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リバース ワールド オンライン  作者: 白黒招き猫
サイドストーリー3  カーバンクル ツアー
223/228

ゴーストシップ キッチン(の惨劇)

体調が治らない……。


何か口に吹き出物が出来てるし。

「不気味なくらい波が無いな……」


「逃がさないって事かよ」


 縄梯子でボートに乗ったマスター達は海を見て異変に気付いた。

これだけ船の近くなのに波が立っていないんだ。

完全に停船していても、船があるだけで水流が乱れるはずなのに。

さらに言うなら風も無い。

ボートはオールで漕いでるけど、ただの帆船だったら立往生だ。

ちなみに漕いでるのは竜人のヒデさんと鬼人のタクさん。

ドワーフのマサさんとマスターは警戒要因だ。


「サルガッソーだっけ? あれみたいだな」


「船の墓場だったか、それ」


 サルガッソー? 海難の名所か何かかな。

獲物を逃がさないために、幽霊船が似たようなフィールドでも発生させてるのかもね。

ふと上を見ると船上ではもう戦闘が始まっていた。

幽霊船から霊体系モンスターが攻め込んできてるみたいだ。


「あ~! もう! ウザイな、こいつら!」


「しょうがないって。これがこいつらの存在意義だし」


 こっちはこっちで海の害虫、舟幽霊の襲撃を受けているんだけどね。

まあ、単体じゃザコだし、僕みたいな探知持ちがいれば奇襲も受けないから怖くないけど。

そうこう言ってるうちに幽霊船にご到着だ。




「うわ、めっちゃ浸水してるじゃん」


「よく沈まないな。さすがファンタジー」


「床抜けてるし。って、おわ!」


 床の穴を覗き込んだヒデさん。

そこに突然穴から何かが飛び出してきた。

不意を突かれても流石というか、ヒデさんは大太刀を一閃してそれを切り捨てた。

あれは魚かな?


「おいおい、幽霊船なのに第一村人が魚ってどういうことだよ……」


「村でも人でもないけどな。まあ、この様子じゃあ……」


 床下は完全に水没していて水棲系モンスターの巣窟になってるみたいだ。

魚にイカ、タコ、何でもいるみたいだね。

海水に濡れると毛皮がゴワゴワになるから入りたくはないなぁ。


「この分だと下は無いか」


「じゃあ、登り階段を探さないとだな」


 ゴールは甲板って事なのかな?

普通は甲板から侵入して、奥の船長室あたりにボスがーってイメージなんだけど。

それとも甲板に出てから、また下るのかな。


「ドロップ何が出た?」


「白身魚の切り身」


「食材かよ」


 モンスターの中には食材を落とすものもいる。

獣系や鳥系は肉、植物系は木の実とかね。

ホントにこれ食えるの? って食材もあるそうだけど。

たとえば


「うえ! サハギンの肉なんて食えるのかよ……」


「フジツボは……ダシか何かに使えるのか?」


「フグの卵巣って、殺す気満々じゃねえか!」


 ヤバそうな食材も多々あるんだけどね。

っていうか、食材ドロップ率が多いな。

何かイベントに関連してるんだろうか。


-----------------------


「これ、けっこうな額になるんじゃないか?」


「海の食材は需要が多いもんな」


 海産物はエリアによって獲れるものが違うからね。

陸の近くで獲れる素材はもう供給過多状態だ。

でも沖に出ないと取れない素材や、海中ダンジョンの素材はまだまだ不足しているんだ。

水中戦は慣れないと大変だからね。


 でも、ここなら陸戦で素材が手に入る。

これって意外と人気のダンジョンになる気がするなぁ。

明らかに食材ドロップ率が高いし。


「よっと」


「ほいっと」


「わっ、たった……」


 床が丸々抜けた部屋。

プカプカ浮いてるタルを足場に進むマスター達。

マサさんってこういうの苦手なんだな。

どうでも良いけど。


「おい、急げ!」


「集まってきてるって!」


「え? おわっ!」


「チッ!」


 最後尾ということも災いしてか、マサさんにモンスターが集まり始めてる。

さらに水中からタコの足が伸びてマサさんに絡みつく。

普通に大ピンチだ。

マスターが魔法とナイフを撃ち込んで、どうにかマサさんは死地を切り抜けたけど。

油断大敵だね。



「なんか豪華な扉だな」


「船長室ってやつかな」


 いくつかあった船室は、どれも水浸しで目ぼしい物は無かったからね。

ここはちょっと期待できそうだ。

完全に泥棒の思考だけど気にしたら負けだよね。


  ガチャ ギィ……


「お邪魔~」


 マスターがドアを開ける。

真正面の机には船長服を着た骸骨が座っていた。

その眼にぼんやりと火が灯る。


「しました~」


 バタン


 マスターはそのままドアを閉めてしまった。

まあ、気持ちは解るかな。

実行するかどうかはともかく。


「おい、どうした?」


「何があった?」


「ボスがいた」


「「「はあっ?」」」


 3人とも冗談言うなって反応だ。

僕だって見ていなければ同じことを思うさ。

もうボスなんていくらなんでも早すぎる。


「冗談だろ?」


「いや、いたんだよ。骸骨船長が!」


「骸骨船長?」


 ギィ


「そうだよ!」


「「「……」」」


 突然3人の動きが止まる。

いやな予感がした僕は後ろを向いてみた。


〈……〉


 いるよ! いますよ!

真後ろに骸骨船長が! マスター、気付いて!

……あれ? 何でマスターは気付かないんだ?

あ、そうか。

戦闘の気配が全くないんだ。

ってことは、この船長はボスじゃなくてNPCなのか。


「ん? どうしたのお前らって、うわっ!」


「「「ヒィ!」」」


 半透明の船長はマスターをすり抜け、移動し始めた。

何の感触も無かったけど気持ち悪いモノは気持ち悪いね。

3人もホラーな光景に引いてるし。

混乱するマスター達を放置して船長は進んでいく。


「ついて来いって事か?」


「まあ、他にそれっぽい物も無いしな」


 簡単に船長室を調べたけど目ぼしい物は無かった。

ゆっくり移動する船長に追い付き、後ろをついて行く。

すると、船長はさっき開かなかった部屋に吸い込まれていった。

ノブを回すと鍵は開いていた。


---------------------


「あ、いたぞ」


「席についてるな」


 部屋に入るとそこは食堂だった。

船長は堂々と席についている。

何なんだろうこの状況。


 食堂の奥にはドアがあったけど開かないみたいだ。

これってイベントをこなさないと開かないって事かな。


「う~ん、これはやっぱりアレか」


「船長殿に料理を振る舞え、と」


「俺に料理をしろ、と?」


「他に無さそうだしなぁ」


 マスターのテンションが見るからに下がってるね。

一応、運営からの修正が入ったはずなんだけど。


「ここって他に食材とか無いのかな」


「せめてヒントが欲しい……」


 マサさんは調味料を探しに、マスターはヒントを求めて食糧庫に行ってしまった。

僕はテーブルに乗って待つことにしようかな。

って、あれ? ヒデさんが既にキッチンに立ってるぞ。


「ふふふ、実は結構上手いんだぜ?」


「おお、手際良いな!」


 傍で見ているタクさんも感心している。

ヒデさんはドロップアイテムの青魚を上手に調理していく。

どうも選択肢が出ていて調理過程を選択してるみたいだ。



 ピッ  ▶鱗を取ってよく洗う


 ピッ  ▶三枚におろす


 ピッ  ▶身を薄切りにする


 ピッ  ▶皿に綺麗に盛り付ける


〈『青魚のお造り』が出来た〉


「おし、完成!」


「おお~」


 あっと言う間にお造りが完成した。

う~ん、竜人の戦士がこんなに器用なんて……。

イメージ崩れるね。


「さあ、どうぞ!」


 ヒデさんは船長の前にお皿を置いた。

気に入ってもらえるのかな。


 フワリ


「おお?」


「浮いたぞ!」


 ビュン  ゴシャ!


「ふぐぅ!?」


「ヒデェー!」


 浮かび上がったお皿はヒデさんの顔面に直撃。

お造りはヒデさん自身の口の中だ。

船長は刺身が駄目な文化圏の人なんだろうか。

結構美味しそうに見えたのに。


「ううう!?」


〈突き刺すような腹痛がヒデを襲った〉


〈HPが50減少した〉


〈MPが50減少した〉


〈スタミナが50減少した〉


〈アニサキスが上昇した〉


 ……成程。

ちゃんと火を通さないと駄目って事か。

腹を押さえて蹲ったまま動かないヒデさん。

状態異常の毒にもかかっている。

悲惨だ。


「おっし、次は俺の番だな!」


 やる気を漲らせるタクさん。

でも僕は知っている。

この人は良く言えば豪快、悪く言えばガサツなのを。

大丈夫なんだろうか。


「良く火を通せって事だろ? 簡単簡単」


 それはそうだけど、それだけじゃ駄目なんです……。

って言うか、それサハギンの肉ですよね?

鬼人っていうよりオーガのエサのような気がするけど。

大丈夫なんだろうか。


 ピッ  ▶焼く


 ピッ  ▶さらに焼く


 ピッ  ▶とにかく焼く


 ピッ  ▶ひたすら焼く


〈『カーボンサハギンの消し炭風味』が出来た〉


 ビュン ゴシャア!


「おぼぉ!?」


 そりゃ、こうなるよ。

船長はお怒りのようで、テーブルに持って行く前にジャッジを執行。

タクさんもヒデさんと同じ運命を辿ってしまった。

僕にはフォローできない。


「グハッ!」


〈痺れる様なエグ味と苦みがタクの口を蹂躙した〉


〈HPが80減少した〉


〈MPが80減少した〉


〈スタミナが80減少した〉


〈発癌性が上昇した〉


 タクさんは口を押えてもだえ苦しんでいる。

転がり回りたいんだろうけど、状態異常の麻痺がついていてそれもできない。

まさしく地獄だ。

そして


「お待たせ~」


〈キュウ……〉


「何だリーフ、元気無いな。ん~? 2人とも何やってんだ?」


 ここで遂に真打登場か……。

マスター、どうかご無事で。




現在、在庫に加筆して投稿してます。


どれを更新するか予定は未定状態です……。

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