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情報サイトの噂

 それは何時の頃からか解らないが、噂として広がっていた。

情報サイトでもよく話題となっていた。

ただ、具体的な話や信憑性のある話はほとんど無かった。


 これにはいくつかの理由がある。

まずは当事者たちが口を開く事が無く、2次情報、3次情報ばかりであった事。

もう1つは正確な情報がバラバラに散らばっていたという事。


 よって、フィオが彼らの暗躍にギリギリまで気付かなかったのは鈍かった訳ではないのだ。

むしろ、動物じみた直感で接触を回避し続けていたのは驚嘆に値する。

しかし、それも永遠には続かない。

包囲網は、魔の手は着実に彼に迫っていた。



・とあるNPCについての情報サイト


〈βテスターの人に聞いたんだけど、NPCって製品版になってからグンと高性能化したらしいな〉


〈ああ、RWOのNPC他のゲームと比べると雲泥の差だもんな〉


〈あ、私βテスター。あの頃のNPCは何て言うかホントに「NPC」って感じだったんだよね~〉


〈??? つまり?〉


〈今のNPCはビックリするくらい人間っぽいってことだろ〉


〈関係者筋の話なんだけど実はβテストにはそっち方面の目的もあったらしいぞ〉


〈?〉


〈???〉


〈そっちってNPC?〉


〈そう。バグやシステムの調整だけじゃなくNPCのAIを成長させてたらしい〉


〈ああ、聞いたことあるな。あるプレイヤーが育てた超ハイレベルなAIをベースに回収したNPCの人格データをフィードバックさせたとかなんとか……〉


〈ボスモンスターも同じように高知能化したんだっけ?〉


〈よく解らん〉


〈別にどうでもいい〉


〈本題は?〉


〈NPCにも戦えるキャラがいる〉


〈それは知ってる〉


〈クエストとかでよくいるわね〉


〈彼らを鍛えたり雇ったりできるらしい〉


〈!〉


〈!!〉


〈マジ?〉


〈従業員とか作業員じゃなくて?〉


〈徐々に任せられる範囲が広がってるって話を聞いたことが……〉


〈成長途中ってことか〉


〈じゃあ、いつかあのNPCの白猫ちゃんを……〉


〈通報〉


〈ヤバい人がいます〉


〈変態〉


〈それはそうと〉


〈無視か〉


〈一刀両断〉


〈NPCにはオレンジとかレッドが無い訳だよな? それって問題有るんじゃね?〉


〈今後NPCが犯罪するようになるってか?〉


〈喧嘩とかは見るね〉


〈運営は犯罪プレイに厳しいから無いと思う〉


〈NPCにも導入されるんじゃ?〉


〈運営、犯罪プレイ禁止はしてないけどな〉


〈やりたい奴は、やって痛い目見ろってことだろ〉


〈話は戻るが、雇ったNPCに犯罪させる奴が出るんじゃないかってこと〉


〈なる〉


〈自分はクリーンってか〉


〈NPCが断ると思うが〉


〈やっぱそうかな〉


〈考えすぎじゃないかな〉


 彼らは実は的確に事態を捕らえていた。

運営はNPCを日々アップデートしており、彼らの成長に合わせて役割を広げている。

しかし、バランスやさじ加減は中々難しく一律に最適化することは不可能であった。

つまり、今の時点なら探せば抜け道があったのだ。


 具体的にはNPC達のAIの元となったAI。

彼らは非常に優秀であったが、一つの問題を抱えていた。

それは彼らが人間のNPCではなかったという事だ。


 主人に絶対の忠誠をつくす戦闘AI。

彼らは倫理観より主人の意思を優先した。

もちろんNPCに搭載される際には調整が行われたが、どうしても影響は残る。

結果、雇い主の命令に絶対服従という危険なNPCが現れる可能性が出てきたのだ。


 運営は全力を挙げてプロテクトをかけているが、一朝一夕で終わる作業ではない。

その隙を突くように、ある男が非合法活動を行うNPC部隊を編成してしまう事になる。



・とあるRWOの未確認情報サイト


〈やっぱ、教えてくれなかった〉


〈守秘義務ってやつ?〉


〈いや、なんか怖がってた〉


〈じゃ、マジなのかな〉


〈不明〉


〈あ、僕ブツは見た事ある。質も良いし面白い機能が付いてた〉


〈お、証拠?〉


〈依頼で手に入れたとしか〉


〈そか〉


〈ホントにあるのかね『謎の秘密結社』〉


〈拉致現場の目撃証言あり〉


〈町中で拉致? できんの?〉


〈犯罪になるんじゃ?〉


〈よく解らないな〉


〈調査続行〉


 一種の都市伝説と言えるのだろうか。

RWOではある噂が流れていた。


 曰く、人体実験もいとわない謎の組織が存在する。

おいしい依頼に騙されてノコノコ行ってみると、依頼者が彼らだった。

散々ひどい目に会ったが、代わりに高性能なアイテムをくれた。

口止めをされる訳ではないが、喋るとまた連行されそうで怖いので誰も喋らない。

と、いうものだ。


 不思議なのは実力があるプレイヤー達まで、抵抗できずに拉致されるという点だ。

なぜか組織の手の者達は犯罪コードが甘いというのだ。

特に町中でその傾向が強いという。

逃走者を簀巻きにして運んで行く手下と高笑いするリーダー。

その光景を見た者は某ライダーや戦隊を思い浮かべてしまうという。

そして


・RWO某所 某ギルド実験場


「マスター、薬品班から報告が」


「おう。どうだった?」


「回復量アップ1、毒2、麻痺1です」


「よし、引き続き『試供品』を配って回れ。データ収集は怠るな」


「了解です」


 試作ポーションを試供品としてタダでばら撒く。

人体実験スレスレの行為だが、明確に違反というわけではない。

使用を強要していないからだ。



「ボス、『エージェント』を貸して欲しいとの要請が」


「相手は?」


「誤魔化していましたが犯罪ギルドのようです」


「舐めやがって……、そいつらの情報をサイトにアップしてやれ!」


「了解」


 エージェントとは特殊訓練を積ませて鍛えたNPC部隊である。

虎の子の実働部隊を貸せるはずもない。

周囲がどう思おうと、彼らは自分達をまっとうな職人だと考えていた。



「それより新しい『協力者』はどうなんだ?」


「難しいですね。情報が漏れて美味しい依頼には警戒が持たれる様になったみたいです」


「ふむう……お前やれるか?」


「新作のインナーだけで水に飛び込んで、ひたすら水中モンスターにいたぶられろと?」


「嫌か?」


「嫌です」


「じゃあ、人に頼むしかないな」


 結局そこに落ち着く訳だった。

しかし、こちらはすでに『注意』、『厳重注意』を運営から受けてツーアウト状態である。

次が『警告』、最後が『アカウント停止』なので実質あと一回でアウトだ。


「あいつはまだ見つからんのか?」


「目立つ人ですからね。存在は確認できるんです。でも……」


「接触はできないか。勘の良い奴だな」


「今さらですよ」


「顔を合わせちまえば丸めこめそうなんだがな……」



 接触の時は近付いていた。


移動処理完了!


原本は削除していきます。


一気にやるとよくないらしいので徐々に。

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