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ギャンブラー達の戦場

欲望渦巻く町『サウス・セカンド』。

その町は訪れた者を選別する。

すなわち勝者と敗者に。


 そして今1人の敗者が勝者の前に跪いていた。

求める物は勝者の持つ栄光の欠片だ。

勝者の名はフィオ、敗者の名はリエ。


「お願いします。お兄様」


「お前にプライドは無いのか……」


「ムキー! 良いじゃん! 1000枚、いや500枚でいいから! 逆転したら返すから!」


「リエちゃん……」


「あんな無茶な賭け方するから……」


 そう。

この街にはカジノがあるのだ。

そしてリエはハイリスク・ハイリターンなルーレットでスッてしまったのだ。


 そんな彼女の目に飛び込んできたのは、スロットゲームで馬鹿勝ちする兄の姿。

リエは即座に土下座した。

彼女の友人達は呆れていた。


 カジノの景品は有効というより面白い物が多い。

例えば、見た目の種族を変える変装セットや仲間モンスター用のオシャレアイテムなどだ。

だが、別の町のカジノとコインは共通なので溜めておいて損は無い。

後半のカジノにはレアアイテムが多いとのふれこみだ。


「はあ、1000枚だな。大事に使えよ」


「おお! サンキュー兄貴!」


 土下座するリエは非常に目立つ。

周囲の目が気になったフィオは1000枚のコインを与えた。

相変わらず妹には甘い兄である。


 すでに5万枚ものコインを稼いだフィオ。

だが、これは運ではなく技術によるものだった。

カジノのゲームは全てランダムで、頼りになるのはリアルラックだ。

しかし、スロットだけは違った。


 このスロットは自分でボタンを押して止めるタイプだ。

そして常人離れした知覚力を持つフィオには、回転する絵柄を読み取る事ができた。

後は少し慣らせば負け無しというわけだ。


--------------------


 友人たちの間にも勝者と敗者は生まれる。

勝者はフィオとマサ、敗者はヒデとタクだった。


「畜生……。何で転倒するんだ……ゴクゴク」


「モグモグ、競馬ねえ。リアルじゃやったこと無いな」


「プハッ。5番さえ、5番さえ粘れば……」


「ムグ。万馬券なんて、そう出るかよ」


 フィオはスロットでボロ勝ち。

マサはポーカーでやや勝ち。

ヒデは競馬で万馬券を狙って負け。 

タクは勝っていたのに、最後の勝負で全額賭けた馬が転倒してスッた。


 浴びるように敗北の酒を飲む敗者。

勝利の美酒ならぬ、勝利の飯を食う勝者。

財布は共通なのだが、勝負とはそういう問題ではないのだ。


「おい、飲み過ぎるなよ」


「わかってるって~」


 フラフラとデザートコーナーに向かう酔っ払い2名。

バイキングなので、無茶な取り方をしないか心配になるフィオとマサ。


「……見てくるか?」


「そうだな……」


 デザートコーナーを探すがターゲットは見当たらない。

不安になってくる2人。


「どこ行ったんだ? あいつら」


「こっちは……お菓子コーナーか」


「あ! いたぞ!」


 タクとヒデは騒ぎながら円筒形の機械の前に立っていた。

それは祭の定番、綿飴マシーンだった。

そして、その手にはビールのジョッキが。

嫌な予感が爆発する。


「おい! 待て、バ……」


ザラザラザラ


 制止は間に合わず、バカとアホはジョッキ一杯の砂糖をマシーンに投入した。

ちなみに綿飴はスプーン一杯の砂糖でもかなりの量になる。


バフン!


「「アチャー!」」


 熱々の綿飴を顔に浴び、のたうち回るバカとアホ。

しかし、フィオ達の視線はマシーンに注がれていた。

円筒形の容器を埋め尽くす綿飴。

凄まじい光景だった。


「これ、どうするよ……」


「食うしかないだろ……」


「誰が?」


 2人の視線が、顔に綿飴を張りつかせたまま酔いつぶれたヒデとタクに注がれる。

罰ゲームでパイをぶつけられたように綿飴が付いていて、顔が見えない。

まあ、体の大きい方がタクだとかろうじて解るが。

フィオはまずヒデを突いてみる。


「おい、起きろ」


「ふが?」


「この指、何本に見える?」


「ボン? ウイスキーボンボン……」


 だめだ、こりゃ。

完全に壊れてやがる。


「おい、タク」


「んあ?」


「石の上にも?」


「千年」


 おしい、3年だ。

一文字違いだが、寿命が足りんぞ。

骨になっちまう。


「じゃあ、泣きっ面に?」


「アワビ」


 ……こっちもだめか。

さて、どうするか。

要は、この綿飴さえどうにかできれば良いんだよな。

ん? そう考えると……。


「なあ、こいつらがどういう状態かなんて、どうでもよくないか?」


「そういやそうだ。責任は取ってもらおうぜ」


「ああ、そうだな」


 数分後、4人は店を後にした。

とはいえ、ヒデとタクはフィオとマサに引きずられてだったが。

そして、引きずられる2人は白目をむき、口から白い何かをはみ出させていた。

口からはみ出ていたのは綿飴か魂か。


戦場とか言っておいて、シリアス感の欠片も無いですね。

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