ギルド
「どういうことだ!」
運だよ。
「ずるいです」
やかましい。
「ひがんでやる!」
好きにしろ。
「呪われろ」
やんのか、こら。
俺は無数の立体映像ホログラムに囲まれ吊るし上げを食っていた。
友人(の、はず)と妹のグループに。
しばらく苦難の時間を過ごし、ようやく連中が落ち着いてきた。
やれやれ。
彼ら、彼女らの種族は
タク 鬼人 斧
ヒデ リザードマン 大剣
マサ ドワーフ ハンマー
リエ(妹) ヒューマン 片手剣&盾
ハル エルフ 小剣&魔法
アキ 猫獣人 双剣
カヨ フェアリー 杖&魔法
みんなバラバラだった。
聞くところによると、すでにいくつかのパーティが集まってギルドが組まれているらしい。
ギルドはメンバーを集め、名前を決め、ホームを手に入れると登録されるらしい。
元々他のゲームではトッププレイヤーの友人達も妹達も、ギルドの中核メンバーとして活躍中だとか。
そして俺に関してだが、ぼかした情報を流す程度にしておいた方がいいという。
名乗り出るのはもっての他だとか。
理由は悪魔希望者たちの悪行と、ギルド同士の対立だ。
現時点で判明している特殊種族の人数は
第1サーバー ヴァンパイア1人 リッチ1人
第2サーバー リッチ1人 天使1人
第3サーバー ヴァンパイア1人 天使1人 悪魔1人(俺)
第4サーバー ヴァンパイア1人 リッチ2人
という状況らしい。
彼らは皆ギルドマスターであり、彼らのプレイスタイル=ギルドの方針らしい。
そして俺の第3サーバーも例外ではない。
ヴァンパイアのプレイヤーは常識人らしく、ギルドもいたって普通らしい。
ヴァンパイア希望のオレンジプレイヤー達は入団を拒否されたようだ。
そして天使のプレイヤーは正義感の強い真っ直ぐな人物らしい。
ギルドもオレンジ、レッドのプレイヤーを許さず、積極的に討伐しているようだ。
そして俺が名乗りを上げると悪魔希望のオレンジ、レッドプレイヤーが群がってきて担ぎあげようとするだろう。
そうなれば天使ギルドとの正面衝突だ。
いや、下手をすると『悪魔』というだけで狙われるかもしれない。
一方的な正義感は目を曇らせるからな。
頭の切れる犯罪プレイヤーなら、事あるごとに俺の名を出して天使ギルドとの対立を煽る。
そうやって俺を自分たちの側に付かざるを得ない状況に追い込む、なんてこともありえるわけだ。
別に俺をトップに据えても彼ら自身が悪魔になれるわけではないのだが、そう思い込む根拠はあるのだ。
それはヴァンパイアの種族スキル『眷属化』の存在だ。
指定したプレイヤーを『ヴァンパイア・スレイブ』に種族変化させるらしい。
能力は基本種族よりも高いとか。
主人のヴァンパイアに絶対服従とか制約はあるようだが、元々仲間同士なら関係無い。
『使い魔』の対象はモンスター限定なので、残念ながら彼らの希望にはそえない。
ともあれ、皆の言うことはもっともなので俺は自分の種族は隠してプレイすることにした。
窮屈だがしかたない。
『使い魔』は『召喚』だと言ってごまかそう。
ギルドへの所属も止めた方がいいだろうな。
まあ、使い魔たちもいるしソロでもしばらくは大丈夫だろう。
いざとなったら臨時パーティやレイドに参加すればいい。
「始まりの町か。楽しみだな」