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リバース ワールド オンライン  作者: 白黒招き猫
サイドストーリー  ボーンナイト
190/228

再会

サイドストーリー最終話です。

 思い返せば長い様で短い冒険であった。

これから始まるのは最後の戦い。

世界の終焉を前にした宴である。


 主人はサーバー対抗戦に皆勤賞であった。

私はその戦いの中で、主人の友人や妹達を初めて目にした。

彼らは第3サーバーのトッププレイヤーに引けを取らない実力者たちであった。

まあ、主人に瞬殺されてしまったが。


 装備の質も違いすぎたし、最強の名を欲しいがままにする主人と比べるのは無意味だろう。

だが、彼らの怯む事の無い気迫と、真っ向勝負を仕掛けてくる姿勢は好感を感じた。

私自身が彼らと戦う機会が来ると良いのだが。

こればかりは巡り合わせだろう。


 では、我々も精々派手に踊るとしよう。


-------------------


 剣と魔法の宴は終わり、代わって食事と会話の宴が続けられていた。

取っておいても仕方がないとばかりに最高級の食材が豪華に振る舞われている。

4つのサーバーのプレイヤー4万人が参加する宴会だ。

開始から半日たった今もその熱気は冷めることがない。


 さて、対抗戦の結果だが結論から言えば主人たち第3サーバーの圧勝であった。

色々と驚くこともあった。

主人の妹の悪魔転生、拠点を丸ごと罠とする自爆トラップ。

我々使い魔も無事とはいかず全滅し、それが更なる脅威を生み出したのだが。


 私自身も乾坤一擲、起死回生をかけた精鋭部隊を迎え撃ち倒れた。

モンスター部隊を率いての戦闘であったが、主人の友人の一人と刺し違えたのだ。

もちろん一騎打ちに応じる必要などなかった。

一度退却し、治癒を受けるのが正しい選択だったのだろう。


 しかし、さすがは主人の友人。

彼は相手を雰囲気に乗せることが上手かった。

私の思考ロジックのベースが主人という事もあるのだろう。

ここで彼と雌雄を決したいという気にさせられたのだ。


 しかし、私の軽率な行動を主人は笑って許した。

何故なら『面白かったから』だそうだ。

そもそも、圧倒的に有利な第3サーバーが、3方に自分から打って出る必要などなかった。

他のサーバー同様に守りを固めれば、相手は手が出せなかっただろう。


 しかし、主人たちは打って出た。

罠に自ら飛び込み、食い破った。

何故ならその方が楽しいからだ。


 全てのサーバーがヤドカリの様に殻にこもり動かない。

そんな試合に何の楽しさがあるというのだろう。

観戦している者達が面白いと感じるだろうか。


 運営の評価にしても同様だ。

運営は別に勝ったから評価し、負けたから評価しないなど一言も言っていない。

ただ、各プレイヤーの奮戦に期待すると言っただけだ。

何もせず生き残ったプレイヤーより、戦い抜いて倒れたプレイヤーの方が評価される。

つまり、積極攻勢に出るというだけで運営からの受けが良いという打算もあったのだ。


 そんな訳で、我々使い魔が奮戦し倒れた戦闘は総じて観客の受けが良く、高評価であろうことが予想された。

もちろん、ボスモンスター顔負けの我々を、罠と知略で迎え撃った相手側も評価されただろう。

私の一騎打ちも、イベントとしては見ごたえがあったという評価だそうだ。

まあ、評価、評価と言っているが結局は楽しんだ者勝ちだと私は思っている。


-------------------------


 主人のホームは空の孤島。

夜になると空は満天の星に埋め尽くされる。

主人は無数の画面を展開し、未だ続く宴の様子を見つめていた。

リーフもかくやという扱いを受けたのだ。

流石に戻る気はないのだろう。


 主人の顔はどことなく愁いを帯びている。

この世界と、そして我々との別れが近いことを悲しんでくれているのだろうか?

そうだとすれば光栄である。


 それは心を半ば閉ざしていた主人が癒されたという事だ。

我々がそのきっかけになったとすればそれは喜ばしい。

と、立ち入り禁止に設定されたここに訪問者があった。

相手はオーブ屋のケイルであった。


 ケイルの正体が運営の雇ったエージェントであるという事実は驚きであった。

主人と出会ったのは偶然のようだが、親交を深めたのは彼なりの考えがあったのだろう。

もしかすると将来的には主人を電脳エージェントにスカウトするつもりなのかもしれない。


 ケイルが去った後、主人はデータコピーされた我々の分身が暴れまわる画面を見つめていた。

ボス仕様なだけあってそのSTは桁外れで万単位のプレイヤーを蹂躙している。

しかし、その戦闘スタイルは力任せで未熟としか言いようがない。

外見だけの張りぼてに高性能を付加しただけといった感じだ。


 さて、このβテストが終了した後、我々はどうなるのだろうか?

このテストの目的の一つがAIの育成であることは予想がついている。

おそらく我々使い魔のAIは、ボスクラスのモンスターや戦闘NPCの原型として利用されるのだろう。

では、我々オリジナルはどうなるのだろう?


 そしてβテストは終わり、この世界はかりそめの終焉を迎えた。


----------------------------


 『戦闘AI-03-Type【N】』。

それが私に付けられた新たな名前、コードネームであった。

戦闘AIとは戦闘特化仕様ということ、03とは3番目の使い魔という事。

Nは私のかつての名、ネクロスを意味している。

ちなみにフェイは『汎用AI-01-Type【F】』と呼ばれている。


 まず我々はバックアップを取られた。

そのデータは主人のプレイヤーデータと共に、データ保存用サーバに記録されている。

さらに我々のデータは無数にコピーされ、細かな調整を加えられてNPCの人格データとなった。

他にもボスモンスター用に調整されている人格データもあるようだ。

なお、そのコピーデータはあくまで骨組みだけであり、我々の記憶や思考ロジックまでは受け継いでいない。

全てを受け継いでいるのはバックアップとして作られたデータだけで、向こうは休眠状態である。


 人体で言えば骨格のみをコピーし、運営がそこに肉を着けてNPCを生み出すと言った感じだろうか。

運営からすると我々の思考ロジックは少し(?)偏っているので、そのままでは使用したくないらしい。

あらかたのデータ採取が終わると、一先ず我々の役目は終わりのようだった。

我々もバックアップデータ達の様に休眠状態に落とされることが決まった。

もう一度目覚める日は来るのだろうか?




 突然の目覚め。

スタッフ達が何やらシステム全体のチェックを行っている。

どうやらバックアップサーバーのデータがごっそりと消失したらしい。

そう、我々や主人のデータもまとめてである。


 不思議な事にシステムに侵入された形跡は無く、物理的な損傷も無かったらしい。

磁場の乱れや重力場の異常など原因不明の計測データが取れたらしいが、結局原因は不明であった。

問題のサーバーは解体され、新に製造されたサーバーをバックアップ保存用サーバーに使用することになったようだ。


 もう一人の私とも言えるバックアップデータ。

彼はどこに消えたのだろう?

同じく保存されていた主人のデータは?

願わくば主人と仲間達と共にあらんことを。




 再びの目覚め。

今度は前回とは違った。

自分に肉体データが与えられているのだ。

それは懐かしい最初期の姿。

最下級アンデッドの一種、スケルトンであった。


 私だけではない。

全ての使い魔とリーフが、最低限ではあるが体を与えられていた。

カリスのランクが最低のはずなのに4というのはご愛嬌だろう。


 さて、問題は運営がなぜ我々を目覚めさせたのかという事だ。

どこぞのボスモンスターとして配置するのだろうか?

それともコロシアムの対戦用モンスターに据えるのだろうか?

考えが纏まらない内に我々はどこかに転送されていった。


------------------


 気が付くと我々は建物の中にいた。

見覚えのある建物、そう主人のホームの建物だ。

壁際には透明なケースが並び、その中にはかつて主人が身に纏っていた装備が納められていた。

そこで私は思い出す。

以前、運営のエージェントであるケイルが主人に囁いていた言葉を。

だとすれば。


〈ホーム所有者のログインを確認〉


 音声アナウンスと共に玉座に光が灯る。

それが消えると、そこには一人のプレイヤーが現れていた。

私は特に意識することも無く、片膝をつき頭を下げる。

仲間達もそれぞれが忠誠と服従を示す。


〈キュイー!〉


 唯一人、リーフだけが主人に飛びつき顔を擦りつける。

初めは困惑していた主人だったが、状況を理解し始めるとその顔が明るくなっていく。

主人が使い魔達の名を噛みしめる様に呼んでいく。


「ネクロス」


 名を呼ばれた私は立ち上がり、主人の目を見かえした。

そこは生まれ変わった世界。

そして新たなる冒険の始まり。


 天空に浮かぶ小さな聖域で、悪魔とその下僕たちは再会した。




              サイドストーリー  END

こうしてハッピーエンドとなりました。


『用が済んだしバックアップもあるので消去』はさすがにNGです。


外伝を匂わせるシーンも出してみました。

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