
「おわわわわ」
大量の金貨を手裏剣のように投げつける。
ブオン!
「うおっとぉ!」
バカでかい彫刻をぶん投げてくる。
ヒュン キィン!
「おい! さっき拾えなかったぞ、ソレ!」
武器を触手で握って振り回す。
大暴れだ。
部屋が広めなのが、せめてもの救いだね。
「ん? おい、見ろ!」
「は?」
「何が?」
「ぬわああああああ!」
その時、後列にいたマサさんがある事に気付いた。
突っ込み過ぎてたタクさんは、それどころじゃなかったけど。
まあ、それはともかく、マサさんの手の上には数枚の金貨が。
え? 金貨?
「え? それどこから?」
「拾えた」
「は?」
「拾えたんだよ! あいつが投げた物は普通のアイテム扱いになるんだ!」
「え? じゃあ……」
「ぬおおおおおお!」
3人が後方に下がったせいで攻撃が集中するタクさん。
そんな彼を気にする事無く、3人は部屋を見渡す。
キンキラに輝く宝物庫。
このお宝を拾えるようになる?
「「「……」」」
「オイッ! 何やってんだよ!」
タクさんの怒鳴り声が空しく響く。
両目が金貨マークに変わった3人には、聞こえてすらいなんだろうね。
3人は無言で足元の金貨を拾い始めた。
さて、僕もお手伝いしないと。
たまには特選モンスターフードとか食べたいし。
「コラァ!」
タクさん、もう少し時間稼ぎお願いします。
中ボス戦は大ボス戦の予行練習。
どこかに大ボス攻略の鍵が……。




