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聖魔の下僕

 ランクアップして【使い魔】のスキルを覚えたフィオは、早速3体と契約した。

相手は戦闘要員のネクロス、魔法要員のフェイ、騎獣要員のハウルだ。

彼らはランクとSTこそ下がっているが、成長したAIは健在だ。

むしろランクが下がったことで、早期に契約できたわけだが。


「ふむ、スネークマン30体の討伐ね」


 使い魔を得たフィオは早速単独行動に走っていた。

そして今、冒険者ギルドの昇進試験に挑もうとしていた。

βテスト時はEXだったが、今回はランクEEからDへの昇進だ。


「30と言わず狩れるだけ狩ってやろうじゃないか」


 スネークマンはブロンズの装備品をドロップするので、序盤では金になる敵だ。

素材の蛇皮も結構優秀な材料になる。

ただ、武器持ちで集団戦を得意とするので初心者には強敵だ。

体格もSTもゴブリンとは比較にならない。


「お、そうだ。せっかくだし競争しよう。コール ネクロス」


 しかし、フィオにとってはゴブリンと大差なかったりする。

もちろんネクロスにとっても。


-------------------


 スネークマンの住処の森を平然と歩くスケルトン。

ネクロスである。

右手には鉄製の長剣、左手には鉄製の盾を装備している。

そこらのプレイヤーよりも良い装備である。


 現れるスネークマンは、なすすべもなく斬殺されていく。

討伐数は27体。

主の34体に少し負けている。

まあ、主はリーフの探知によってすぐに敵を発見できるので、当然と言えば当然なのだが。


 ふと、ネクロスは立ち止まる。

戦闘音が聞こえたのだ。

しかし、どうもプレイヤーの声が切羽詰まっているようだった。

少し考え、ネクロスは様子を見に行く事にした。


--------------------


 ネクロスが聞きつけた声の主は4人の女性プレイヤーだった。

装備はブロンズ製で、ちょうど戦闘になれてきたころだった。

しかし、慣れは時として油断を招く。

森の奥に進み過ぎてしまったのだ。

彼女達は今、5体のスネークマンに囲まれ苦戦を強いられていた。


 ゴブリンやコボルトなら10体でも相手に出来る。

オークやスネークマンでも、2体くらいならどうとでも出来る。

しかし今回は運が悪かった。

現れたスネークマンは5体。

しかもパーティだった。


 大剣を持った『ソルジャー』、大盾と斧を持った『ウォーリア』、槍を持った『ランサー』、弓を持った『アーチャー』。

そして最も厄介なのは、指揮能力を持つ『リーダー』の存在だった。

森の奥に入らなければ出ないはずのリーダーの存在は、戦況を一気に不利にしてしまった。


「くっ、なんとか耐えて! 隙を見て引くわよ!」


「うんっ!」


「そうは言っても……」


「厳しいね……」


 4人は前衛3の後衛1という編成だ。

しかし、スネークマンは1人に1体が付き、残ったアーチャーが援護をしている。

後衛の回復役は戦闘力が低いので、逃げるので精いっぱいだ。

ジリジリと追い込まれ、遂にバランスが崩れる。


「あっ!」


「危ない!」


 足を取られて転倒した前衛に、ソルジャーの大剣が襲いかかった。

何とか片手剣で防ぐが、グイグイと押し込まれる。

そしてアーチャーも彼女の頭部に狙いを定める。

そしてついに矢が放たれる


ザンッ


〈ギェ?〉


「あ?」


「え?」


 寸前にアーチャーの首が刎ねられた。

訳が判らぬままアーチャーは倒れる。

突然の出来事に全員の視線が集中する。


「あれって……」


「スケルトン?」


 そこに立っていたのは1体のスケルトンだった。

装備は鉄製、彼女たちよりも高品質だ。

だが、それよりもその場の全員を硬直させたのは、スケルトンの持つ雰囲気だ。

まるで歴戦の戦士の様な、武を極めた武人の様な迫力。


 プレッシャーに呑まれる彼女達を無視して、スネークマンがターゲットをスケルトンに移す。

よく見ればスケルトンのカーソルはグリーン、味方だ。

仲間を倒され一気にヘイトが上昇したのだろう。

まずソルジャーがスケルトンに大剣を振り下ろす。


ギャリッ


ザン


 スケルトンは盾で斬撃を受け流し、すれ違いざまに首を刎ねた。

一切の淀みの無い、流れるような動き。

受け流しはかなり高度な技術だが、苦も無くやって見せた。


 そのまま、ウォーリアに向かって疾走するスケルトン。

ウォーリアは盾を構えるが、何とスケルトンは跳躍した。

そして盾を踏み台にさらに跳躍し、背後を取ると無防備な首を刎ね飛ばした。


 リーダーが雄たけびを上げてスケルトンに斬りかかる。

剣が振り上げられ、渾身の一撃が振り下ろされる。


ズン


 しかし、その前に雷光の様なスケルトンの突きがリーダーの首を貫いた。

威力より速度を重視した一撃だが、正確に急所をとらえればその威力は絶大だ。

リーダーもあっさり力尽きる。


 4人は戦慄する。

あの一瞬で突きによる攻撃を選んだ判断力は、ベテランプレイヤー顔負けだ。

もはや戦いの結果は見えている。


 最後のランサーに、スケルトンはシールドを投げつけた。

意表を突かれたランサーは、顔面にシールドを食らってしまう。

次の瞬間ランサーの首は宙を舞った。




 困惑する4人の前にスケルトンが歩み寄る。

そして周囲をキョロキョロと見渡し、茂みを指差した。

恐る恐る4人が茂みを覗くと、薬草が生えていた。

振り返るとスケルトンはすでに去っていく所だった。


「なんだったんだろ。あいつ……」


「助けに来てくれたって事?」


「馬鹿みたいに強いスケルトン? どっかで聞いた様な……」


 その正体は、町に戻るとあっさりと判明する事になる。


----------------


 ネクロスが森の入口に戻ると、すでに主人が待っていた。


「よ、ご苦労さん」


〈キュイ〉


 討伐数を報告しようとするが、


「ああ、考えてみればリーフのいる俺の方が有利だよな。悪い悪い。」


 と、謝罪されてしまった。


「ま、これでめでたくランクアップだな」


 上機嫌の主人の後ろに付き従うネクロス。

その姿はまさしく騎士のごとくだった。


サイドストーリーを読んだ後だと感慨深く感じますね。

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