総力戦
遂に雌雄を決する時が来た。
中央の平原で両軍はにらみ合う。
数はほぼ互角で2500人程、どちらもバリスタや発石車を持ちだしている。
第3サーバーとしては、第1サーバーは守りを固める物だと思っていたので少し意外だった。
実際は戦国マニアのプレイヤーが、援軍の来ない籠城は下策、と意見した結果だった。
確かに包囲されて長期戦に持ち込まれれば、物資に劣る第1に勝ち目は無い。
戦闘にまぎれて敵拠点に少人数の部隊を送り込む。
そしてフラッグを見つけて破壊する。
それが第1サーバーの作戦だった。
つまり全軍のほとんどが囮なのだ。
しかし、第3サーバーの拠点には結構防衛部隊が残っているのが難点だった。
もっとも勝ち目が薄い事など判り切っていたことだが。
そして両軍はジリジリと距離を詰める。
やがてそれは駆け足になり、ついに全プレイヤーの全面衝突が始まった。
投石が放たれ、バリスタから矢が撃たれる。
地上で、空中で激しい戦闘が繰り広げられる。
第3サーバーの先陣を切るのは、やはりカリスに乗ったフィオだった。
一気に中央突破を図る。
カリスが敵を薙ぎ払い、その隙をフィオの魔法攻撃が埋める。
止められる者は無く、第1サーバーは徐々に防壁まで押されていく。
第1サーバーは防壁に1000人を駐留させていて、残りは拠点に残している。
カリスに突破され、フィオに拠点に侵入されたら、それだけで終わりかねない。
なんとか包囲して倒そうとする。
しかし、敵はフィオとカリスだけではない。
やはり正面激突では第1サーバーに不利すぎた。
希望は侵入部隊に託された。
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ゴオオオオオ
第3サーバー最外部のキノコウォール。
それは今、巨大な炎の壁に変わっていた。
もちろん第3サーバーの防衛部隊が自分で火を付けたのだ。
キノコの中に隠れて隙を窺っていた第1サーバーのプレイヤーが、次々と焼け出されてくる。
ダメージ自体は小さくても、本能的に火の中は恐怖を感じるのだ。
臆病者と言い切るのは酷だろう。
「よーし、クラスター・バリスタ発射!」
バシュ バシュ
発射された巨大な矢は、空中で分解した。
そして地上に降り注ぐのは釘サイズの矢。
別に矢の形である必要は無いのだが、そこは好みか趣味なのだろう。
ミサイルを参考に開発した新型だ。
「連弩撃てー!」
さらに第4サーバーの拠点から回収した連弩を、解析、量産していた。
この辺の技術力もさすがであった。
人間性に難があったとしても。
それでも敵部隊は必死に進んでくる。
自分達が失敗すれば、負けはほぼ決まってしまうから。
仲間の為に、チームの為に、ボロボロの体を薬で回復しながら走り続ける。
「ふーむ、粘るな。空堀に火を放て。リーダーには主砲をブチ込んでやれ」
キノコウォールと防壁の間に、もう1つの炎の壁が発生する。
第1サーバー部隊は、あちこちにある落とし穴に足を取られ、防衛兵器の攻撃を受ける。
勇気を振り絞って炎を突破すると、正面の防壁に変化があった。
無数の穴が空いているのだ。
「不味い! 伏せろ!」
ババババババババ
無数の穴から大量の弾丸が打ち出された。
第1サーバー部隊は次々に撃ち倒される。
炎の壁の所為で先が見えないのだ。
この銃撃も原理は単純だ。
筒に詰めた弾丸を風魔法やオーブで飛ばすだけ。
原理としてはエアガンや火縄銃に近いだろうか。
ズドオオオオ!
足が止まった部隊のど真ん中に主砲が撃ち込まれ、部隊は壊滅した。
これが東西南北全方位で行われ、第1サーバーの作戦は失敗に終わった。
しかし、僅かな残存部隊は諦めることなく防壁に挑む。
1%の可能性に賭けて。
しかし防衛する職人達にとって、彼らはシューティングゲームの的であった。
残酷な現実だが、守る方が有利なのは同じなのだから。
第4があれほどの粘りを見せたのだ。
ならば第3は? その答えがこれであった。
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第1サーバー軍はついに防壁まで押されていた。
ヒデは部隊を指揮しながら戦場を見渡す。
防壁の防衛設備は使えるが、第3サーバー軍の勢いは凄まじい。
空を見上げれば巨大なドラゴン、カリスが暴れまわっている。
巨体の隙を突こうとするプレイヤーは、フィオに突き倒されてしまう。
正直手に負えない。
しかし、第4サーバー拠点での戦いの様な理不尽な戦闘力ではない。
どうやら、魔法を受けるとパワーアップするという予想は当たっていたようだ。
と、空中部隊があらかた倒され、ドラゴンの視線が防壁に向いた。
慌てて離れていく第3サーバーの部隊。
「ヤバい! 離れろ!」
ドガァ!
第2サーバーの拠点を落とした時の再現。
カリスは急降下すると、防壁を踏み崩してしまった。
砂煙が晴れると、そこにはヒデとフィオが対峙していた。
「お前、ドラゴン・バスターなんだろ? カリスに手は出させんぞ」
「チッ、ばれてたか……」
そして友人同士の2度目の決闘が始まった。
やっぱり第3の拠点は鉄壁でした。