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決戦前夜

 第4サーバーの拠点跡地。

ほとんど完全に破壊された廃墟に、数十人のプレイヤーが来ていた。

すでに時間は真夜中で、ここを落とした第3サーバーの部隊は撤収した後だ。


 彼らは第1サーバーの工作兵だった。

上位鉱石製の廃材を出来るだけ回収しているのだ。

これらで拠点を一晩かけて強化する。

明日の勝率を少しでも上げるための作業だった。


 彼らは戦闘力は決して高くないので、もし第3サーバーの部隊が戻ってきたらやられてしまうだろう。

そういった意味では彼らは決死隊だった。

すでに数の優位は崩れている。


 第1サーバーはすでに4000人を割っている。

第3サーバーも4000人と少しといったところだろう。

こちらが籠城して相手が攻めるという状況でも確実に不利だ。

なにしろ夕方は2000人で5000人を破られているのだから。

出来る手はすべて打つつもりだった。


-------------------


 第3サーバーの部隊は例のごとく拠点で英気を養っていた。

フィオはメンテの終わった装備を受け取ったついでに、遂にマッド野郎共をぶん殴った。

試合仕様でなければフィオがオレンジになるか、禁止コードに阻まれていただろうが。


「てめえら、ミサイルの時といい最近やり過ぎじゃないか?」


「あたたた、ちゃんと『ニルヴァーナ』は味方には被害が出ない様になってるんだが……」


「そういう問題か。自爆装置自体は良いが俺に一言あるべきだろう」


「いや、黙ってた方が驚くかなーと……すまん悪かった」


「本当に反省してるんだろうな?」


「ああ、大舞台で高揚しすぎてた。もうちょっと自重する」


 教育的指導でようやく反省の言葉を引きだした。

まったく、物には限度があるだろう。

間違えて押していたらどうするつもりだったんだ……。



「あ、いたいた。フィオさんちょっと良いですか?」


「ん? 何か用か?」


「ええ。第2サーバーの拠点跡に、第1サーバーのプレイヤーが現れて何かしているそうです」


「そういや、壊し損ねたんだっけ。数は?」


「200人くらいみたいですね」


「200か。始末しておいた方が良いな」


「そういうわけで、討伐部隊に参加しませんか?」


「ん。解った、行こう」


----------------


 むう、また罠がありそうだ。

昼間の戦闘については油断だの調子に乗ってただの、色々考えた。

しかし、それは傲慢なのだと思い直した。

逆に言うなら、油断していなければ罠にかかってなどいないという言いわけだからだ。


 自分達が油断していただけではなく、相手の作戦が見事だったのだから。

思えば罠があろうとなかろうと、結局攻めなければならないのだ。

罠だと判っていても行かざるをえない。

だから守る側が有利なのだ。


 そう考えれば、使い魔達も罠にかかりつつも敵に損害を与えている。

相手の土俵であそこまで出来れば、十分健闘したと言えるだろう。

結果的にプレイヤーの被害は小さかったのだし。


 警戒した所で罠をかわすのは難しい。

あまり気にし過ぎて消極的になる方が良くないだろう。

気を取り直して廃墟に侵入する。


 こちらのメンバーは400人。

カリスは夕方のダメージがあるのでシザーを呼び出す。

敵はバラけていてなかなか面倒だ。


 気になったのは連中が、何かの薬を撒き散らしていることだ。

調べてみたが別に毒ではないようだ。

職人を連れてきていれば詳しい効果も解ったんだが。


ギギィ……


「? シザー、どうした!?」


 突然シザーが苦しみ出した。

口から泡を吹いて、HPも減少していく。

毒? いや、シザーに毒など効かない。

何だ、これは?


「今だ!」


 シザーの異変に驚いている間に敵が集まっていた。

全員が投槍やオーブでシザーを狙ってくる。

片っ端から倒していくが、物ともせずにシザーを狙ってくる。

くそ、さすがに全部は迎撃できない。



 味方も集まってくるが、シザーはぐったりと倒れてしまった。

黄金の甲殻もくすみ、防御力も低下しているようだ。

もしかして、撒かれている薬の所為か?


 集中攻撃を受けたシザーはやられてしまった。

あっさりと。

直後に味方が駆けつけ、次々と敵を倒していく。

俺は最後の1人に聞いてみた。


「シザーを弱らせたのはあの薬だな?」


「ああ。数百回分の殺虫剤だよ。さすがに効いたみたいだな」


 ゲーム中の殺虫剤は虫系モンスター専用の攻撃アイテムだ。

第2エリアの雑魚さえ即死させるほど強力なモノもある。

そいつを数百回分か。

確かに、いかにシザーでもこれは耐えられないだろう。

つまりは……


「狙いはシザーか」


「その通り。俺達はやられる事前提の決死隊さ」


「……たいしたもんだよ」


ザンッ


 敵を全滅させ引き返す。

確かにまともにシザーとやりあったら、被害は200人じゃ効かないだろう。

しかし、ここまでやるとは。

第1も第4の健闘を見て思う所があったんだろう。


 一種の自爆戦術じゃないか。

向こうも相当マジってことだろう。

なりふり構わないつもりだな。


 拠点に戻った俺達は、あった事を説明した。

第1サーバーの覚悟に、こちらも覚悟を決める必要がある。


 そして最終決戦の日がやってきた。


遂にマッドサイエンティストに鉄拳制裁が。


第1サーバーも第4サーバーを見習うようです。


無敵かと思われたシザーにも意外な弱点が。

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