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足りないモノ

「解る? 兄貴! 足りないのよ!」


「はあ……」


「えっと……」


 熱弁を振るうmy妹。

時間はさかのぼる。


---------------------


 正式サービス開始直後、俺は友人や妹たちと合流した。

βテストの時は1人で行動していたが、気心の知れた連中と一緒というのも良い物だ。

皆の種族はβテストの時と同じで、悪魔な俺はまたしても吊るし上げを食らった。

今度は面と向かってなので、ガラスのハートにヒビが入りそうだった。


 それはさておき、全員がボーナスを貰っており、何と初期から鉄の武器を持っていた。

俺は凄い物を貰ったが、今はまだ使えないので原始人の石器みたいな槍だ。

貰ったボーナスについて話していると、ホームエリアは結構上位の景品だったらしいという事が判った。


 そして妹に強引にパーティを組まされ、ホームエリアを占領されることになったわけだ。

女は怖いな……。

いや、リエが強引なだけか。


 今までは個人で使っていたので最低限の設備しかなく、後は大自然だったホームエリア。

13体のモンスターがうろついているが、ある意味要塞より安全な魔王城だった。

フェイやネクロスなどは初期の種族に戻ってしまったが、成長したAIはそのままだ。

カリスなど、初期でもランク4の水晶竜だし。


 共同所有になったことで、エリアは人数に合わせて広がった。

俺は早速施設を拡張し始めた(一応リーダーは俺だし)。

マサの為の工房も作ったし、人数分の部屋も作った。

鍛練場も広いし、うむ、結構いい出来だ。


 実は俺は美術や工作は得意な方だ。

種族ペナルティでズタボロだったが、職人も向いているはずだ。

でもまあ、その辺はマサに任せよう。

マサはボーナスのちょっと性能の良い工具を設置し始めている。


 そして、ホームが大体完成した所で妹が何故かヒートアップしたのだ。


-------------------


「ここはどこ?」


「ホームだろ」


「兄貴は何?」


「悪魔だけど」


 何が言いたいんだ?

ていうか、大丈夫か? こいつ……。

皆、引いてるんだが、リエは構わずかっ飛ばす。


「兄貴は(元)魔王! なら、ここは魔王城!」


「その心は?」



「足りないのは……威厳よ!」



「「「「……」」」」


「リエちゃん……」


「昨日、興奮しすぎて眠れなかったのかな……」


「あははは……」


「何よ、このシンプルな建物!」


 良いじゃないか、機能的で。

内部も解りやすく、使いやすい。

お客様に見せても好評価が貰えるはずだ。


「もっとこう……禍々しい感じじゃないと!」


「お前、何を期待しているんだよ」


 人が苦労して作ったホームにケチを付けやがって。

そこまで言うなら……。


「ふむ、なら自分でやってみるか?」


「いいの? やる!」


 建物にすっ飛んで行く妹。

それを見送った俺達は、庭の制作に取り掛かった。

日本風にするか、洋風にするか。

いや、もっと自然にって案もあるな……。


---------------------


 暇だ……。

訓練場で友人たちとデュエルをする。

装備が圧倒的に負けているので、正直キツイ。


 そして交流。

リーフやフェイ、ハウルやリンクスは妹の友人たちに大人気だ。

とはいえ、さすがに飽きる。


「……初日って普通、もっとモンスター相手にスキルアップに勤しまない?」


「リエを無視すると後が怖いんだよ」


「兄はつらいねえ……」



バン!


「出来たわ!」


 訓練場のドアを蹴り開けて入ってきたリエ。

視線が集中すると、傲然と胸をそらした。

自信作の様だな。


「じゃ、行ってみようか」


 そして、俺達はホームを見に行った。


-----------------------


 俺達の目の前には、残酷というか何というか、厳しい現実が待っていた。


 そういえば、妹は美術の成績が良くなかった。

いわゆる『画伯』と呼ばれるタイプだ。


 かつて修学旅行のイベントで、焼き物を作ってきた事があった。

丼、大皿、湯呑が全部同じ形だったのには驚愕した。


 そして目の前の建物は……。


 俺は無言でデザインを元に戻した。


「あああああーーーーーー!!!」


 若干一名悲鳴を上げるが、他は静かに見守っている。

当然、止めようとはしない。


「何すんのよ! 私の力作を!」


「さて、行こうか」


「ちょっと、待ちなさいよ! コラー! 無視すんな!」


 ゾロゾロと、ホームエリアを出ていくメンバー達。

うん、やっぱり機能美って良いよね。

威厳なんてどうでもいいじゃん。


 さっきのは確かに圧倒されたけど、威厳とは違う圧倒のされ方だったし。

少なくとも客に「我が家です」って見せる気にはならない。


 さあ、張り切って狩りに行きますかね。


「ほれ、行くぞリエ」


「うー、納得いかない~」



リクエストの多かった製品版。


本編エピローグ直後の出来事です。


正式サービスでようやく友人たちとの交流が。

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