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リバース ワールド オンライン  作者: 白黒招き猫
サイドストーリー  ボーンナイト
187/228

加護の領域

「まあ、まずは台座を調べてみますか」


「捜査開始ですね」


 各々がギミックを調べ始める。

主人は水晶にあらゆる属性の魔法をぶつけ始めた。

どれかが当たりのはずなのだが。


「8属性全て外れか……」


「うーん、何か足りないんすかね?」


「他の台座を見て回りましたけど、中心が色違いでしたよ」


「赤、青、緑、茶、白、黄、黒でした。これ属性カラーじゃないですか」


 他の台座を調べていたリッチ達が戻ってくる。

属性カラーは8属性8色。

赤=火、青=水、緑=風、茶=土、白=氷、紫=雷、黄=光、黒=闇となっている。


 一度水晶をどかしてみると、台座の中心は紫色になっていた。

属性カラーだとすれば紫は雷。

しかし、先ほどは雷魔法を使っても何も起きなかった。


 主人は隣の台座に水晶を設置する。

台座の色は青、水だ。

しかし、水魔法を受けて水晶が青く染まっても何も起きない。

特定の台座を最初に選ぶ必要でもあるのだろうか?


「……そういや、この水晶は最初から緑っぽいよな」


「ああ、そういえば」


「そうっすね。スタート地点のヒントなんすかね?」


 主人は水晶を緑の台座に運び設置した。

そして風魔法をぶつける。

すると


ブウゥゥゥゥン


「おお!」


「動いた!」


 水晶に満たされた緑の光が台座に吸い込まれていく。

まるで砂時計の砂が落ちるような光景。

やがて光がすべて消えると水晶は無色透明に変わっていた。


「これは、あとは順番関係無いってことかな」


「多分そうなんじゃない?」


 赤リッチと青リッチが水晶を黒の台座に運んでいく。

おそらく、自分でやってみたいのだろう。

中央の魔法陣に目をやると緑色に輝いている。


 いや、正確には魔法陣の一部がと言った方がいいだろう。

そこに今度は黒い輝きが灯る。

次々と魔法陣に光が灯っていき、ついに8色の光が灯った。

すると魔法陣は回転を始め光の柱が立ち上る。

おなじみの転送ゲートである。


「これで先に進めるな」


「面倒くさかったっすね」


「うーん……」


 緑リッチが何やら考え込んでいる。

くだらない事だろうと思ってしまうのは偏見なのだろうか。


「どうした?」


「いえ、この仕掛けって全属性が必要なんですよね」


「そうっすね」


「じゃあ、パーティの属性に穴があったら進めないってことになるんじゃ……」


 思ったよりまともな疑問であった。

心の中で謝罪しよう。

しかし、それは少し考えればわかることだ。


「ん~、そもそも何で水晶が魔法に反応するって解ったんだっけ?」


「それは、ネフィリムの魔法が……あ!」


「そういう事なんだろ。じゃ、進もう」


 水晶は敵の魔法にも反応する。

ネフィリムの魔法やギガースの攻撃で、足りない属性を補えるということだ。

ギガースは出現頻度が外周部より高いし、ネフィリムも大体1グループに1体は混じっている。

こういった点はそつのない運営である。


 後に知った情報によると、最初に水晶を設置する台座はランダムらしい。

水晶が赤の時もあれば青の時もある。

ただ、緑の時が多いそうだ。

浮遊島のシンボル的な属性だからだろう。


------------------

 

「う~ん……」


「何というか……」


「妙な雰囲気っすね」


 転移した先はまだ遺跡の中。

しかし、言葉にできない違和感が漂っている。

皆がそれを感じ取っているようだ。


「STに変化は無いですね」


「ダウン系のトラップとかフィールドじゃないわけか」


「お? あそこに何かありますね」


 今のところ敵は出現していない。

出現率が低く設定されているのだろう。

この妙な雰囲気と関係があるのだろうか。


「これはレリーフですね」


「この人型が巨人だとすると……」


「これは……ラミア?」


「いやいや、こんなデカいラミアがいるかな?」


 レリーフの図柄は巨大な半人半蛇に巨人達が跪いているものだ。

半人半蛇のモンスターと言えばメデューサやラミアが思いつく。

だが、どちらもそんな巨大なモンスターではない。

では、これは?


「また何かのヒントっすかね?」


「ただの設定の説明って線もあるけどな」


 確かに運営はそう言った点に凝っている。

無駄かもしれないが感情移入しやすいと評判でもある。

ともあれこの怪物である。

普通に考えれば……


「ボス、ですか……」


「多分な」


「ふーむ。お? これ、このフロアのマップじゃないっすか?」


「あ、ホントですね」


 ご丁寧にマップが設置してある。

いかにも『必要ですよ』と言わんばかりだ。

さらにマップにはあちこちに、いかにも『何かありますよ』という円形の部屋が存在している。


「この先に大扉があるのか」


「そこからがスタートって事っすかね」


「スタート前の説明所か。何かのイベントみたいですね」


 何かがあるのだろう。

だが、その具体的な何かが解らない。

後は進むしかない。




「よし、開けるぞ」


「どうぞ」


「行きましょう」


ギギィ


 主人が大扉を開く。

身長175cm程の主人が縦横10mはある扉を楽に開けてしまう。

中々シュールな光景だ。


「あれ? 何か落ちてるっすよ」


「ホントだ」


「何だろ」


 扉を開けた向こうに何かが散乱している。

よく見るとそれはアイテムだった。

それも素材ではない。

宝箱以外で普通に落ちているとすれば、それはモンスタードロップ。

もしくは


「回復薬に採取道具?」


「こっちはロープにランプか」


「全部消耗品だ。ってことは……」


「プレイヤードロップっすね」


 プレイヤーは全滅すると所持していた消耗品を一部失う。

それらは死亡したポイントにばら撒かれ、他のプレイヤーが拾うことができる。

これらは通称でプレイヤードロップと呼ばれている。

つまり、ここでプレイヤーパーティが全滅したのだ。


「何かあることは確実か……」


「でも、ここで全滅っすか。すぐそこに扉があるのに」


「あ! もしかして……」


 青リッチが何かに気付き扉に向かう。

そして扉を開こうとするが、開かない。

筋力云々ではなくロックされてしまったのだ。


「成程、退路は無しか」


「進むしかないわけですね」


 ドロップを回収し、先に進む。

しかし、何がパーティを全滅させたのかは不明のままだ。

単純に負けただけなのかもしれないが、何かが引っ掛かる。

このフロアの妙な雰囲気がそう思わせている。


「お、 敵だ。あれは……」


「どうしたんすか?」


 主人が曲がり角の先に敵を見つけたようだ。

しかし、態度が妙である。

警戒しているのだが、その相手が味方のような……。


「いいか、絶対に騒ぐなよ。ジャイアントとギガース、あとフォモールがいる」


「「「「!!」」」」


 騒ぎそうなリッチ共に槍を突きつけて答える主人。

流石の馬鹿共も今回は声を出さなかった。

フォモールは魔眼やブレスによる状態異常が武器だ。

バッドステータスに強いリッチにとってはやりやすい相手のはず。

そもそも、奇襲を仕掛ければ相手は抵抗すらできないだろう。


「よし。行くぞ!」


 主人と共に私とリンクスが飛び出す。

一気に距離を詰める我々を、リッチ達の魔法が追い抜き着弾する。

下位の巨人ならばそれだけで即死する威力だ。

しかし、その予想が覆される。


「嘘だろ!?」


「無傷!?」


 巨人達のHPは僅かも減っていない。

驚愕を押し殺した私達の斬撃が巨人達に叩き込まれる。

しかし


キン


 硬質な音が響き、攻撃は止まる。

私の大剣はジャイアントの皮膚で止まり、傷一つ付けられなかった。

主人の槍もリンクスの光刃も同じく、まったく効いていない。


ドドドドドドッ!


 異変を察したハウルの放った光弾が流星の様に巨人を襲う。

さらにリッチ達の魔法が撃ち込まれ、我々はその隙に離脱する。

結果は同じ、敵は全く無傷。


「成程、さっきのパーティはこうやってやられたわけか」


「どうなってるんすかね? 敵が無敵だなんて」


「何かカラクリがあるんだろ。この妙な違和感が本命だな」


 射程の長い魔法で足止めしながら距離を取り離脱する。

幸い敵の数が少なかったため逃げ切ることができた。

さて、このままではいずれやられてしまう。

対策を考えるべきだろう。


「やっぱり、さっきのマップがヒントですかね」


「あちこちにある丸いスペースか……」


 コピーしたマップデータを確認する主人。

道など考えずに逃げたが、偶然にも近くに1つ例の怪しいポイントがある。

他に案が無いので、そこに向かってみることになった。




「扉か……」


「また閉じ込められるんじゃ……」


「怪しいけど、行くしかないっすよ」


ギギィ


「!」


「これは?」


 円形の部屋。

その中央には3mはある像が設置されていた。

その姿は半人半蛇、レリーフに描かれていた姿だ。


 その眼は不気味に輝き、例の違和感を撒き散らしている。

どうやらこの像が鍵のようだ。

だが


「熱烈な歓迎だな」


「扉もロックされたみたいっすね」


 入口は封鎖され、部屋には20体もの巨人が待ち構えていた。

この数の敵を捌きつつ像を停止させる、中々面倒な戦いになりそうだ。


 像にはHPバーがある。

単純に壊せばよいのだろう。

問題はその長さ。

ボス並みである。


「さて、じゃあ行くか。死ぬなよ」


「了解です」


「当然っす」


 乱戦は避けられない。

リッチ達も自分で身を守ってもらう必要がある。

だがまあ、できるだけフォローはするとしよう。



他のパーティの痕跡があったのって久しぶりな気が。


チャレンジしているのは彼らだけじゃないですからね。


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