ゴーストシップ キッチン(での昇天)
ようやく復活。
でもキリが悪いのでオチはつけておきます。
あの、マスター? 何でそんなにヤル気に満ち溢れてるんですか?
誤魔化してもしょうがないからハッキリ言いますけど、このミッション向いてないですよね?
それも致命的に。
〈キュウゥゥ……〉
「ふふふ、心配するな。見つけたんだよ、キーアイテムを」
キーアイテム?
そう言えばマスターは一冊の本を手にしているな。
何かのヒントだったりするんだろうか。
「こいつは船員の日記帳だ。で、ここを見てみろ」
〈キュ?〉
え~と、何々。
このページはこの部屋で行われたパーティの事が書いてあるのか。
コック特製の漁師鍋がリスペクトされてるみたいだ。
たっぷりの海鮮を使った漁師鍋、レシピまで付いてる。
成程、これは確かに怪しい。
「そんな難しいレシピじゃないし、イベントならある程度補正されるだろ」
確かに料理が下手だとクリアできないダンジョンなんて理不尽だ。
マスターのバグ並みの生産スキルも修正を加えるって運営は言っていた。
いや、言ってたのは教授だったけど。
「よし、じゃあ始めるか」
〈キュウ!〉
ふむふむ、材料は大量ゲットした魚介類で足りるみたいだ。
マスターは大鍋に水とドロップアイテムの『海洋深層水』を入れてコンロに乗せた。
う、嫌な予感が……。
カチッ ボッ
あ! 黒くない! 普通の赤い火だ!
以前見た禍々しい闇の炎じゃない!
マスターがさらにつまみを捻ると炎は青く変わり安定した。
凄い! ……なんだか嬉しいんだけど虚しさもこみ上げてくるな。
何でコンロに火を着けただけでこんなに感動してるんだろ……。
ピッ ▶魚を3枚におろし、アラで出汁を取る
おお、魚に包丁を入れても、もがき苦しまない!
アラを鍋に入れても黒く濁らないし異臭もしない!
ピッ ▶アクを良く取り、アラを取り出し味噌を加えて味を調える
取り出されたアラも普通だ。
味噌を加えると良い匂いがしてくる。
これ、普通に美味しそうなんですけど。
ピッ ▶煮立ったスープに魚の切り身、貝、イカを加えて煮込む
貝は剥き身にしてあるし、イカも胴体部分の切り身だ。
丸ごと入れる様な暴挙は行っていない。
そもそも、マスター自身は器用だし、料理自体もリアルでは普通にやっている。
確か冷えたスープで魚介を煮込むと生臭くなるんだよね。
ピッ ▶香草を加えて火を弱め、蓋をして煮込む
レシピ通りの完璧な作業だ。
これは期待が持てそうだね!
「よし、完成!」
カパッ
〈『腐敗魚のヘドロ煮込みカーボン風味』が完成した〉
ゴシャア!
「ハガァ!?」
〈キュ!?〉
え? 何? なんで?
蓋を開けた瞬間、そこには見慣れた汚物が誕生していた。
キッチンにはお馴染みの悪臭が立ち込めている。
蓋をした後、あの鍋に何が起きたの?
「運、営……。はか、ったナ……」
当然のように船長は汚物を生産者の口に叩き込んだ。
途中経過やエフェクトは修正したのに結果は同じ。
イベントなのにその辺の考慮も無し。
マスターの眼が怒りで染まり
「グバッ!?」
〈フィオの全身を異次元の衝撃が揺さぶる〉
〈HPが100減少した〉
〈MPが100減少した〉
〈スタミナが100減少した〉
〈宇宙の電波を受信した〉
「あばばばばばばば……」
瞬時にさっき出汁に使った魚のように濁った。
状態異常の混乱が付いてる。
遂に3人目の犠牲者が出てしまった……。
って、呆気に取られてないで治さないと!
……駄目か。
イベントの一環だからか治療できない。
同じ人が何度も挑戦できないように取られてる処置なんだろうけど、酷い。
「あぐぅ……。腹がぁ……」
「おごっ! あがっ!」
「あばばばば……」
うーん、取り敢えず換気しよう。
幽霊船という事を差し引いても空気が濁り過ぎだし。
しょうがないじゃん、僕じゃどうにもできないんだから。
--------------------------
「ふう、戻ったぞ~って、何があったんだ?」
ああ、お帰りなさいマサさん。
貴方が最後の希望です。
もう、僕にできる事は無いですから。
あれ? マサさんも本を持ってる。
もしかしてコッチが本物のヒントなのかな?
〈キュイキュイ?〉
「ん? これ? 船長の日記。船長はムニエルが好物なんだとさ」
Oh、間違い無い。
そっちが本物ですね。
マスターはダミーに引っ掛かったわけか……。
ダミーだよね?
マスターだから駄目だったっていう、悲しいオチは無いよね?
うん、ダミーだったって事にしておこう。
「お~い、しっかりしろ~。……駄目か、さっさと済ませるしかないみたいだな」
何をやっても復活しない3人。
マサさんは諦めてキッチンへ。
うん、僕が出来る限りの事はやったんですよ。
無駄だったけど。
「え~っと、『白身魚の香草ムニエル』ね」
ピッ ▶白身魚を3枚におろす
ピッ ▶切り身に塩胡椒、香草をふり、小麦粉を着ける
ピッ ▶フライパンにバターを溶かし、切り身を焼く
ピッ ▶表面がこんがり焼けたら皿に盛り、刻んだパセリを乗せる
〈『白身魚の香草ムニエル』が完成した〉
おおう、普通に調理して普通の料理が出来る事にこんなに感動するなんて……。
ともあれ、これで駄目ならお手上げだね。
「さあ、どうぞ」
〈……!〉
おお! 船長の反応が明らかに違う。
どこからともなくナイフとフォークが現れ、船長は優雅にムニエルを食す。
骨なのにどこに入ってるのか、とか突っ込んだら負けなんだろうな。
〈最後の晩餐、感謝する……〉
ムニエルを平らげた船長は感謝の言葉を残し消えていった。
同時に奥の扉がバタンと開いた。
イベントクリアか。
「「「……」」」
静かになったと思ったら、お三方の状態異常が回復していた。
HP、MP、スタミナは減ったままだけど。
「うう、アニサキスなんてリアルでも経験ないんだけど、あんなに痛いのか……」
ヒデさん料理は上手かったんだけどね。
ちょっと先走って行動し過ぎたかな。
「あ~、口直しが欲しい」
タクさん、貴方はもうちょっと考えて行動しないと。
いくら何でも、あれは無いと思いますよ。
「くそぅ、騙された……」
マスターは、まあ。
以前に比べればマシ、なのかな?
生成物は変わらなかったけど。
「イベント自体は普通だったと思うけどなぁ」
まあ、生産職のマサさんからすればそうだろうね。
ともあれ、これで先に進めるわけか。
ん? あれは?
〈キュキュイ!〉
「どうした、リーフ?」
「ん? 俺がどうかしたのか?」
「おい、マサ。その本なんだ? 光ってるけど」
マサさんが持ってた船長の日記が光ってる。
これは更なるヒントかな。
「……さっきはここまでしか開かなかったんだけど、最後まで開けるようになってる」
「内容は?」
「ちょっと待て。ええと……」
マサさんが船長の日記の続きを読み上げる。
その内容は要約すると
この船は難破して沈没し、幽霊船となってしまった
船長以下船員は全員亡霊となり、同類を集めながら海を彷徨っていた
だがある時、船に魔物が侵入してきた
魂を喰らうその魔物に船員たちは次々と食われ、船長だけが残った
船長はアンデッドを船に呼び込む撒き餌として残されていた
「……だってさ」
「魂を食う魔物? ソウルイーターって奴か?」
「う~ん、アンデッドで似た様なのはいたけど、これだけじゃ分からないな」
「まあ、情報感謝ってことで。進むしかないだろ」
〈キュキュウ〉
まだダンジョン入口のオープニングイベントでしかないのに……。
なんか、もうクライマックスみたいな気分になるのはなんでだろうなぁ。
まあ、ともあれ、ここからが本番だね。
次回こそRCW更新しないと。




