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接敵

 翌日のセンター・アイン。

間近に迫った西大陸開放に備え、物資の買い込みに大賑わいだ。

ちなみに大ボス戦MVPの連中は、西大陸自体には大して興味が無いらしい。

ダイビングに夢中で既に海底洞窟を見つけたようだ。


 開放された沖には中央大陸周辺より強力なモンスターが出現する。

連中もかなり苦戦しているみたいだ。

強い弱い以前に、よくデカいサメとかと水中で戦う気になるものだ。

俺だって水中でサメは怖い。


-----------------------


「え~と、こっちだったかな……」


「あれ? でもここって……」


「おい……」


「しっかりしてくれよ……」


 自信満々に案内しておきながら迷いだすタクとマサ。

相手を知らないヒデと、そもそもセンター・アインに来たくなかったフィオ。

4人はセンター・アインの商店街をウロウロしていた。


 フィオ達はタクとマサの話していた商会に素材を売るのが目的である。

一方、消耗品の補充はリエ達が引き受けたので現在は別行動だった。

最もすでに買い物を終えて、待ち合わせ場所で待っているだろうが。

それくらいの時間はすでに過ぎている。


「おい、見つからないなら帰るぞ」


「う~ん、変だな……」


「何で無いんだ?」


「店が消えるかよ」


 普通なら消えない。

だが、普通じゃなければ消えるのだ。

例えば彼らを足止めするために。

そして


「あ、これはタクさんにマサさん。お久しぶりです」


「あ!」


「あんたは!」


 声をかけてきたのは以前の商人だった。

見覚えのない顔だがフィオはなぜか警戒心を掻き立てられた。


「実はあの店は仮店舗でして。解約して移動したんですよ」


「移動したのか」


「じゃ、俺らが間違ってたわけじゃないんだな」


 ボケたわけじゃないと解り、ホッとするタクとマサ。

4人は商店街の奥に案内されていく。

だが、フィオはやたらとキョロキョロ辺りを見回していた。


「どした?」


「……いや、やけに視線を感じないか?」


「いや。別に?」


「俺らは特に」


「じゃ、俺だけか?」


 確かにフィオに向けられる視線は多かった。

ある意味有名人なので不思議ではないのだが、それにしても多い。


「その槍じゃね?」


「ああ、パルチザンね」


「……そんなに珍しいか?」


「まあ、あんま見ないわな」


 パルチザンはハルバード程ではないが特殊な形状の槍だ。

棒の先に幅広の剣が付いているような形状で、槍というよりグレイブや薙刀に近い。

当然、穂先が重く通常の槍とはバランスが違う。

よって、普通の槍より使い辛いと認識されているのだ。

斬撃にも使えるので強力ではあるのだが使い手は少ない。


「確かに最初は使いにくかったっけな……」


「今じゃお前のトレードマークだけどな」


「着きましたよ」


 声をかけられ向き直る。

そこには鍛冶工房と一体化した巨大な施設が鎮座していた。

看板に書かれた名前は……。


「ここは私どもの商会の上役が経営する商会です」


 フィオは周囲を確認する。

5、6、……2ケタ以上の気配がする。

謀られたか。


「そろそろ教えてくれてもいいだろう?」


「?」


「どうした? フィオ?」


「ここに何かあるのか?」


「ああ、少し離れてくれ」


 商人が口を開くより早く、フィオにフワリと何かが被せられる。

それは蜘蛛の糸で編まれた網。

捕縛用のマジックアイテムだった。


 しかし、網が落ちる速度より速くフィオは伏せる。

さらにヌルリと網の下から抜け出して、網を落としてきた存在に接近する。

そして今ようやく着地した黒スーツの男の手に、自分の手を絡ませるとそのまま投げ飛ばした。

システムに引っ掛からない程度の護身術だ。


 スーツの男は即座に立ち上がり距離を取る。

そこに全く同じ見た目の男が数人合流した。


「ん? お前らNPCか?」


「は?」


「NPCが街中でプレイヤーを襲撃?」


 タク達も野次馬も混乱する。

通常のNPCはプレイヤーに対し、そういった敵対行動を取れない様に設定されているのだ。

訳が分からない。

唯一人フィオだけが叫んだ。


「さっさと出てこい! マッド野郎!」


「おう、そういきり立つなよ」


 店の扉が開きゾロゾロとプレイヤーが出て来る。

どいつもこいつもフィオには見覚えのある職人プレイヤーだった。

当然先頭に立つ返事をした男にも。


「久しぶりだなフィオ」


「どんな裏技使いやがったガノン」


 ついに2人は顔を合わせた。

βテスト以来の再会であった。


--------------------


 何時まで経っても兄たちが来ない。

リエ達4人は自分から探しに行くことにした。

目的地のおおよその位置は聞いていたので、そちらに向かう事になったのだが。


「? 何かあったみたいだよ」


「ホントだ。行ってみる?」


 奥の方から聞こえてくる喧噪。

人に流れに乗る様に4人も騒ぎの中心に向っていく。

そして、そこには


「あ!」


「いた!」


 一際大きい建物の前。

黒スーツの集団を従えたドワーフと兄が向かい合っていた。


「何アレ? マフィア?」


「ねえ、あの看板見てよ」


「えっと、『工房』って、え?」


「もしかして……」


 職人ギルド『工房』。

それはβテストにおいて魔王と同じく、他サーバーに恐れられた集団であった。

彼らが生み出す『兵器』はサーバー対抗戦において猛威を振るった。

拠点を落とすどころか近づく事すらできず、攻撃部隊は壊滅させられたのだから。


 だが、その彼らが実は同じサーバーのプレイヤーにも恐れられていたことは意外と知られていない。

そのぶっ飛んだ発想、フリーダムな行動、イカレた実験は巻き込まれたプレイヤーを恐怖のどん底に陥れてきた。

4人はフィオから話を聞き、そのことを知っていた。

故にこの状況をある程度は理解できた。


「お兄さん、だからここに来たがらなかったんだね」


「すごい勘の良さ……」


「あれ? じゃあ、何でこの状況?」


 最大限に警戒していたのならフィオはなぜここにいるのか?

その疑問の答えはすぐに出た。


「……ねえ、あの人」


「この前、採掘場で会った人だよね」


「!」


「そこまでやる!?」


 張られていたのだ。

フィオ自身ではなく周辺、すなわち自分達が。

無駄に手の込んだやり口に感心してしまう4人。


「って言うか、何でそこまでお兄さんに拘るのかな?」


「さあ、ってリエちゃん? どうかしたの?」


「あ、いや、その……」


 リエは彼らに兄の情報をペラペラ喋ってしまった事を思い出していた。

世間話のつもりだったが、アレは1種の諜報活動だったのだ。

話でしか聞いていなかった『工房』の恐ろしさに戦慄するリエ。


 同時に事がばれたら兄にお仕置きされる事は間違いない。

ネットにおけるリアルプライバシーに関しては、しつこいくらい注意されていたのだ。

あっさりゲロったことがバレたら……。


「Noooooooo……」


「え~と、リエ?」


「大丈夫?」


 兄の怒りの鉄槌に怯えるリエ。

だが、状況はそれを待ってはくれない。


「あ、決裂したみたい」


「ホントだ、デュエルするみたいだよ」


 話し声は全く聞こえてこないが、フィオとガノンの間にディスプレイが浮かんだのは確認できる。

そこには、『NPCを含む30人vsフィオ1人』というハンディキャップマッチが表示されていた。

しかし


「勝負になるの? アレ」


「さあ?」


 30人と言ってもNPCと職人プレイヤーである。

リアルバグプレイヤーのフィオに対抗できるのだろうか?

そもそも、フィオは1人と言ってもフードの中にはリーフがいる。

さらに呼び出される使い魔は下手な中ボスより強いのだ。


「あ!」


「出たよ、ネクロス……」


 フィオが呼び出したのはネクロス。

現在呼び出せる使い魔の中では、最も対人戦闘に向いている。

さらに


「あ、あれ?」


「ネクロスの姿が……」


「変わってる……」


 現れたネクロスは腰に刀を二振り携え、背中には大太刀を背負っていた。

身に纏う鉄製の鎧は日本の侍に近い形状に変化している。


ムクロ武士モノノフ


 それがランク2に成長したネクロスの新たなる姿であった。



ネクロス ニュー進化。

騎士から武士へチェンジしました。


同じ進化じゃ面白くないですからね。

あらゆる武器を使いこなす戦王と刀に全てを賭けた刀神。

好みは別れますね。

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