ツアー開始
こちらはリーフ視点のサイドストーリー。
ほんのオープニングですけど。
内容的にはサイドストーリー1に近いダンジョン攻略系なるかなと。
皆さんは海というと、どんなイメージを思いつくかな?
青い海原、輝く太陽、海鳥が舞う水平線、白い砂浜、そんなところかな?
「クルージングツアーにいくぞー」って言われて僕が想像したのも似たようなものだったよ。
我ながら楽観的なものだよね。
ああ、紹介が遅れたね。
僕はリーフ。
βテスト最強のプレイヤーの従魔だよ。
種族はカーバンクル。
結構高位の聖獣なんだよね。
使い魔ってのは悪魔の種族スキルで生まれるけど、従魔は少し違う。
種族に関係無く、テイムする事で手に入れる味方モンスターだ。
テイムの方法は色々あるけど代表的なものは3つ。
1つは野生のモンスターを従える方法。
1つは店で購入する方法。
1つはイベントで手に入れる方法だ。
僕の場合は店で購入のパターン。
ただし、ランダム性の高いタマゴでの購入だったんだ。
タマゴは安い代わりにアタリハズレが激しいからね。
僕を引き当てたマスターは、凄く運が良いか勘が良いんだと思うよ。
何しろ相性抜群だからね。
従魔に求められる役割はサポートか戦力だ。
馬車を引かせたり騎乗したりという移動の補助。
鳥の視覚や兎の聴覚、犬の嗅覚による索敵。
ゴーレムなんかは壁役にピッタリだね。
そういった個人やパーティの足りない点を埋めるのが僕らの役目なのさ。
そして、僕の種族カーバンクルは補助のスペシャリストなんだ。
五感に優れ魔力による探知まで行える。
光の属性を持ち、防御を得意とし、回復と攻撃もこなせる。
純粋なアタッカーであるマスターにピッタリの従魔なのさ。
外見は耳の大きな緑色のリスって感じかな。
ただし、額には赤い宝石が付いている。
某ゲームの影響でルビーって思ってる人は多いだろうけど、実は違うんだ。
そのものじゃないけど、これはガーネットらしいんだよ。
カーバンクルの語源だしね。
そのせいか僕らは鉱物の精霊としての性質を持っているんだ。
性別も無いからオスってワケでもない。
男の娘? なんかそんなこと言って騒いでるメスもいたっけな……。
おっと、失礼。
あんまり女性は好きじゃないんでね。
全くあいつらと来たら、嫌がってるのに耳を引っ張るわ、撫で回すわ、尻尾を握るわ、抱き付くわ、無理やり餌を食べさせようとするわ、お持ち帰りしようとするわ……(以下略)。
ふう……失礼。
まあ、とにかく性別は無いけど僕的には自分はオスなのさ。
あんまり追及はしないで欲しい。
気分悪くなるから。
話が逸れたけど僕らは今、海にいる。
もちろんマスターと一緒だし、マスターの仲間の3人も一緒だ。
マスターの妹パーティ4人もね。
ギルド総出で現在船の上なんだ。
そう、クルージングツアーの真っ最中ってわけ。
ただし、時刻は夜だ。
空は星も見えないほどの曇天。
海面には霧が立ち込め、海と空の境目も分からない。
大型船に乗ってるから気にならないけど、海面は舟幽霊で一杯だろうね。
連中は海のブラックなGと忌み嫌われてる。
とにかく仲間を呼びやすいんだ。
1匹と思って油断してると、小型船位ならあっと言う間に包囲されてしまう。
そうなれば待っているのは沈没だ。
迷惑なモンスターだけど対処法も研究されているんだ。
一番ポピュラーなのは甲板の高い大型船に乗る事だね。
連中は飛べないから、甲板によじ登る事でしか船に侵入できない。
力も低いから船がスピードを出せば落ちてしまうのさ。
時々登り切る奴もいるけど、数が武器だから単体なら怖くないしね。
「いかにもな雰囲気だなぁ……」
「なあフックさん、あとどれくらいだ?」
「おう。この霧が甲板位まで上がってきたら要警戒ってとこだな」
腰に曲刀をぶら下げた海賊ルックのプレイヤー。
彼がこの船の船長であるフック氏だ。
『大航海時代』っていう海専ギルドの幹部で、今回のツアーの案内人なんだ。
他にもシルバー氏とかキッド氏とかそっち系の名前の人がいるらしいね。
「横一列に並んだ鬼火を見逃すな、だろ」
「そうだ。向こうからは寄ってこないからな。こっちが見つけて乗り込むってわけだ」
「幽霊船か。浪漫だな……」
そう、このツアーの目的は幽霊船なんだ。
幽霊船は、遠洋に出現するインスタントダンジョンの一種でね。
クリアしても何度でも現れるけど、移動してるからとにかく見つけにくいんだ。
まあ、潜水や水泳スキルが必要な海底洞窟よりは攻略自体は楽みたいだけどね。
『大航海時代』は海のボス戦で一躍有名になったギルドだ。
新大陸も補給地点位にしか考えていなくて、基本的には海に出てるらしいね。
その分、海に関しては彼らの右に出る者はいない。
そんな彼らが海の魅力を知ってもらうために始めたのが『インスタントダンジョン・ツアー』なんだ。
読んで字のごとく、海のインスタントダンジョンに一般プレイヤーを案内し、場合によっては攻略を手伝うっていう一種の観光業でね。
見つけにくい海のダンジョンに高確率で案内してくれて、難しい海のダンジョン攻略も手厚くサポートしてくれるのさ。
評判は中々良いみたいだよ。
今までに無かった新しいプレイスタイルと言えるね。
そんな彼らが新たに考え付いたのが『幽霊船ツアー』なんだ。
ただ、幽霊船の性質や情報が揃ってきたのはまだ最近の事みたいだね。
さらに言うと幽霊船というダンジョンは海に出現するけど、出現するモンスターやイベントは海とはあまり関係ないらしい。
っていうか、はっきり言えばアンデッドメインのホラー系ダンジョンだ。
つまり、彼らにとっては専門外のダンジョンなのさ。
そんな訳で彼らは腕利きのプレイヤーを雇って幽霊船の攻略を繰り返し、情報を集める事にしたんだ。
マスター達も、このツアー前調査に参加するために今ここにいるんだ。
まあ、同じような調査チームは彼方此方にいて、皆で幽霊船を探してるらしいけどね。
いわゆる数撃てば当たる戦法ってわけさ。
流石というか、マスターはトラブルの神に愛されてるみたいだね。
どうやらこの船はアタリを引いたみたいだよ。
霧が徐々に濃くなってきてるのが解る。
フックさんの言葉通りなら幽霊船が近いんだ。
「お、あれ舟幽霊じゃね?」
「おりゃ、害虫駆除!」
タクさんとヒデさんは、あちこちに設置されてるバリスタで舟幽霊を撃っているみたいだ。
お金を入れると使用可能なインカムモードになってるのか……。
マサさんは釣りをしてるし……皆、暇なんだな。
妹さんパーティは甲板に上がってくる舟幽霊を見張ってるけど腰が引けている。
やっぱりメス、じゃなくて女性には向かないツアーなんだろうね。
って、おや、あれは?
甲板まで上がってきた深い霧。
その霧の海に横一列に並ぶぼんやりした灯り。
〈キュ! キュ!〉
「ん、どうした? リーフ」
〈キュイー!〉
「あっちに何かあったのか? ……あれは!」
マスターは鬼火を見つけるとフックさんの元に走り出す。
フックさんの指示で船は進路を変えて、鬼火に向かって進みだした。
霧を引き裂くように船は進み、遂にそれを視界に収めた。
うわ、でっかいな。
この船の倍はあるじゃないか……。
水車もオールも無いのに海を進むボロボロの帆船。
風を受けるべき帆も穴だらけで、マストの先端には鬼火が灯っている。
フックさんによると、あの鬼火は『セントエルモ』というモンスターらしい。
こっちから手を出さなければ無害だけど、幽霊船自体を攻撃すると襲ってくるそうだ。
こちらの船が横付けすると幽霊船の動きが止まった。
これで捕捉完了って事だね。
橋をかけて甲板に乗り移りたいところだけど、そうすると大量のアンデッドがこっちの船に乗り移って来るそうだ。
もちろん少数は普通に襲ってくるので、船の護衛も必要になるらしい。
あ、妹さんチームは残留部隊に立候補してる。
まあ、そうだろうと思ったよ。
「よし、梯子を降ろすぞ」
「下から入るのか?」
「ああ、幽霊船の後部を見てみな」
フックさんに言われて甲板からのぞき込む。
すると、幽霊船の後部の水面付近に大きな穴が開いていた。
思いっきり浸水してるし、何で沈まないんだか。
さすが幽霊船だね。
「さ、こっからがツアーの本番だ。楽しんできてくれ」
「あいよ。じゃ、いくか」
「おっしゃ、出番だ!」
「マサ、それ釣り竿だ」
「あれ?」
……いつもの事ながら緊張感無いなぁ。
時系列的には番外編の後ですね。
さて、サイドストーリー2と3、どっちを先に執筆しようかな……。
まあ、しばらくはまたRCWの更新を優先する予定ですが。




