表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
リバース ワールド オンライン  作者: 白黒招き猫
サイドストーリー  ボーンナイト
176/228

百戦錬磨

 私とプレイヤー達の戦闘における大きな違いは何か?

それは攻撃スキルの有無だろう。

プレイヤーには斬撃技【スラッシュ】や突き技【スラスト】などの、いわゆる必殺技があるが私には無い。

我々にあるのはモンスターとしての能力であり、プレイヤーのスキルとは少し違うのだ。


 フェイは魔法を使えるが、あれもプレイヤーの魔法スキルとは似て非なる魔法能力である。

使い続けてもプレイヤーのように新しい魔法を覚えたりはしない。

私の場合もそれは同じ。

スケルトンは基礎能力は高いが、技と呼べる能力は持っていないのだ。


 だが、今私の目の前には満身創痍となった犯罪者プレイヤーがいる。

こちらは一撃も受けていない。

あちらにしてみれば理不尽な事だろう。

しかし、私にしてみれば必然である。


「クソォ! 【スラッシュ】!」


 振るわれる斬撃スキル。

しかし、それは上から斬り下ろすだけの単純な技。

隙を突いたのならともかく、万全な状態の相手に当たるようなものではない。

半身になった私の横を刃が通り過ぎていく。


「く、しまった!」


 スキル使用後の硬直に陥るプレイヤー。

無防備な首を鉈で刈る。

クリティカルヒットを受けた彼のHPは0となった。

オレンジの彼は大きなペナルティを受けることになるだろう。


 視線をやると、主人はすでに2人の犯罪者プレイヤーを斬り伏せていた。

3人目は懲りもせずにスキルを連発し、隙を狙われて一方的にダメージを受けている。

そもそも、技の連発など動きの鈍い序盤の雑魚にしか通用しない戦術である。

一体を複数人で囲んで絶え間無く打ちこむならともかく、1対1のPvsPで使うなど初心者もいい所だ。


 しかし、意外に犯罪プレイヤーにはこういった者達が多い。

対人戦闘を得意とするはずの彼らが、なぜこんなに弱いのだろう。

主人によると、その答えはあっさりしたものだった。

すなわち、彼らは自分より弱い者か戦意の無い者しか狙わないのだ。

初心者には『同じプレイヤーに狙われた』というだけで、思考がフリーズしてしまう者も存在する。

恐怖に身動きが取れない相手になら、スキルの連発は確かに有効だろう。


 だが、重要なのはあくまで通常攻撃。

変幻自在のプレイヤーの技量こそが至高の必殺技なのだ。

私はスキルこそ使えないが、代わりに急所へのクリティカル攻撃を必殺技としている。

主人もまず通常攻撃で崩し、スキルを打ち込む。

派手さよりも詰将棋の様な正確さと堅実さが重要なのだ。


 などと考えているうちに最後の一人が地に伏した。

完勝である。

主人は新しい武器の扱いも手慣れたものだった。

そう、主人が手にしているのは槍ではなくロッドなのだ。


 二つの武器スキルを鍛えると、複合派生スキルが覚えられるという情報。

有名どころでは斧と槍の【斧槍術】、剣と短剣の【双剣術】などが確認されている。

主人は【槍術】と【棒術】を鍛えることで【槍棒術】を覚えている。


 槍や突剣、弓などの刺突武器は堅い敵や、細い隙間だらけの敵と相性が悪い。

打撃系の棒術はその弱点を補えるので、非常に有効だ。

しかし、槍で棒術スキルを使用するのは大分勝手が違う。

だから主人も習熟訓練に余念がない。


 そういう訳で、私は普段から主人のスパーリングの相手として死線をくぐり抜けているのだ。

アンデッドが死線うんぬんというのも妙な話であるが。

それはともかく、主人の容赦無い攻撃に比べれば、犯罪者プレイヤーの攻撃などお遊びの様なものだ。

まあ、ゲームはお遊びではあるのだが、私にとっては現実である。



 さて、最近我々には大きな変化があった。

1つは新たな仲間の参加である。

カーバンクルのリーフ。

サポート系としては最高峰の能力を持つ幻獣である。


 【魔力探知】を持つ従魔など、本来こんな序盤で登場するものではない。

だが、主人はラッキーアイテムを使用してランダム卵に彼を登場させ、超能力じみた直感力で引き当てた。

主人は魔力を感じたと言っていたが、おそらく突出して大きい情報量を持つ卵を見抜いたのであろう。

真に恐ろしい電脳適応力である。


 リーフは主人にとても懐いており、とても好感が持てた。

遠出をする際の足を別に用意しなければならなくなったが、些細な問題だろう。

長期的に見ればラプトルやエミューなどとは比べ物にならない戦力のはずである。


 もう1つは主人の武器だ。

今振るっていたのは鉄製のロッドだが、先日ボスドロップで珍しい武器を手に入れたのだ。

槍と杖の複合武器、槍杖である。

魔法戦士である主人に最適の武器であり、木製でありながら鉄製の武器より強力なのだ。

情報サイトにも載っていないらしいので、おそらく主人以外は誰も発見していない。



 それから間も無く、主人は【槍棒術】を手に入れた。

新たなスキル、新たな武器、新たな仲間、もはや第一エリアに敵はいないだろう。

主人の話によると、第1エリアのラストダンジョンの調査が終了し、攻略メンバーを募集しているらしい。

もちろん、主人も参加を希望するそうだ。

主人の為にわざわざ調査をするとは、中々気の利く連中だと感心した。


----------------------


 会場を静寂が包んでいる。

その中心はもちろん主人だ。

選抜試験と称した力試しで、主人の相手はかなりの力量の大剣使いであった。

しかし、届かない。

主人はおろか私にも届かないだろう。


 主人の戦法はいつも通り。

相手の攻撃を逸らしその隙を突いてカウンターの一撃、体勢を崩したところで急所に攻撃。

今回は最後の急所への一撃をスキルで行っていた。

軌道やタイミングが限定されるスキルを、正確に急所に打ち込む技の冴えは流石であった。


 しかし、そのあまりの実力に会場が凍りついてしまったのだ。

主人は勧誘が煩わしいと黒のコートを青く染め、話題の犯罪者バスターである事を隠していた。

どうやら主人は自らそれを台無しにしてしまったようだ。

主人の戦闘時の集中力は素晴らしいが、反面集中し過ぎて他の事に気が回らない事があるらしい。

まあ、私としてはボス戦で活躍すればバレていたと思うので、早いか遅いか違いでしかない。


 そうこうしている内に、理知的な雰囲気のヴァンパイアが主人を追い詰めていった。

どうやら彼もシャドウウルフの素材を持っているらしく、主人のコートが青く染めてはあってもシャドウウルフ素材の物だと気付いたらしい。

案外彼は、主人がオークションで売り払った素材を手に入れていたのかもしれない。


 観念した主人は全てを認め、私もお披露目された。

ほとんどが畏怖の視線を向けてくるが、どういう訳か感謝の視線を向けてくる者もいた。

彼らは主人と私が犯罪プレイヤーから救出した者達だったようだ。

私自身は主人の敵を倒しただけなので、彼らを助けたという自覚は無い。

だが、彼らが主人に友好的な感情を抱いてくれるなら、それは良い事だと思う。

圧倒的な実力がありながら、どこか他人の悪意に怯えている。

そんな印象を主人に抱いた事があるからだ。


 その後、主人の持つ素材をめぐって騒動が起きたのは余談である。

だが、その騒動を目にした私は、職人人口の多さと彼らのバイタリティに驚いた。

近いうちに主人も、信頼できる相方となる職人を見つけるべきだろう。

しかし、主人の相方となれるほどの職人となると、どんな人物なのだろう。正直想像するのが難しい。


 試験の結果だが、当然主人は合格した。

むしろ、落とすなどと言ったら斬りかかっていたかもしれない。

まあ、町中ではそんな事は出来ないが。


 数十人ものレイドパーティでは私の出番は無いかもしれないが、相手はエリア最後の大ボスである。

何が起こるか解らない以上、いつでも戦闘に参加できるようにしなければ。

現時点では私だけが主人と同じ土俵で戦える戦士なのだから。


 そしてたどり着いた迷宮。

馬車による移動は確かに速かった。

第2エリアは第1エリアより遥かに広いという。

主人が移動手段を求めるのも当然であった。

だが、その機会は直に訪れるだろう。


 主人のアバターにはすでに膨大なデータが蓄積されている。

それはあと少しの切欠で溢れ出し、主人を新たな高みへ押し上げるだろう。

そう、ランクアップである。

現状主人のSTは、その圧倒的な知覚速度に釣り合っていない。

主人からすると身体の動きが鈍く、もどかしい思いを抱いているだろう。

だが、その戒めが一つ外れる事が近い事を私は予測していた。


 新たな力の開放は、新たな仲間の参戦を意味する。

さて、次なる仲間はどのような者たちなのだろうか。


 ……少々気が早かったようだ。

順調に推移していたボス戦だが、やはりそうすんなりとは行かなかった。

単身ボスに突撃する主人。

その横に並び、私も刃を振り下ろした。


本編の補足説明が多い気がします。


当時は描写や設定が甘かったせいかな?


あまり説明ばかり書くと読みにくいと判断していたのかもしれませんが。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ