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魔王降臨

 たった1人で敵に向かって歩み出す。

HPはまだ少し余裕があるしな。

出来るだけ暴れさせてもらおうか。


「ロンギヌス起動。さあ、止めてみろ!」


 右手に竜槍杖、左手にサマエル、全身にはルドラの衣。

いまだかつてないスペックの装備に、俺の気分も高揚する。

飛来する飛び道具は全て叩き落とし、魔法は魔法で相殺。


 敵の集団に飛び込むと、あたりかまわず切り捨てる。

もちろんこんな無茶をすれば反撃も食らうが、ルドラの衣に逸らされて直撃は0だ。

首に脇に吸い込まれるように刃が走る。



 ふむ、近寄る奴が減ってきたか。

食い付きが悪くなってきたので、拠点に向かって駆けだす。

さすがに放っておけないのだろう、食い止めようと集まってきた。



 500人は倒しただろうか。

ロンギヌスの効果が切れ、ついに俺は足を止めた。

防壁と拠点の中間あたり、カリスがやられたあたりだ。


 防壁はもう落ちる寸前で、撤退する敵プレイヤーが俺を囲む集団の近くを横切っていく。

HPはオレンジゾーン。

もう少しだな。

攻めあぐねる敵をよそに、宝石を取り換える。


「待てー、そこまでだ! それ以上はマズイ!」


「止めは主砲でー!」


 む、ヒデ達か。

指揮官の奴らがこっちに来たってことは、防壁は落ちたな。

周囲も俺のスキルを思い出したようだ。

じゃあ、そろそろいくか。


ザン


 竜槍杖で自分の左手を切り付けた。

HPはついにレッドゾーンに突入した。

慌てる周囲。

発射される主砲。

だが、遅い。


「【悪魔化】起動」


 次の瞬間膨大なデータが流れ込む。

これは12体の使い魔たちの戦闘データだ。

前回を遥かに超える情報量。

それが制御され『フィオ』というキャラクターにフィードバックされる。

そしてソレはゆっくりと動き出した。


--------------------


「やっちまった」


「むう、主砲でどうにかなるかな?」


 ヒデ、リエ、アキの目の前には漆黒の闇の渦が発生していた。

所々で放電し、紫電を纏っている。

撃ち込まれた主砲は弾かれてしまった。

変身中は無敵なのだろう。


 邪竜を1対1で倒したという『悪魔』。

実際に見るのは初めてだが、聞いただけでもその強さはとんでもなかった。

それが敵として立ちふさがる。

アバターの体に冷や汗が浮かんだ気がした。


「俺達は勇者じゃないぞ……」


「兄貴は魔王様だけどね」


「ううう、怖い……」


 やがて闇は弾け飛んだ。

ゆっくりと身を起こす異形の怪物。


「な、な、な……」


「うわぁ……」


「ひえええ……」


 その身長はゆうに5m、人型としては巨人に匹敵する。

頭部は3つ、中央に三眼の山羊、左に狼、右に竜、首には白い鬣。

翼は三対六枚、コウモリの翼、鳥の翼、妖精の翅が一対ずつ。


 尾は三頭の大蛇、背には背ビレの様な虹色の水晶。

肩からは幻影の腕が一対飛び出し、雷と炎を纏っている。

体の要所は黄金の甲殻で覆われ、全身は黒い骨の鎧で包まれている。


 胸には大きな水晶球が埋め込まれ、その中には煉獄の炎が燃え盛っている。

左手の爪は赤黒く、まるでサマエルを五本揃えたようだ。

右手に握られているのはサイズこそ巨大だが、まぎれもなく竜槍杖セルピヌスだった。

そして全身は黒いオーラに包まれている。


〈ゴアアアアアアア!!!〉


ボウッ!


 魔王の咆哮と共に竜槍杖がオーロラを放つ。

胸部の炎が燃え盛る。

そして


ブオン!  ザン!


 大蛇の尾が薙ぎ払われ、巨槍が振るわれ一瞬で10人以上が脱落する。

そして、その目がとらえたのはヒデ達3人。


「逃げろ!」


「え?」


 反応できたのはヒデとリエ。

呆然としていたアキはまともに食らってしまった。

魔王の胸から放たれた熱線を。

その一撃で射線上にいた数十人のプレイヤーが脱落する。


 魔王の蹂躙は終わらない。

幻影で作られた2本の腕が、体を離れて飛び回る。

掴まれたプレイヤーは、黒焦げにされた後握りつぶされる。

攻撃はオーラによって完全に防がれ、HPはドレインによって回復していく。

絶望が第1サーバーを包んでいく。


--------------------


「うわー、凄いねえ」


「そうですね……」


 防壁を落とした第3サーバーの部隊だが、そこより先には進まなかった。

アレに巻き込まれたくないからだ。

魔王の姿は以前の大悪魔より遥かに強大だった。

見ているだけでも鳥肌が立ちそうだ。


 敵拠点から放たれた砲撃を、魔王は巨槍で撃ち返してしまった。

人間の動体視力で可能な事なのだろうか?

撃ち返された砲弾は敵の拠点に突っ込んでいった。

 

 まさに無敵だ。

だが、制限時間は僅か10分。

効果が切れたら即座に攻撃を開始しなければ。

しかし、


「どれくらい残るかしら」


「さあな……」


-------------------


 全身に溢れるパワーは以前の比では無かった。

色々オプションが着いているが、使い方は何故か解った。

幻影の腕は、相手を狙うだけで自動的に攻撃してくれる。

胸部の熱線は拡散、収束どちらもありだ。


「こんのぉ!」


「おらぁ!」


 斬りかかってきたヒデとリエ。

ふん、避けるまでもない。


ガキイ  ギイン


「え?」


「な?」


 刃はオーラを突破できなかった。

動きの止まったヒデを左手で殴り飛ばし、リエを巨槍で貫く。

2人とも一撃で脱落してしまった。

 

 すでに1000人近いプレイヤーを葬ったが、そろそろ時間か。

俺は、プレイヤーの集まっている拠点の正門に狙いを定める。

嫌な予感を感じたプレイヤー達が止めようとするが、生憎ダメージは0だ。


〈ガアアアアアアアア!!〉


 咆哮と共に放たれたのは切り札【デーモン・ブレス】。

3つの頭から放たれたブレスは渦を巻くように一つとなり、拠点に突き刺さった。

轟音、爆発。


 後に残ったのは防壁を貫かれ、瓦礫の山になった拠点。

そこにいたはずのプレイヤー達は姿を消していた。


「「「「「うおおおおおおお!」」」」」


 後方からの雄たけびが近づいてくる。

このチャンスを逃す手は無いからな。

仲間の突撃からほどなく、俺の悪魔化は解除された。

急にSTが下がるから脱力感があるんだよな……。


 そして、しばらくして



第1サーバーの拠点が占領されました。


優勝は第3サーバーに決定しました。


 アナウンスとともに大歓声がわき立った。

 

ラスボス登場?


勝てるのか、こんなのに……。

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