フードのサモナー 前
「ここがゴブリンの巣か」
バイトの熱探知を活用し、迅速に討伐を進めていく。
本来なら松明などが必要だが、俺は暗視があるしバイトの熱探知も暗闇は関係ない。
「うーん、先客かねぇ……」
思ったほどゴブリンが現れない。
おそらく倒された直後なのだろう。
まあ、ボスの『ゴブリンキング』を倒して戻ればそれなりの数になっているだろう。
と、バイトの熱探知にプレイヤーが引っ掛かる。
緑の光点が4つだ。
5つの光点に囲まれている。
しかしこれは……
「2つは赤、3つはオレンジ?」
赤は敵性ユニットを表す。
ではオレンジは?
「……なるほど。そういうことか」
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「そこを通してください!」
「そうはいかないね。通行料を払ってもらわないと」
「ふざけるな!」
「別に殺して奪ってもいいんだぜ?」
犯罪プレイヤーに挟まれた4人は職人プレイヤーだった。
男2人、女2人ですでに傷を負っている。
彼らの様な職人プレイヤーも、資金集めと素材集めのためにフィールドに出る。
ゴブリンの群れを倒しホッとした瞬間、突然現れた5人の男に囲まれてしまったのだ。
彼らも話には聞いていた。
特殊種族になるためと言って、あるいは楽しいからとプレイヤーを襲う者達がいると。
カーソルがオレンジやレッドになった彼らは町中では目立つ。
だから、フィールドやダンジョンの安全地帯をホーム代わりにして、物資は強奪することで手に入れる。
蘇生可能な1分間程の猶予は同時に強奪のチャンスなのだ。
アイテムボックスの中のものは奪えない。
すぐ使えるように出してある薬や食糧、武器防具が狙いだろう。
ただでさえ数で負けている上に、こちらは消耗している。
そもそも自分達は戦闘は不得手だ。
絶望的な雰囲気が漂った時、入り口側から1人のプレイヤーが現れた。
「話には聞いていたけど、ホントにやってるんだな」
黒いコートにフードを被り、槍を持った男は感心したように言った。
松明も何も持っていない。
猫獣人? フードの所為で種族も分からない。
「なんだてめえは!」
「邪魔しないでもらえるかな」
犯罪プレイヤー達が騒ぐが、彼は気にした様子もない。
こちらに歩み寄ると
「助けた方がいい?」
と聞いてきた。
「お願いします!」
「協力して!」
彼が協力してくれれば数的には互角になる。
そう思っての言葉だったが
「じゃあ、真ん中に集まって動かないで」
彼はそういうと前方を塞ぐ3人のオレンジプレイヤーと向き合った。
残りの二人をどうするのだ。
そう問おうとした時、彼はつぶやいた。
「コール ネクロス」
次の瞬間、彼の影から湾刀と盾を持った骸骨が現れた。
「なっ!」
誰もが絶句する中、彼は静かに命じた
「ネクロス、後ろの二人を倒せ」