悪魔の釣り堀
再び割り込み投稿。
活動報告に挙げておきましたが気付いてもらえたかな?
チャポン……
沼から引き揚げられた糸の先。
針にかかっていたのはボロボロの長靴。
それを見たマスターの眼がさらに憂鬱に曇っちゃった……。
「……解せぬ」
マスターの口から思わずうめき声が漏れちゃった。
なんか昔の武将みたいな口調になってるし。
いい加減、キャラが崩壊しかけてるのかな……。
ショック過ぎて。
チラリと横に目をやると、そこに在るのは山積みの長靴。
私だって理解不能だよ?
何でこんな人気の無い沼地に長靴があるのか。
何で明らかに沼地を埋め尽くせるほど出てくるのか。
何でどれもボロボロなのか。
何で現時点では存在しないゴム製なのか。
何で全部右足用なのか。
あ、そもそも何で長靴しか釣れないのかがあったね。
私までそれが当然みたいに擦り込まれちゃってたよ。
生き物すら釣れないなんて恐るべし、マスター。
あ~あ、さすがに飽きてきちゃったな~。
いや、別に私が飽きっぽいわけじゃないよ? (注:大嘘)
だってもう2時間くらいこんな感じなんだもん。
釣りって釣れると面白いけど、釣れないとつまらないもん。
誰だって飽きるってば。
ほらほら、見てよ。
新入りのバイトなんか、暇すぎてスライムと戯れてるじゃん。
物理に強いスライムだけど、HP低いからバイトの毒に弱いのよね~。
何気に無双状態になってるわ。
え? ボケッと見てるだけの私よりマシ?
ノー、ノー、私はサボってるんじゃないの。
釣りに集中するマスターの護衛をしてるのよ~。
ほら、この辺ウィスプとか一杯いるし。
ん? ウィスプはノンアクティブモンスターのはず?
いやいや、念には念を「……最後の糸が切れた」あらら?
ボソッとした暗い声、マスターのテンション低っ!
「もういい、戻るぞ……」
どんよりした目で長靴の山を収納するマスター。
一応持ってくのね、ソレ。
売れるのかな?
ともあれ、釣りタイムは終了ね。
マスターには悪いけどホッとしちゃった~。
だって何か釣れたら、ねえ。
それマスターが調理して、最悪私も食べるんでしょ?
それだけはマジ勘弁だもん。
「おーい、バイト! 戻るぞ!」
〈シュー〉
マスターの呼びかけに答えて戻ってくるバイト。
え? ちょっと待って、アンタ何咥えてきてんの!?
そ、それは……。
「バイト、お前カエル捕まえたのか……」
〈シュシュ!〉
嫌アア嗚呼ああァぁ!!
し、新入り! アンタ自分が何したか理解してんの!?
自分の胃袋を悪魔に差し出す覚悟あるの!?
ハッ! 何、沼の中覗き込んでるのよ!
これ以上余計な事
ジャポン!
既にしてるー!?
ヒィィィ! 今度はタニシ!? でっかいタニシじゃん!
何なのよアンタ! 何で魚じゃないのよ! 何でゲテモノばっかりなのよ!
蛇だから? 蛇だからなの? 自分の好みで獲ってるの!?
うう、バイトの眼には一点の曇りもないわ。
コイツ純粋にマスターのためにやってるのね……。
でも、だからって……うん?
何か肝心なこと忘れてる気が……。
……
…………
そうよ! こいつ知らないんじゃない!
マスターが以前料理した時、バイトはまだいなかった。
マスターの作る料理の凄まじさを知らないんだわ!
な、なんて事……。
「よーし、もう十分だろ。戻って料理の練習だ」
〈シュー!〉
〈……〉
知らないって怖いわ。
恨むわよバイト。
まあ、アンタも直に後悔する事になるけどね……。
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遂に来てしまいました、この時が……。
あ~、もう! 正直夢も希望も感じない!
覚えてなさいよクソ蛇! その無表情な爬虫類面が絶望に歪む瞬間を見てやるわ!
まあ、隣で私も似た様な顔してるんだろうけど……。
「さて、前回は煮込みで失敗したわけだ。そこで今回はよりシンプルに焼きで行こうと思う」
え~、あの食材(カエル&タニシ)を焼くだけ~?
マスターはカエルとタニシを串に刺し、焚火の周りに刺した。
多分直接火に突っ込むと、一瞬で黒焦げだろうとか予想してるんだろうな~。
これならもしかすると……。
「う~む、焼け具合がさっぱり分からん」
あ、これヤバイ。
ダメなフラグが立ったわ。
「取り敢えず試食してみるか」
マスターはカエルを1本とタニシを2本、火から遠ざけた。
そう、計3本です。
当然のように私も数に入っちゃってるし……。
もう、いいわよ。
食べればいいんでしょ、食べれば。
前回の汚物よりはマシよ。
「では、実食」
パク×3
「ぐっ」
〈!〉
〈!?〉
まず、感じたのはグニャリとした気色悪い半生の食感。
次に感じるのは吐き気を催すような生臭さとドブの風味。
結論。無理。
しばらくお待ちください
「オゲッ、ペッ、ペッ」
〈~♪〉
マスターも私と同じくタニシを吐き出してる。
平然と生焼けのカエルを食しているのはバイトだ。
そうか、ゲテモノだろうと生だろうとコイツには関係ないんだった……。
悪食の蛇を羨ましく思う日が来るなんて、何て日なのよ……。
「くそう、まだ早かったか」
え? マスター、まだやるの?
何て無駄なバイタリティー。
マスターの根気をこんなに恨めしく感じるなんて……。
まあ、焚火の周りに串が残ってるしね。
覚悟を決めるしかないかな……。
「よし、今度は良さそうだな」
マスターは3つのタニシを火から遠ざけた。
そして、1つをバイトに食わせる。
バイトは平然と食べている。
思っちゃいけないんだろうけど、正直羨ましい。
「ちゃんと焼けてるか?」
〈シャシャッ!〉
勢い良く頷くバイト。
でも、正直あてにならない。
信じられるのは自分の直感のみ。
そして私の直感は危険信号を発している。
「じゃ、いただきます」
パク×2
先程とは違うプリプリした弾力のある食感。
コリコリとした歯触りも残っており、さっきのグニャッとした気色悪さは無い。
そして噛むほどに染み出すドブの香り。
結論、無理。
しばらくお待ちください
「……」
〈……〉
〈?〉
全てをリバースした私とマスターは無言。
バイトだけが不思議そうに見ている。
要するに、タニシって食材は焼くという調理じゃ食べられないみたいね~。
泥抜きとか色々手間をかければいいんだろうけど、マスターにそれは酷な注文だし。
煮込めば泥臭さは抜けるんだろうけど、マスターが煮込むと……。
「今回はこの辺にしておこう。バイト、これはお前が食ってくれ」
「シュ~♪」
残った焼きタニシを全てバイトに食わせるマスター。
バイトは嬉々として食べてるけど、普通なら拷問か罰ゲームよ、それ。
まあ、いいけど。
完全に残飯処理か廃物処理だけど、本人(蛇だけど)は喜んでるしね。
こうして第1次悪魔の飯テロは幕を下ろしたの。
周囲に被害を与えるモノホンのテロだったわ。
本来の飯テロって、もっとポジティブな意味だった気がするんだけど……。
ホント、これで最後になると良いんだけどな~。
この時、私は知らなかった。
第2次飯テロどころか製薬テロ、錬金テロといった無数の伝説が待ち受けている事に。
有〇のダレ〇クって凄いですよね。
田〇、キモくても君は勇者だ。




