深淵の武器
久々の投稿です。
たまにはこっちも更新しないと。
『ディープ・スレイブ』たちを倒しながら奥へと進んでいく僕たち。
てっきり、また甲板に向かえばいいのかと思ってたけど、違った。
甲板に向かう階段が無くなってたんだ。
代わりに下り階段が増えてたんで、そこに向かう。
「おい、外見てみろよ」
「何か見えたか?」
「そういや、窓は割れてないんだな……」
何かに気付いたヒデさんが窓の外を見るように促す。
そして外の様子を見た瞬間、窓が割れてない理由を知ることになった。
窓の外は海だったんだ。
「海底? じゃ、この船は完全に沈没してるのか?」
「そういや、揺れがなんにも無いもんな」
「幽霊船じゃなくて沈没船を探索していたわけかよ」
でも、それなら水中ダンジョンになってるはずだよね。
ここはジメジメしてるけど浸水はしていない。
絵の中に入るって演出もあったし。
どっちかって言うと、沈没船風の異空間ってとこなんだろうな。
「いや、本当に沈没船なら水中ダンジョンのはずだろ」
「それもそうか。しかし、凝ってるな」
「ソウルイーターの趣味なのかね」
マスターの言葉に他の人たちも頷く。
でも、ソウルイーターにとってはここが本拠地なのは間違いないだろうね。
幽霊船は疑似餌みたいなものなんだろうな。
「ん? ここは倉庫かな?」
「そうみたいだな。宝箱は無いけど」
「木箱はあるな。開けてみようぜ」
「中にモンスターなんか入ってないだろうな……」
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「ハッハー! 殲滅だぜぇ!!」
「ヒャッホゥ!! スゲェ威力!」
「あいつらは……」
「よく、あんな物使う気になるなぁ」
現れるディープ・スレイブを薙ぎ倒し、突き進む2人。
ヒデさんとタクさんだ。
混乱を食らいまくっていたせいか、タクさんは【混乱耐性】のスキルを得ていた。
そこにたどり着くまで、何度マサさんのハンマーでド突かれたんだろう?
もはや覚えていない。
沈没船も後半に入ったらしく、モンスターも徐々に強くなってきた。
ディープ・スレイブの上位種らしい『ディープ・イーター』。
ソウル・イーターの下位種らしい『マインド・イーター』などが現れ始めた。
ディープ・イーターはディープ・スレイブと同じタコ頭。
マインド・イーターはイカ頭だ。
ディープ・イーターは単純にディープ・スレイブの上位互換。
だけどマインド・イーターは、強化や弱化などの補助魔法を使う後衛だった。
こいつが1匹いると結構面倒なんだ。
でも
「弱い! 弱いぞ!!」
「イカタコ軍団、恐るるに足らず!」
ヒデさんとマサさんが振るう武器は、それすらも薙ぎ倒す。
倉庫で見つけた武器はそれほどに強力だったんだ。
ただし、当然ながらそんなに良い所ばかりじゃない。
っていうか、リスクだらけだ。
ヒデさんが振るう大剣は『狂信者の大ナタ』。
ただでさえ強力なんだけど、MPを消費してさらに攻撃力がアップする魔法武器だ。
しかし、MPが足りなくなると装備者は混乱状態になってしまう呪いの武器でもある。
さらに、混乱状態ではMPの代わりにHPを消費するというイカレ(し?)た仕様だった。
タクさんが振るう戦斧は『ベルセルク・ブローヴァ』。
その名の通り、狂戦士化の能力が付与された呪われた武器だ。
攻撃力はすごい高いんだけど、HPが半減すると狂化が発動し、攻撃力が2倍に、防御が0になる。
使いどころを考えれば使えるんだろうけど……。
そんなリスキーな装備を嬉々として振るい、乱戦に突入する2人。
阿保としか思えない。
でも、確かに強い。
マスターの出番が無いくらい。
スキルも使わず通常攻撃だけでこの強さ。
正直凄い。
「う~む……マサ、どう思う?」
「このレベルの武器が普通に出るか……嫌な予感しかしないぜ」
でも、マスターとマサさんは渋い顔だ。
強い武器が出るのは良い事じゃないのかな?
持って帰ればデメリットを抑える強化もできるだろうし。
僕は不思議そうに2人を見つめる。
「いやな、アレがめったに出ないレアっていうなら問題ないんだよ。でも、ここで手に入れた武器はデメリットはあるけど、どれも総じて高性能だ」
「つまり、デメリットに目をつぶって、それらを使わないといけないほどボスが強い可能性があるって事だな」
な、なるほど。
確かに言われてみれば……。
何だか一回引き返した方が良い気がしてきたよ。
「引き返すか?」
「う~ん、迷うな」
現時点では苦戦というほどじゃない。
ボスの強さが分からない以上、引き返す理由としては弱いかも。
それに、ここはインスタントダンジョンだ。
一回出たら消える可能性大。
ホント迷うね。
「ウバァーーーーー!!」
「うおっ!?」
「何だ!!」
そんな思考をぶち壊す雄叫びが響き渡る。
咆哮を上げるのは赤いオーラを纏ったタクさん。
どう見ても状態異常【狂化】が発動している。
あの人、調子に乗って突撃しすぎたな……。
まあ、考え込んで目を離した僕らも悪いんだけど。
って、強っ!
攻撃力倍は伊達じゃない。
「おい、バカ、一旦引けって! ああ、もう!」
HP半分、防御0のまま暴れまわるタクさん。
状態異常云々以前に本人がハイになってるみたいだ。
たまらずマスターが援護に突撃する。
「リーフ! あのバカを頼む!」
〈キュイ!〉
マスターが前衛2人に合流し、モンスターを駆逐する。
一方、僕は全力でタクさんに回復魔法をかける。
ええい、清々しい笑顔で狂化してるな。
こっちの身にもなって欲しい。
「この! 正気に戻れ!」
ガン! ゴン!
「フハハハハハァ!!」
あ、タクさんにマサさんが、いつものハンマーツッコミを開始した。
でも、混乱じゃないから殴られても正気に戻らないみたい。
っていうか、水でもぶっかけた方がテンション下がって正気に戻るんじゃ……。
そういや、この人βテストで『バーサーカー・ドラッグ』使ってたっけ。
それでネクロスを道連れにしたんだよね。
狂化に関しては全プレイヤー中でもベテランなのかも。
ちなみに僕は状態異常回復魔法も使える。
でも、今回のケースはダメなんだ。
タクさんの狂化は敵の攻撃じゃなくて武器の能力だからね。
耐性は効果ありだけど、魔法や薬による回復は効果無しなんだよ。
「マサ、放っとけ! そのうち元に戻る!」
HPはもう回復させたし、敵ももう少ない。
このままHPが維持されれば数分で元に戻るはず。
戻った後のお説教は凄そうだけどね……。
「オラァ! これでラス……はにゃ!?」
「コラァ! ヒデェ! MPくらいちゃんと確認しとけよ!!」
さすがのマスターもブチ切れてる。
気をつけろって言ってあったのに連続だからね。
まあ、現在進行形で混乱したヒデさんに襲われてるってのが9割だろうけど。
あの武器の威力じゃ、即死もありうるし。
「はっ!? 俺はいったい……」
「白々しいわ!?」
あ、タクさんの狂化が切れたみたい。
意識はあったくせに、誤魔化せると思ってるんだろうか……。
ギィン!
おお、マスターがヒデさんの武器を弾き飛ばした。
なるほど、こうすればさっさと解除できるのか。
敵がいないからできる荒業だね。
「没収」
「異議なし」
「そんな!?」
「異議あり! 異議あり!」
RCWがクライマックスなのに、なぜかこっちを更新です。
ちょっと短いですけど。