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悪魔クオリティ

 序盤は宿代も結構バカにならない。

薬は高いので休憩する事で回復するのだが、宿屋などの休憩エリアは回復が速いのだ。

当然、早く宿をとらないと安い所はどんどん埋まり、出費が大きくなってしまう。

その点、ホームエリアを持つ高ランクβテスターは有利と言える。


 妹達は買い物中で、俺達は休憩中だ。

個人の技量が高いので、あっという間のトップクラス到達だ。

最初の出遅れなど有って無い様なモノだ。


 リエはあのハイテンションが落ち着くと、しばらく沈んでいた。

あの芸術屋敷の評価が低かったせいだろう。

フォローしてやりたいが、フォローできない出来だったからな。


 俺は『槍棒術』を覚えるためにロッドも使用している。

タクは戦斧と、薙刀の様な武器グレイブと、大鎌のサイズを使っている。

何でも、その3つを合わせた『ハーケン』という武器があるという噂を聞いたらしい。

いつもは大剣を使っているヒデは今、刀を使っている。

刀と大剣で『大太刀』になるらしい。



「しかし、マサも飽きないな」


「まあ、気持ちは解らんでもないけどな」


 職人のマサはガラスケースに貼りついている。

まるで、トランペットに憧れる子供の様だ。

ケースの中身は竜槍杖。

マサは、少しでも使われた技術を取り入れようとしているのだ。

参考書を眺める学生みたいなもんだ。


 竜槍杖はβテストにおいて、最強の武器だった。

製品版では上があるだろうが、それでも決して弱くはない筈だ。

第3サーバーの技術の結晶だからな。

早く使えるようになりたいものだ。



「そういや、女性陣は遅いな」


「買い食いでもしてるんだろ」


「俺達はどうする?」


「作るか?」


 う、その話題はやめてくれ。

嫌な記憶がよみがえる。


「言っておくが俺は無理だぞ。全員食中毒になる」


「悪魔だからか。しかも試したな?」


 うむ、良い機会だ。

話しておこうか。

当時の俺の絶望を。


-----------------------


 βテスト開始直後。

まだ俺は隠れ里から脱出していなかった。

悪魔の能力を調べるために、俺はあらゆるスキルを試していた。

まずは調合。


「薬草に蒸留水。これで回復薬が作れるはずだよな」


 乳鉢でゴリゴリと擦り潰す。

透明の水は徐々に薬草の緑に染まっていく。

ここまでは良かった。


「んん?」


 色がどす黒くなっていく。

しかも、ネチャネチャとした感触に……。

匂いを嗅いでみると。


「おぐ!?」


 大学の廃棄物置き場に漂っている匂いに近い刺激臭。

断じて薬の匂いではない。

忌むべきヘドロⅩが誕生した瞬間だった。


----------------


「それって、使ってみたのか?」


「ああ。敵にな。悲惨だったぞ」


「見たい様な見たくないような……」


 何度やっても生成されるヘドロ。

俺は調合を切り捨てることを決めた。

そして、次にチャレンジしたのは料理だった。


-----------------


「材料はこんなもんか」


 敵のドロップや採取でも食材は出る。

食材自体も高級食材以外は安い。

適当に食材を集めた俺は、早速調理を開始した。


 宿屋のキッチンを借りて火をおこす。

まずは単純な焼肉から行くか。

串に刺した肉を火にかざす。


〈『黒焦げ肉』を手に入れた〉


 ……あの、火にかざした瞬間なんですけど。

いきなり黒焦げ肉!?

某ハンティングゲームもびっくりだよ!

次はフライパンを使ってみたが、結果は同じだった。

何これ? 呪い?



 気を取り直して、次は汁物だ。

鍋に水を張って、切った食材と調味料を入れる。

牛乳も入れたシチュー風だ。

アパート暮らしの俺は料理だってやってるんだよ。

さあ、点火。


〈『腐ったシチュー』を手に入れた〉


「ええええええ!!?」


------------------


「火にかけた瞬間腐ったのか!?」


「いや、さすがにおかしいだろ!?」


「何とでも言え。全て事実だ」


 他にも鍛冶をすれば皮や爪まで『クズ鉄』になった。

ちなみにクズ鉄の性能は石以下だ。

素材がもったいない……。


 錬金をすればⅩの親戚のZが爆誕した。

何で鉱石が液体になるんだよ……。

金属性廃液と考えると、体どころか環境に悪そうだ。


「まあ、そういった訳で俺はそっち方面は切り捨てたわけだ」


「成る程なあ……」


「万能とは行かないもんだな」



 あれこれ話している内に、HPもMPも満タンになっていた。

よし、じゃあ行くか。


「おーい、マサ。行くぞー」


 夢見る子供を正気に戻し、俺達はホームエリアを出た。

飯は大人しく店で食おう。

少なくとも俺は料理をしちゃいけない。

食材がもったいない。

本編では飛ばした悪魔の職人技。


もはや呪いの域に達しています。

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