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海の冒険者

 プレイヤー達の武器を利用し猛反撃を開始したアスピドケロン。

そこに満身創痍の2番船が突撃していく。

無謀ではあるが他に手が無いことも事実だった。

振り回される鉄製のイカリを突破できるのは装甲で覆われた大型船のみ。

そして3隻の中でボスに一番近いのは2番船なのだ。


「応急修理完了!」


「前面、および側面の装甲追加完了!」


 搭乗員たちは全員がある程度船の製造、修理スキルを持っている。

それが彼らギルド『大航海時代』の方針だからだ。

彼らは陸ではなく海を冒険フィールドに選んだ海の男たちだった。

某海賊アニメは大好物、ゴブリンより先に魚と戦ったほどだ。


 水泳スキルを日々強化し、武器は銛やカットラス。

単独で沖に出現するサメ系モンスター『ロンリー・シャーク』を1人で倒せば一人前。

(単独で出現するが、群れを成す通常の『ファング・シャーク』より強い)

あまり出回らない水産物系素材収集の大手でもある。


 彼らの目標は海路の解放。

5つの大陸以外にも冒険できる小さな島は無数にある。

また、海底には沈没船や海底洞窟と言ったインスタントダンジョンがランダムに発生し、冒険心をくすぐる。

海のエリアボスを倒せば、それらも解放されるのだ。

ああ、素晴らしきかな海、カリブに眠る夢達。


 彼らはどこよりも早く船をそろえ、水戦特化の装備を整えた。

海路を切り開いた後も海の冒険には船は必要。

様々なタイプの船を製造し、全員が修理、操作のスキルを身に付けた。

後は大ボスに挑むだけだった。


 しかし、そんな彼らを悪夢が襲った。


 意気揚々と出航した大船団。

ギルドの総力を挙げた討伐戦。

向かうは東大陸。

立ちはだかるのは海竜『ラハブ』。


 負けるはずは無い。

皆がそう信じていた。

大型船5隻を要する大船団。

海賊王に憧れる100人近いメンバーの士気は高かった。

奴が現れるまでは。


 彼らは自分達が慢心していた事に気付いた。

否、気付かされた。

相手は海という広大なフィールドを守護するエリアボス。

数で押せば勝てるという相手ではなかったのだ。

ましてや一つのギルドで討伐しようなど無謀にも程があった。

全プレイヤーから選抜されたエース軍団で挑むべき敵。

それが海のエリアボスなのだ。


 彼らはあっさりと、完膚なきまでに敗北した。

大型船は全て、中型船も大半を失い、彼らの自信は打ち砕かれた。

残された小型船に乗り、なすすべも無く撤退する彼らをラハブは追撃しなかった。

文字通りの完敗だった。

だが、ギルドの士気は落ちなかった。

むしろ、ますます燃え上がった。

必ず我々の手で討つ、と。


 映画『白鯨』のエイハブ船長は白鯨討伐に人生を賭けた。

だが彼らにとって『モビィ・ディック』は通過点に過ぎない。

いや、ラハブだって通過点だ。

彼らの目標はその後に待っているのだから。


 失った船の建造は造船ラッシュによる材料不足もあり、やや時間がかかった。

しかし、何とか新型の大型船を造り上げた。

このころになると4体の海のボスの情報も揃ってくる。

ラハブは4体中最強のボスだったのだ。


 運が悪かったとは思わない。

むしろ早々に奴の行動パターンを知ることができたのだ。

奴を目標に作戦を考え、他のボスで実験する。

そしてリベンジマッチには必ず勝つ。

借りは返す。


 この一戦は彼らにとって大きな意味を持つ。

まずは海戦に『大航海時代』ありと皆に知らしめる。

さらに大敗北によって揺らいだ自信を取り戻す。

そして、やがて来るラハブとの戦いに向けた実戦訓練だ。


「例のブツは?」


「満載した。出費は痛いが効果があれば安いもんだ」


 ラハブと戦い、その行動を分析してたどり着いた攻略法。

それはフィオがたどり着いたものと同じだった。

即ち船爆弾。

船に巻き付いてくるという習性を利用したトラップだ。

コストは膨大だがこれ以上ない兵器となるだろう。


 ただし、現状ではそれを実行するだけの技術力がない。

もっと製造スキルが上昇し、様々な派生スキルが解禁されなければ案はあっても実行できない。

だからこの2番船には現在搭載可能で、効果が期待できそうな『罠』を仕込んだ。

使わないで済めばそれはそれだったが、すでに船は沈没寸前だ。

使わない方がもったいない。


「行くか」


「ああ」


「俺達が勝利をもぎ取るんだ」


 2番船は船首をボスに向け、大渦の中心に向って突撃を開始した。


----------------


 船を破壊され、大渦に呑まれてリタイアしたプレイヤーは20人ほど。

迂闊に近寄れば彼らの二の舞である。

フィオ達も近づく事が出来ず、大型2番船の突撃を見守る事しかできない。


「行けると思うか?」


「わからん。でも装甲がある大型船以外じゃ無理だからなぁ……」


「でも、あの船ボロボロですよ? 耐えられるんでしょうか」


 フィオもタクも確信は持てない。

飛行可能なフェアリーであるカヨは、いざという時は飛び出して救助に向かうつもりのようだ。

心配そうに2番船を見つめている。

ヒデとタクは双子と交代して漕ぎ手に着き、リエは相変わらずレーダー担当だ。

レーダーは少し調整して振り回されるイカリも映る様になっている。


「もうすぐ攻撃範囲に入るよ!」


「いよいよか……」


「攻撃範囲に侵入! イカリ接触まで3,2,1……」


 ガオォォン!!


 凄まじい衝撃音と共に2番船が傾いた。


-----------------


「被害状況は!?」


「許容範囲内!」


「イカリは装甲に食い込みました!」


「浸水は軽微!」


「2撃目来ます!」


 ガゴォン!!


 2個目のイカリが撃ち込まれ、船体が揺れる。

だが、致命傷は受けない。

巧みな操船によって装甲の厚い船首部分でイカリを受けているからだ。

イカリは次々に打ち込まれるが、2番船は沈むことなく耐えきった。

そして今度はアスピドケロンにとって不利な事が起きた。


 すべてのイカリが2番船に食い込んだ結果、2番船が巨大な重りとなったのだ。

回転速度が見る見る落ち、鎖を巻き取る様に2番船がボスに引き寄せられていく。

しかし、首を引っ込めているボスには何が起きているのか解らない。

2番船はもう自力で進むことも難しいが、ボスが引っ張ってくれているので問題は無い。

そしてついに2番船がボスに接触した。


 さすがの装甲張りの大型船もこれには耐えきれず、船体は崩壊し始めた。

ボスも衝撃でさらに回転速度を落とした。

大航海時代のメンバーたちは海へと脱出し、鍛え上げた水泳スキルで上陸を目指す。

回転が弱まり渦潮が消えかけていなければ、彼らもリタイヤしていただろう。


 その時、2番船の内部から大量の樽が転がり出てきた。

海に浮かんだ樽は、引き寄せられるようにボスに向って流れていく。

ゆっくりと回転する甲羅の頭の穴に。


 アスピドケロンは四肢の穴から大量の水を放出している。

では、その水はどこから取り込んでいるのか?

それは口以外あり得ない。

ボスは常に大量の水を飲み込み続けているのだ。

当然、周囲に漂う漂流物も一緒に。


 頭部の穴に樽が入り込む。

その奥の口に樽が流れ込む。

狭い口内で樽が破損し、中身が流れ出す。


 大量の香辛料が。




〈ピギャァァァァァァァァ!?!?〉


 自身を襲った未知の衝撃に回転を止めてしまうアスピドケロン。

首を真上に伸ばして大口を開け、真っ赤になった舌をだらりとはみ出させる。

その眼が涙ぐんで見えるのは気のせいだろうか?



 大海原にアスピドケロンの絶叫が響き渡り


 大渦は完全に消滅した。


以前ラハブに敗れた皆さんが再登場。


激辛攻撃はバッドステータス攻撃じゃないので効きました。

毒だったら効いてないです。


同じ手もクラーケンには効かないかな?

イカって辛さを感じるのか知らないし……。

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